【敵→恋】春雪に咲く花【探偵ミステリーBL】

郁雨いくううう!

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【敵同士→恋】8話(1)【探偵ミステリーBL】

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「きゃあ~ん! 玄沢さ~ん!」

店に入った途端、黄色い──いや、野太い声が響き渡った。
雪崩のように、ドレス姿のホステスたちが玄沢を取り囲む。

「久しぶりぃ~! もう寂しかったんだからあ!」
「中々こっちに来てくれないんだもん! 相談したいこと、山ほどあったのに!」

まだ開店前なのか、彼女たちは派手なドレスに、化粧っ気のない半男半女の姿だった。

──『カルメン・レディ』。
繁華街随一の女装バーであるここには、女装の男性や〝一部〟が男のホステスが働いている。

シャンデリアが輝く店内には、コの字型のボックス席が並び、まるで高級クラブのような雰囲気。
噂では、芸能人や政治家がこっそり足を運ぶこともあるという。

「あら、この子は……?」

ホステスの一人が、玄沢の後ろの陽向に気づいた。
すぐさま他のホステスたちが色めき立つ。

「やだ、カワイイ! お肌、真っ白!」
「あっ! もしかしてリエさんが言ってた、玄沢さんの助手って!?」
「え、や……待っ──」

助けを求めて隣を見ると、玄沢が渋々うなずいた。

「まぁ、そんなものだ……」
「ちょっと、玄沢さん、何言って……!?」

陽向が後ろからその腕を引くと、玄沢は声をひそめた。

「しょうがないだろう。ここで捕まったら、話が長くなる」
「ちょっとお、何を二人でこそこそしてるのよお」

玄沢はにこやかに顔を上げた。

「いや、何でも。それより、ママはいるかな?」
「ここにいるわよ」

奥のステンドグラス扉から、着物姿の女性が現れる。

桜舞う訪問着に燕が刺繍された帯。
かすかな苦みを含んだ微笑は、普通の女性には出せない乾いた色気を漂わせていた。

「お久しぶりねぇ。玄沢さん」
「ご無沙汰してます。ママ」

玄沢は背筋を伸ばし、お辞儀をする。
ママは頷き、陽向にちらりと目をやった。

「あぁ、その子ね。〝ヤリ部屋〟からお姫様だっこで運んだっていう子は」

背後でホステスたちが一斉に叫ぶ。

「えっ、それ本当!? やばい萌えるんですけど!」

大興奮のホステスたちをよそに、玄沢はママと半笑いで向き合った。

「さすがの情報網ですね」
「あら、このくらい朝飯前よ」

ママは目を細めて、真っ赤な唇に手をやった。

もし『ケンタウロス』のリエが〝名相談役〟なら、『カルメン・レディ』のママは〝名情報屋〟だ。
繁華街一の店で、毎日のように情報が集まる上、裏社会とも繋がっているという。

「で、貴方が来たってことは、何か事件なのね?」

ママがボックス席を示す。
玄沢はお辞儀をして座り、続こうとした陽向は手で制された。

「お前は、あっちのお姉様方に遊んでもらえ」
「えっ、何言って——」

戸惑う陽向を、嵐のようにホステスたちがさらっていく。

「さあさあ、坊や! 私たちと仲良く遊びましょうねえ!」
「ちょ、ぎゃー! 玄沢さん、助けてっ!」

玄沢は手を振って見送り、ママに向き直った。

「それで、聞きたいことが」
「何でも聞いて頂戴。私の知る範囲ならね」

玄沢は詐欺事件の概要を手短に説明する。
途中、遅番のホステスたちが何人も「おはようございまーす」と入ってきた。

外では雪が降り出したらしく、ドアが開くたびに雨まじりの白いものが舞い込んでくる。

「いやな天気ね」

一通り話を聞き終えたママが眉をひそめた。

「そういえば……そろそろかしら? あの子の命日」

問う視線を避けるように、玄沢は手元へと視線を落とし、

「……ええ」

とだけ答えた。


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ご覧いただき、ありがとうございます。

現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
興味がありましたら、お越し下さいませ☺

■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI

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