5 / 23
第四話 「学園のマドンナとは」
しおりを挟む
昨日、うゆくんとの記念すべき“お姉様呼び”や“初ティータイム”を終えた心地の良い朝。
目覚めはいつもより格段にいい。
私は学校へ行くために準備をしていた。
身なりを整え、朝食を取るため移動する。
すると——
制服姿のうゆくんが鎮座していたのである。
ゲームの中ではいつも通りの服装だが、改めて見るとなんだか新鮮で、思わず頬が緩んだ。
心の中でそっと拝みつつ、朝食の温かいスープやふわふわのパンを口へ運ぶ。
今日の朝食は洋食メインである。
うゆくんの口に運ばれるそれと同じものを、私も味わっていると思うと自然と気分が高揚した。
そして、今日からうゆくんは私と同じ学校に通う。
案内役として一緒に登校することになったのだが——
正直、あの面倒くさい婚約者の存在をすっかり記憶から消し去ってしまっていた。
この時の私はまさか、あんなことになるなんて知るよしもなかった。
初々しく制服を着こなす、慣れない様子のうゆくんと過ごすこの瞬間は、まさに至福の時である。
車で学校の正門付近で送ってもらい、正門からうゆくんと歩く。
学校へ向かう道すがら、周囲の生徒たちは皆、彼に視線を向けていた。
私は彼を見せびらかすかのように自信満々に堂々と彼の隣を歩く。
すると、うゆくんが不意に口を開いた。
「鈴乃お姉様は、人気者なんですね…!
すごいです…
道ゆく人がみんな鈴乃お姉様を見ているんだから…」
なんて謙虚なのだろうか…
でも、うゆくん…それは誤解なの。
みんなは“あなた”を見ているのよ。
この世界で一番可愛いあなたを……
少しおかしなことを言う彼に、思わず笑みが零れ、そのまま口が動いてしまった。
「うゆくんは謙虚さんなのね……」
すると、
うゆくんがきょとんとした顔で、私を見つめていた。
(……やばい。やばいやばいやばい)
私の心の中でのみ、ずっと呼んでいたうゆくん呼びをすっかり忘れて、
そのまま本人に言ってしまった失態に気づく…
(どうしよう……変なあだ名つけて気持ち悪いなんて思われたら私もう…死…)
「あの…うゆくんって、もしかして僕のこと呼んでくれたんですか?」
「はい……」
「ふーん…
ふふっ、鈴乃お姉様が僕のことを名前で呼んでくれてすっごく嬉しいです…」
(え、セーフなのですか!?
というか、すっごく可愛いのですけど!?)
「あだ名なんて人生で初めて付けられました…
今度、由来教えてくださいね♪」
(!?!?!?!?!
初めていただいてよろしいのですか!?)
「う、うゆくんが嬉しいなら良かったわ…」
うゆくんへの萌える気持ちを全力でひた隠しているその最中——
今の私にとって、到底受け入れ難い最悪な声が私を呼んだ。
目覚めはいつもより格段にいい。
私は学校へ行くために準備をしていた。
身なりを整え、朝食を取るため移動する。
すると——
制服姿のうゆくんが鎮座していたのである。
ゲームの中ではいつも通りの服装だが、改めて見るとなんだか新鮮で、思わず頬が緩んだ。
心の中でそっと拝みつつ、朝食の温かいスープやふわふわのパンを口へ運ぶ。
今日の朝食は洋食メインである。
うゆくんの口に運ばれるそれと同じものを、私も味わっていると思うと自然と気分が高揚した。
そして、今日からうゆくんは私と同じ学校に通う。
案内役として一緒に登校することになったのだが——
正直、あの面倒くさい婚約者の存在をすっかり記憶から消し去ってしまっていた。
この時の私はまさか、あんなことになるなんて知るよしもなかった。
初々しく制服を着こなす、慣れない様子のうゆくんと過ごすこの瞬間は、まさに至福の時である。
車で学校の正門付近で送ってもらい、正門からうゆくんと歩く。
学校へ向かう道すがら、周囲の生徒たちは皆、彼に視線を向けていた。
私は彼を見せびらかすかのように自信満々に堂々と彼の隣を歩く。
すると、うゆくんが不意に口を開いた。
「鈴乃お姉様は、人気者なんですね…!
すごいです…
道ゆく人がみんな鈴乃お姉様を見ているんだから…」
なんて謙虚なのだろうか…
でも、うゆくん…それは誤解なの。
みんなは“あなた”を見ているのよ。
この世界で一番可愛いあなたを……
少しおかしなことを言う彼に、思わず笑みが零れ、そのまま口が動いてしまった。
「うゆくんは謙虚さんなのね……」
すると、
うゆくんがきょとんとした顔で、私を見つめていた。
(……やばい。やばいやばいやばい)
私の心の中でのみ、ずっと呼んでいたうゆくん呼びをすっかり忘れて、
そのまま本人に言ってしまった失態に気づく…
(どうしよう……変なあだ名つけて気持ち悪いなんて思われたら私もう…死…)
「あの…うゆくんって、もしかして僕のこと呼んでくれたんですか?」
「はい……」
「ふーん…
ふふっ、鈴乃お姉様が僕のことを名前で呼んでくれてすっごく嬉しいです…」
(え、セーフなのですか!?
というか、すっごく可愛いのですけど!?)
「あだ名なんて人生で初めて付けられました…
今度、由来教えてくださいね♪」
(!?!?!?!?!
初めていただいてよろしいのですか!?)
「う、うゆくんが嬉しいなら良かったわ…」
うゆくんへの萌える気持ちを全力でひた隠しているその最中——
今の私にとって、到底受け入れ難い最悪な声が私を呼んだ。
10
あなたにおすすめの小説
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
最近のよくある乙女ゲームの結末
叶 望
恋愛
なぜか行うことすべてが裏目に出てしまい呪われているのではないかと王妃に相談する。実はこの世界は乙女ゲームの世界だが、ヒロイン以外はその事を知らない。
※小説家になろうにも投稿しています
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる