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天使の羽
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シャイニーは雲から飛び立ち、地上へと降りて行きます。
ツバメの群れがシャイニーを見つけ、近付いてきました。
「やぁ!天使さん、そんなに急いでどこに行くんだい?」
一羽のツバメがシャイニーに話しかけます。
「ツバメさん、僕はこれから人間のユイちゃんに会いに行くんだ。笑顔が可愛い子なんだよ。」
シャイニーは、ワクワクしながら答えました。
「それは楽しみだね。でも、人間には天使さんの姿は見えないけど良いのかい?」
「そうみたいだね…でも、例え僕の姿が見えなくても、ユイちゃんに何か出来る事はあると思うんだ。僕が出来る事を精一杯してみるよ。」
シャイニーは、自分に言い聞かせるように言いました。
「きっと、天使さんなら出来ると思うよ。頑張って。僕達ツバメは、これから南の国に向かうんだ。」
「ありがとう!ツバメさんも長旅気を付けてね。」
シャイニーは、ツバメの群れに手を振ると、地上を目指し更に降りて行きます。
暫く降りると、地上の街並みが間近に見えてきました。
どんどん近くなる地上にワクワクしながら、ユイちゃんの家を目指します。
そしてとうとう地上が目の前に迫り、シャイニーはソッと足を地面に着けました。
「さてと…ユイちゃんの家はこの辺りのはずなんだけど…」
呟きながらユイの家を探していると、散歩中の犬とすれ違いました。
犬はシャイニーをジッと見つめ尻尾をパタパタと振っています。
「ん?何かいるの?」
飼い主の女性は、その犬の目線を辿りましたが何も見えません。
「おかしな子…さぁ、行くわよ。」
女性はリードをグッと引くと、犬は名残惜しそうにシャイニーを見つめながら、ズルズルと引きずられて行きました。
犬にソッと手を振ると、シャイニーは溜め息をつきました。
「本当に人間には、僕の姿は見えないんだ…」
シャイニーは、また心がチクッと痛くなりましたが、
その痛みを振り払うように、頭を2、3回振るとユイの家を再び探し始めました。
「さぁ!ユイちゃんの家を探さなきゃ!え~と…あ!あった!」
赤い屋根の可愛らしいこじんまりとした家が、目に前に現れました。
シャイニーは嬉しくなり、玄関からスーッと体をすり抜けさせながら入っていきます。
(ユイちゃんは、どこかな…)
ユイは、リビングで一生懸命に絵を描いていました。
とても真剣な表情です。
(いた!ユイちゃんだ…何を描いているのかな?)
シャイニーが覗くと、ユイはお母さんの絵を描いていました。
「ママは、いつも忙しくてオシャレをしないの…だから、ユイがオシャレにしてあげるの。」
ユイは誰に話しかけるでもなく呟いています。
「ピンクのドレスに…ネックレスとイヤリング!それから…髪も綺麗にしましょ…出来た!」
ユイの手元には、ニコニコと笑うドレスを着たお母さんが描かれています。
まだ、小さなユイが描いた絵ですので、決して上手ではありません。
でも、その絵からはとても温かく優しい気持ちが溢れていました。
ユイは、余白に「まま」と書きました。
覚えたてのひらがなです。
ユイは出来上がった絵を見ながら満足そうに深く頷きました。
シャイニーは、そんなユイを見て心がとても温かくなりました。
(ユイちゃんは、本当にお母さんが好きなんだ…)
シャイニーは、ユイと話したくなり声をかけました。
「ユイちゃん。」
ユイに、シャイニーの声は届きません。
もう一度、声をかけてみます。
「ユイちゃん。」
やはり、ユイにシャイニーの声は届きません。
「ダメか…」
分かっていた事ではありましたが、シャイニーは少し悲しくなりました。
でも、何か方法があるはずだと、頭を捻りながら考えます。
「そうだ!」
シャイニーは、自分の翼をゆっくりと羽ばたかせてみました。
ユイがふと顔を上げます。
「ん?風…?窓は閉まってるのにどうして?」
ユイは、頬を撫でるような優しい風を感じキョロキョロと辺りを見回しました。
シャイニーはもう一度翼を羽ばたかせました。
「あれ?まただ…」
ユイは首を傾げます。
シャイニーは、とても嬉しくなりました。
「人は僕の姿が見えなくても感じる事が出来るんだ!」
シャイニーは、大きな発見に胸がドキドキしました。
そして、様々な方法を試そう…ユイに天使の存在を感じてもらおう…そう決意するのでした。
それからのシャイニーは、ユイに天使の存在を知ってもらう為に様々な事を試してみました。
ある時は、後ろからソッとユイを抱き締めました。
そして、ある時は翼でユイの頬を撫でました。
その度に、ユイはキョロキョロし首を傾げるのです。
その姿がとても可愛くてシャイニーの心は温かくなるのでした。
ある日、シャイニーはユイの前に自分の羽を一枚抜き落としてみました。
その羽は白くて大きな羽です。
ユイはすぐ羽に気付き、拾うと不思議そうに眺めました。
「羽?どうしてここに羽があるの?」
シャイニーが羽を落としたのは、ユイがよく絵を描いているリビングです。
突然現れた羽に、ユイは驚きを隠せないようでした。
「凄く綺麗な羽…」
ユイは羽を光にかざしました。
すると、その羽は七色に輝いたのです。
「わぁ~。虹みたいな羽だ…」
ユイは、羽を光にかざしながら暫くの間見惚れていました。
「この羽、ユイの宝物にしよ!ママにも教えなきゃ!」
ユイは嬉しそうにスキップしながら、自分の部屋に向かいました。
シャイニーも、その後を続きます。
部屋に入ると、ユイは机の引き出しから何かを出しました。
それは、可愛らしいお菓子の空き箱でした。
よく見ると、空き箱の蓋に「たからもの」と書かれています。
ユイは、その蓋を慎重に開けました。
箱の中には、色々な物が入っています。
片方だけになってしまったリボン、綺麗なビーズ、オモチャの指輪、小さなクマのぬいぐるみ…どれも、ユイの大切な物ばかりです。
その箱に、ユイはシャイニーの羽をしまいました。
「ママに教えなきゃ…」
ユイは、そう呟くと宝物が入った箱を抱きしめました。
シャイニーは、そんなユイを見てとても嬉しくなるのでした。
その夜、ユイはベッドに入りましたが寝付けずにいました。
昼間、突然現れた羽の事が気になりどうしても眠れないのです。
今まで見た事がないようなとても美しい羽。
どうしても、お母さんに羽を早く見せたい…ユイは、そう考えていました。
シャイニーは、そんなユイが早く眠れるように、優しく頭を撫でています。
しかし、眠るどころか目は冴えるばかりです。
ユイがベッドに入ってから、どれ位の時間が経ったでしょう。
玄関から、お母さんの声が聞こえました。
「ただいま~」
「ママだ!」
ユイは、いてもたってもいられずベッドから飛び起き走り出しました。
「ママ!おかえりなさい!」
廊下をバタバタと走ってきたユイを見て、お母さんは目を丸くしています。
「ユイ!まだ寝てなかったの?」
ユイの大きな声におじいさんとおばあさんも起きてきました。
「おやおや、こんな遅くになんの騒ぎだい?」
「おじいちゃん、おばあちゃん起こしちゃってごめんなさい。」
ユイは、そういうとお母さんの腕を掴み引っ張りました。
「ママ!こっちに来て」
「え!ユイどうしたの?」
「いいから、見せたい物があるの」
ユイは、お母さんの腕を引っ張りながら部屋へと向かいました。
部屋に入ると、ユイは急いで電気を点け、机の引き出しから宝物が入った箱を出しました。
シャイニーは、ドキドキしながら2人を見守ります。
「ママ…驚かないでね。」
ユイは、そう言うと慎重に箱の蓋を開けました。
そして、シャイニーの羽をお母さんに見せたのです。
「これ!見て!」
「えっと…これは羽ね…」
「ただの羽じゃないの!ユイがいつも絵を描いている部屋にやって来たの!」
「やって来た?」
お母さんは、意味が分からず首を傾げます。
「えっとね。ユイの前に突然降って来たの」
「あらまぁ…その羽を見せてくれる?」
ユイは、お母さんにソッと羽を渡しました。
お母さんは、羽をゆっくりと観察しています。
「結構、大きな羽ね…」
そう言いながら羽を光にかざした瞬間、七色に輝きました。
「あら…虹みたい…」
「そうなの!虹の羽なの!」
お母さんは目を細め、フッと笑うとユイを落ち着かせるように頭を優しく撫でました。
「ユイ…この羽は天使の羽かも知れないわ。」
その言葉を聞き、シャイニーは驚きました。
(お母さんは、天使の存在を知っているのかな…)
そう考えながら、シャイニーは2人を見つめます。
「天使?」
ユイは首を傾げます。
「そう、天使。ユイ、天使の絵本持っているでしょ?」
お母さんの言葉を聞き、ユイはハッとすると本棚から天使の本を出してきました。
「ママ、この本だよね?天使は本当にいるの?」
「そうねぇ…いるかも知れないわね。ユイが天使を信じ、天使を知りたい…そう思う事で天使はユイに会いに来てくれるかも知れないわ。」
ユイは、パァーッと顔を輝かせました。
「うん!ユイ、天使を信じる!天使をもっと知りたい!」
ユイはそう言いながらお母さんに抱きつきました。
お母さんは、ユイを抱きしめるとニコニコしながら言いました。
「ユイがそう思うなら、会いに来てくれるかも知れないわ。さぁ、今日はもう寝なさい。」
「うん!ママおやすみなさい。」
ユイは、ニコニコしながらベッドに入りました。
「おやすみ、ユイ。」
お母さんは、部屋の電気を消しソッと出ていきました。
でも、ユイは胸がドキドキしていて眠れません。
「天使だって…素敵!天使がユイの側にいるんだ!」
そう考えると嬉しくて寝られそうにありません。
「ねぇ、天使さん…ユイの側にいるの?」
思わずユイは話しかけました。
そうせずにはいられらかったのです。
「うん。ユイちゃん、僕は君の側にいるよ。」
シャイニーは答えました。
でも、ユイにはシャイニーの声は聞こえません。
「天使さんは人には見えないのかな…声も聞こえないのかな…」
ユイは、寂しそうに呟きました。
「どうして、人には見えないし声も聞こえないの…ユイ、天使さんと仲良くなりたい…」
この言葉にシャイニーが答えます。
「ユイちゃん…誰でも天使の姿は見えるし声も聞こえるよ。僕はそう信じてる。」
「今は見えないし、聞こえないけど…いつか見えるようになるかな?お話できるようになるかな?」
ユイは、シャイニーの言葉に答えるように呟きました。
「うん!絶対に大丈夫だよ。」
シャイニーも、思わずユイの言葉に答えていました。
「なんだか眠くなってきちゃった…ユイ、疲れたみたい…」
そう呟くと、ユイはパタッと寝てしまいました。
「さっきまで、あんなに元気だったのにもう寝てる。」
シャイニーは、ユイの寝顔を見つめながらクスッと笑いました。
シャイニーの心はホカホカと温かくなっています。
偶然とはいえ、ユイと会話できたように感じたからです。
「ユイちゃんに、僕の存在を知ってもらいたいな…そうだ!」
シャイニーは、スヤスヤと眠るユイの額に手をかざしました。
すると、頭から白い雲のようなモヤが現れました。
「ユイちゃんは、どんな夢を見てるのかな…」
モヤの中には、綺麗な花畑やウサギやリス、色鮮やかな小鳥達が見えました。
「よし!」
シャイニーは頷くと夢の中に入り、ユイの姿を探します。
すると、花畑の中で花冠を作っているユイを見つけました。
シャイニーは思い切って声をかけてみました。
「ユイちゃん。」
ユイは、顔を上げシャイニーを見つめました。
「あなたは誰?」
「僕はシャイニー。天使だよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ユイの顔はパッと明るくなりました。
「天使さん!」
「そう、天使。ユイちゃんの顔を翼で触ったり、羽を落としたのは僕だよ。」
そう言いながらシャイニーは、後ろを向き翼を2、3回羽ばたかせてみせました。
「わぁ~ユイのところにやって来た羽と同じ色…触ってもいい?」
ユイが聞くとシャイニーは笑顔で頷きます。
「いいよ。触ってごらん。」
シャイニーが翼の動きを止めると、ユイは手を伸ばしてソッと触りました。
「わぁ~柔らかくて温かい…」
すると、シャイニーは羽を1枚抜くとユイに渡しました。
「この羽をユイちゃんにあげる」
「ユイにくれるの?」
「うん。僕がユイちゃんの側にいる証拠だよ。」
「ありがとう!」
ユイは嬉しそうに笑い、羽を大切に胸に抱き締めました。
「僕は、暫く君の側にいるからね。」
「うん!分かった。ユイ、この羽も宝物にするね。」
ユイが答えると、シャイニーは嬉しそうにニッコリとしました。
「ユイちゃんありがとう。」
シャイニーは笑顔で答えるとスーッと消えていきました。
夢の中から戻ったシャイニーは、ユイの寝顔を見つめます。
ユイはニコニコしながらスヤスヤと眠り続けています。
「ユイちゃん、僕の存在に気付いてくれてありがとう。」
シャイニーの心は、ポカポカと温かくなり幸せな気持ちになるのでした。
ツバメの群れがシャイニーを見つけ、近付いてきました。
「やぁ!天使さん、そんなに急いでどこに行くんだい?」
一羽のツバメがシャイニーに話しかけます。
「ツバメさん、僕はこれから人間のユイちゃんに会いに行くんだ。笑顔が可愛い子なんだよ。」
シャイニーは、ワクワクしながら答えました。
「それは楽しみだね。でも、人間には天使さんの姿は見えないけど良いのかい?」
「そうみたいだね…でも、例え僕の姿が見えなくても、ユイちゃんに何か出来る事はあると思うんだ。僕が出来る事を精一杯してみるよ。」
シャイニーは、自分に言い聞かせるように言いました。
「きっと、天使さんなら出来ると思うよ。頑張って。僕達ツバメは、これから南の国に向かうんだ。」
「ありがとう!ツバメさんも長旅気を付けてね。」
シャイニーは、ツバメの群れに手を振ると、地上を目指し更に降りて行きます。
暫く降りると、地上の街並みが間近に見えてきました。
どんどん近くなる地上にワクワクしながら、ユイちゃんの家を目指します。
そしてとうとう地上が目の前に迫り、シャイニーはソッと足を地面に着けました。
「さてと…ユイちゃんの家はこの辺りのはずなんだけど…」
呟きながらユイの家を探していると、散歩中の犬とすれ違いました。
犬はシャイニーをジッと見つめ尻尾をパタパタと振っています。
「ん?何かいるの?」
飼い主の女性は、その犬の目線を辿りましたが何も見えません。
「おかしな子…さぁ、行くわよ。」
女性はリードをグッと引くと、犬は名残惜しそうにシャイニーを見つめながら、ズルズルと引きずられて行きました。
犬にソッと手を振ると、シャイニーは溜め息をつきました。
「本当に人間には、僕の姿は見えないんだ…」
シャイニーは、また心がチクッと痛くなりましたが、
その痛みを振り払うように、頭を2、3回振るとユイの家を再び探し始めました。
「さぁ!ユイちゃんの家を探さなきゃ!え~と…あ!あった!」
赤い屋根の可愛らしいこじんまりとした家が、目に前に現れました。
シャイニーは嬉しくなり、玄関からスーッと体をすり抜けさせながら入っていきます。
(ユイちゃんは、どこかな…)
ユイは、リビングで一生懸命に絵を描いていました。
とても真剣な表情です。
(いた!ユイちゃんだ…何を描いているのかな?)
シャイニーが覗くと、ユイはお母さんの絵を描いていました。
「ママは、いつも忙しくてオシャレをしないの…だから、ユイがオシャレにしてあげるの。」
ユイは誰に話しかけるでもなく呟いています。
「ピンクのドレスに…ネックレスとイヤリング!それから…髪も綺麗にしましょ…出来た!」
ユイの手元には、ニコニコと笑うドレスを着たお母さんが描かれています。
まだ、小さなユイが描いた絵ですので、決して上手ではありません。
でも、その絵からはとても温かく優しい気持ちが溢れていました。
ユイは、余白に「まま」と書きました。
覚えたてのひらがなです。
ユイは出来上がった絵を見ながら満足そうに深く頷きました。
シャイニーは、そんなユイを見て心がとても温かくなりました。
(ユイちゃんは、本当にお母さんが好きなんだ…)
シャイニーは、ユイと話したくなり声をかけました。
「ユイちゃん。」
ユイに、シャイニーの声は届きません。
もう一度、声をかけてみます。
「ユイちゃん。」
やはり、ユイにシャイニーの声は届きません。
「ダメか…」
分かっていた事ではありましたが、シャイニーは少し悲しくなりました。
でも、何か方法があるはずだと、頭を捻りながら考えます。
「そうだ!」
シャイニーは、自分の翼をゆっくりと羽ばたかせてみました。
ユイがふと顔を上げます。
「ん?風…?窓は閉まってるのにどうして?」
ユイは、頬を撫でるような優しい風を感じキョロキョロと辺りを見回しました。
シャイニーはもう一度翼を羽ばたかせました。
「あれ?まただ…」
ユイは首を傾げます。
シャイニーは、とても嬉しくなりました。
「人は僕の姿が見えなくても感じる事が出来るんだ!」
シャイニーは、大きな発見に胸がドキドキしました。
そして、様々な方法を試そう…ユイに天使の存在を感じてもらおう…そう決意するのでした。
それからのシャイニーは、ユイに天使の存在を知ってもらう為に様々な事を試してみました。
ある時は、後ろからソッとユイを抱き締めました。
そして、ある時は翼でユイの頬を撫でました。
その度に、ユイはキョロキョロし首を傾げるのです。
その姿がとても可愛くてシャイニーの心は温かくなるのでした。
ある日、シャイニーはユイの前に自分の羽を一枚抜き落としてみました。
その羽は白くて大きな羽です。
ユイはすぐ羽に気付き、拾うと不思議そうに眺めました。
「羽?どうしてここに羽があるの?」
シャイニーが羽を落としたのは、ユイがよく絵を描いているリビングです。
突然現れた羽に、ユイは驚きを隠せないようでした。
「凄く綺麗な羽…」
ユイは羽を光にかざしました。
すると、その羽は七色に輝いたのです。
「わぁ~。虹みたいな羽だ…」
ユイは、羽を光にかざしながら暫くの間見惚れていました。
「この羽、ユイの宝物にしよ!ママにも教えなきゃ!」
ユイは嬉しそうにスキップしながら、自分の部屋に向かいました。
シャイニーも、その後を続きます。
部屋に入ると、ユイは机の引き出しから何かを出しました。
それは、可愛らしいお菓子の空き箱でした。
よく見ると、空き箱の蓋に「たからもの」と書かれています。
ユイは、その蓋を慎重に開けました。
箱の中には、色々な物が入っています。
片方だけになってしまったリボン、綺麗なビーズ、オモチャの指輪、小さなクマのぬいぐるみ…どれも、ユイの大切な物ばかりです。
その箱に、ユイはシャイニーの羽をしまいました。
「ママに教えなきゃ…」
ユイは、そう呟くと宝物が入った箱を抱きしめました。
シャイニーは、そんなユイを見てとても嬉しくなるのでした。
その夜、ユイはベッドに入りましたが寝付けずにいました。
昼間、突然現れた羽の事が気になりどうしても眠れないのです。
今まで見た事がないようなとても美しい羽。
どうしても、お母さんに羽を早く見せたい…ユイは、そう考えていました。
シャイニーは、そんなユイが早く眠れるように、優しく頭を撫でています。
しかし、眠るどころか目は冴えるばかりです。
ユイがベッドに入ってから、どれ位の時間が経ったでしょう。
玄関から、お母さんの声が聞こえました。
「ただいま~」
「ママだ!」
ユイは、いてもたってもいられずベッドから飛び起き走り出しました。
「ママ!おかえりなさい!」
廊下をバタバタと走ってきたユイを見て、お母さんは目を丸くしています。
「ユイ!まだ寝てなかったの?」
ユイの大きな声におじいさんとおばあさんも起きてきました。
「おやおや、こんな遅くになんの騒ぎだい?」
「おじいちゃん、おばあちゃん起こしちゃってごめんなさい。」
ユイは、そういうとお母さんの腕を掴み引っ張りました。
「ママ!こっちに来て」
「え!ユイどうしたの?」
「いいから、見せたい物があるの」
ユイは、お母さんの腕を引っ張りながら部屋へと向かいました。
部屋に入ると、ユイは急いで電気を点け、机の引き出しから宝物が入った箱を出しました。
シャイニーは、ドキドキしながら2人を見守ります。
「ママ…驚かないでね。」
ユイは、そう言うと慎重に箱の蓋を開けました。
そして、シャイニーの羽をお母さんに見せたのです。
「これ!見て!」
「えっと…これは羽ね…」
「ただの羽じゃないの!ユイがいつも絵を描いている部屋にやって来たの!」
「やって来た?」
お母さんは、意味が分からず首を傾げます。
「えっとね。ユイの前に突然降って来たの」
「あらまぁ…その羽を見せてくれる?」
ユイは、お母さんにソッと羽を渡しました。
お母さんは、羽をゆっくりと観察しています。
「結構、大きな羽ね…」
そう言いながら羽を光にかざした瞬間、七色に輝きました。
「あら…虹みたい…」
「そうなの!虹の羽なの!」
お母さんは目を細め、フッと笑うとユイを落ち着かせるように頭を優しく撫でました。
「ユイ…この羽は天使の羽かも知れないわ。」
その言葉を聞き、シャイニーは驚きました。
(お母さんは、天使の存在を知っているのかな…)
そう考えながら、シャイニーは2人を見つめます。
「天使?」
ユイは首を傾げます。
「そう、天使。ユイ、天使の絵本持っているでしょ?」
お母さんの言葉を聞き、ユイはハッとすると本棚から天使の本を出してきました。
「ママ、この本だよね?天使は本当にいるの?」
「そうねぇ…いるかも知れないわね。ユイが天使を信じ、天使を知りたい…そう思う事で天使はユイに会いに来てくれるかも知れないわ。」
ユイは、パァーッと顔を輝かせました。
「うん!ユイ、天使を信じる!天使をもっと知りたい!」
ユイはそう言いながらお母さんに抱きつきました。
お母さんは、ユイを抱きしめるとニコニコしながら言いました。
「ユイがそう思うなら、会いに来てくれるかも知れないわ。さぁ、今日はもう寝なさい。」
「うん!ママおやすみなさい。」
ユイは、ニコニコしながらベッドに入りました。
「おやすみ、ユイ。」
お母さんは、部屋の電気を消しソッと出ていきました。
でも、ユイは胸がドキドキしていて眠れません。
「天使だって…素敵!天使がユイの側にいるんだ!」
そう考えると嬉しくて寝られそうにありません。
「ねぇ、天使さん…ユイの側にいるの?」
思わずユイは話しかけました。
そうせずにはいられらかったのです。
「うん。ユイちゃん、僕は君の側にいるよ。」
シャイニーは答えました。
でも、ユイにはシャイニーの声は聞こえません。
「天使さんは人には見えないのかな…声も聞こえないのかな…」
ユイは、寂しそうに呟きました。
「どうして、人には見えないし声も聞こえないの…ユイ、天使さんと仲良くなりたい…」
この言葉にシャイニーが答えます。
「ユイちゃん…誰でも天使の姿は見えるし声も聞こえるよ。僕はそう信じてる。」
「今は見えないし、聞こえないけど…いつか見えるようになるかな?お話できるようになるかな?」
ユイは、シャイニーの言葉に答えるように呟きました。
「うん!絶対に大丈夫だよ。」
シャイニーも、思わずユイの言葉に答えていました。
「なんだか眠くなってきちゃった…ユイ、疲れたみたい…」
そう呟くと、ユイはパタッと寝てしまいました。
「さっきまで、あんなに元気だったのにもう寝てる。」
シャイニーは、ユイの寝顔を見つめながらクスッと笑いました。
シャイニーの心はホカホカと温かくなっています。
偶然とはいえ、ユイと会話できたように感じたからです。
「ユイちゃんに、僕の存在を知ってもらいたいな…そうだ!」
シャイニーは、スヤスヤと眠るユイの額に手をかざしました。
すると、頭から白い雲のようなモヤが現れました。
「ユイちゃんは、どんな夢を見てるのかな…」
モヤの中には、綺麗な花畑やウサギやリス、色鮮やかな小鳥達が見えました。
「よし!」
シャイニーは頷くと夢の中に入り、ユイの姿を探します。
すると、花畑の中で花冠を作っているユイを見つけました。
シャイニーは思い切って声をかけてみました。
「ユイちゃん。」
ユイは、顔を上げシャイニーを見つめました。
「あなたは誰?」
「僕はシャイニー。天使だよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ユイの顔はパッと明るくなりました。
「天使さん!」
「そう、天使。ユイちゃんの顔を翼で触ったり、羽を落としたのは僕だよ。」
そう言いながらシャイニーは、後ろを向き翼を2、3回羽ばたかせてみせました。
「わぁ~ユイのところにやって来た羽と同じ色…触ってもいい?」
ユイが聞くとシャイニーは笑顔で頷きます。
「いいよ。触ってごらん。」
シャイニーが翼の動きを止めると、ユイは手を伸ばしてソッと触りました。
「わぁ~柔らかくて温かい…」
すると、シャイニーは羽を1枚抜くとユイに渡しました。
「この羽をユイちゃんにあげる」
「ユイにくれるの?」
「うん。僕がユイちゃんの側にいる証拠だよ。」
「ありがとう!」
ユイは嬉しそうに笑い、羽を大切に胸に抱き締めました。
「僕は、暫く君の側にいるからね。」
「うん!分かった。ユイ、この羽も宝物にするね。」
ユイが答えると、シャイニーは嬉しそうにニッコリとしました。
「ユイちゃんありがとう。」
シャイニーは笑顔で答えるとスーッと消えていきました。
夢の中から戻ったシャイニーは、ユイの寝顔を見つめます。
ユイはニコニコしながらスヤスヤと眠り続けています。
「ユイちゃん、僕の存在に気付いてくれてありがとう。」
シャイニーの心は、ポカポカと温かくなり幸せな気持ちになるのでした。
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『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
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