【敵→恋】春雪に咲く花【探偵ミステリーBL】

郁雨いくううう!

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【敵同士→恋】7話(3)【探偵ミステリーBL】

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「いてて」

玄沢は額を押さえた。
朝からズキズキすると思ったら、中央が赤く腫れている。

(一体、いつできたんだ、これは……?)

玄沢は額を押さえた。
朝からズキズキすると思ったら、中央が赤く腫れている。

今朝、重たいまぶたをこじ開けて起きたときには、もう陽向の姿は事務所になかった。

代わりに置かれていたのは、お礼の言葉が書かれた走り書きのメモだけ。
その最後には──「冷水でも浴びてから、外に出ること!」の一文。

(また寝ぼけている間に、俺は何かをやらかしたのか……?)

ため息とともにフロントミラーから視線を外す。

冬返りの冷え込みで、数日前の雪はまだ溶けず、舗道脇に高く積み上がっていた。
天気予報では、また大型の低気圧が都心を直撃すると言っていた。

シートベルトをかけ、ギアに手をかけたところで——
バックミラーに映った影を見て、玄沢はもう一度ため息をついた。

「……おい、出てこい」

車を降り、腕を組んだままドアに寄りかかる。

「……うわっ!」

短い悲鳴とともに、電信柱の影からバケツがコロコロと転がってきた。
大雪の時に民家から飛んできたのだろう。

ほどなくして、同じ場所から陽向が顔を出す。

「ぐ、偶然だね」

わざとらしく目を逸らし、手をひらひらさせる陽向。
玄沢は肩で息をつき、大股で歩み寄った。

「一体、どうゆうつもりだ?」
「いやぁ、バレないかと思って」
「バレないかと思って? 初めからバレバレだぞ。どこの世界に探偵を尾行する依頼人がいるんだ」
「いやー、自分の雇った探偵がちゃんと仕事しているか調べるには、これかなと……」

言い訳を聞きながら、玄沢はこめかみを押さえる。
声を荒げそうになるのを必死に抑えた。

「……仕事は? 休んだのか?」
「半休。有給もたまってたから、いい機会だしまとめて取った」
「いい機会?」
「うん、海斗を探すのにね」
「ほう?」

低い声と鋭い視線。
陽向は観念して、素直に頭を下げた。

「ごめん。騙すつもりはなかったんだ! ほら、今だって一人じゃ動いてないし。玄沢さんを尾行すれば、一人で行動したことにならないし、海斗も探せると思って」

漂う険悪な気配に気づき、陽向は慌てて話題を変える。

「で、何か収穫あった? 俺のアパートを調べていたんだろう?」

玄沢は一度口を開きかけ——そして閉じ、努めて平静な口調に戻した。

「アパートには痕跡なし。住人に聞き込みもしたが、質屋のトラックを見た者以外は目撃者はいない。……あの男のことだから、すぐに見つかると思っていたんだがな」

「確かに、海斗がここまで鮮やかに逃げられるとは驚きかも。あいつって目立つし。見た目だけは相当いいから、どこにいても誰かが——」

ギロリと睨まれ、陽向は「……はい」と、すぐに口を噤む。

玄沢はため息をつき、首を軽くさする。

「とにかく、近隣の質屋を当たってみる」

そして、ちらりと陽向を見ると、不服そうに尋ねた。

「……一緒に、来るか?」
「え、いいの!?」
「あぁ。知らない場所で暴れられるよりは、近くで監視してた方が安心だ」
「俺は猛獣か何かかよ?」

口ではそう言いながら、心の中では「よっしゃ!」とガッツポーズをする。

「じゃ、さっそく?」
「いや——」

玄沢は首を振った。

「このあと、もう一つ調べることがある」
「あ、別の依頼? 詐欺事件だっけ?」
「あぁ。お前も来るか?」

陽向は、目を丸くした。

「え、いいの? 俺、無関係だけど……」
「あぁ。でないとお前、今すぐ質屋に行くだろう」

お見通しだ、と言わんばかりの視線に、陽向は肩をすくめるしかなかっ
た。

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ご覧いただき、ありがとうございます。

現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
興味がありましたら、お越し下さいませ☺

■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI


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