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【敵同士→恋】8話(2)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む「ねえ」
店のバーカウンター。
そこでホステスたちに囲まれ、ジンをあおる陽向を、ママは横目で見やった。
「助手を雇ったってことは、貴方にとっていい傾向だと思ってもいいのかしら?」
「どうゆう、意味ですか……?」
「貴方は、やり過ぎるくらい頑張ってるわ。そろそろ重荷を下ろしてもいい頃じゃない? 今の貴方は雪の王国の王様みたいに、過去に閉じこもって出られなくなっているみたい」
「……美しすぎる表現ですね。でも、俺はそんなじゃない」
玄沢は乾いた笑みをこぼす。
雪山。横殴りの風。雪に埋もれた車。冷たい身体。白い顔。閉じたまま開かない瞳。
ぐっと瞼に力を込めた、その時だった。
「あ、あれ、君はっ!?」
陽向のよく通る声が、フロアから響いた。
店先から入ってきた人物を指さし、口をパクパクさせている。
相手──ミニスカートに黒タイツ、ブーツ姿の女も、目を大きく見開き、陽向を指さし返した。
「あんた……もしかして、海斗君の正妻!?」
「誰が正妻だ!」
怒りを爆発させそうな陽向の声を聞き、玄沢が立ち上がる。
「失礼」
ママは片手を上げて、軽く頷いた。
ホステスの人垣を割り、玄沢が陽向の肩をつかむ。
陽向はハッとして振り返り、震える指で再び相手を指さす。
「この子、あの時——玄沢さんがうちに来た時に、海斗が連れ込んでたキャバ嬢だ! 玄沢さんだって見ただろう!?」
「いや……俺が駆けつけた時には、お前ら以外誰も……」
「フラー(くそっ)! そうだった! こいつ、いいところで逃げやがって!」
「ちょっと、リスク回避って言ってくれない?」
キャバ嬢は髪をくるくる弄び、唇の端をつり上げた。
「それに私、キャバ嬢じゃないし」
「は……? じゃないって……」
陽向は辺りを見回して、驚愕の声を上げた。
「まさか……男!?」
「当たり。ただし、下だけね」
セナちゃん──確か、そう呼ばれていたホステスは、挑発的にスカートの盛り上がりに手を這わせた。
「で、正妻さんは何の用? 海斗とのこと、訴えに来たの? 探偵まで雇って?」
セナは玄沢にちらりと視線をよこし、舌打ちした。
「あれは一回だけの成り行きよ。正妻がいるなら、そう言って欲しかった。良かった。あいつの言葉、真に受けなくて」
「だから、正妻じゃないし!」
「キャー! キャットファイトだわ!」
ホステスたちがやいやいと囃し立てる。
セナちゃんもすっかりその気で、小悪魔のような笑みを浮かべた。
「えぇ、そうなの? まぁ、身体の相性は悪かったみたいだからね。海斗が浮気しても仕方ないか」
「……相性?」
「あれ、知らなかったの?」
セナちゃんは、ふふんと鼻で笑った。
「あいつね、フェムドム趣味があるの。最初はストレートぶって、『本物の女になったらヤりたい』なんて言ってたくせに、私のイチモツを見た途端やる気満々よ。
友達のキャバ嬢──こっちは正真正銘の女──にもペニスバンドをつけてくれって頼んだらしいわよ。ほんと変態」
「フェムドム、趣味……?」
セナが下卑た視線で、陽向を値踏みするように見つめた。
「どう? 彼氏が、女や女装家にホられてヒーヒー言ってるドM変態男だってわかった感想は?」
陽向の頭の中は真っ白で、足元がふらついた。
海斗がホられて、ヒーヒー?
フェムドム趣味のドM変態男?
(そんなの、ありえない……)
確かに浮気は多かったが、行為自体はいつも普通だった。
女性好きのそぶりも、ホられたいなんて様子も一度もなかった。
むしろ、いつも向こうから迫ってきて──。
(……いや、違ったのか?)
もしかして、俺の欲求不満に気づいて、お情けで相手してくれていた……?
まるでヒモが、義務で身体を差し出すみたいに。
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現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
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■あらすじ動画(1分)
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