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【敵同士→恋】9話(4)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む「……ふ、あはははっ……!」
静寂を破り、乾いた笑いが陽向の喉から飛び出した。
(そうだよ、そうだよなっ!)
自分の滑稽さに、笑うしかなかった。
何てバカな勘違いをしていたんだろう。
玄沢が優しいのは仕事だからだ。
自分に気があるわけじゃない。
もし自分が別の依頼人だったとしても、きっと同じように接しただろう。
なのに——どうして自分だけ特別だと思い込んでしまったのか。
いや、ある意味で「特別」なのかもしれない。
特別に「面倒で煩わしい客」のひとり。
だからこそ「バカなことするな」と釘を刺されたのだ。
(くそっ、何が好感度だ! とっくに底を突いてるってのに!)
「……はあぁぁぁ」
頭を抱え、その場にへたり込む。
両手で顔を覆った。
「……やばい、辛すぎる」
好きだとわかった途端に失恋なんて……。
だが、これはこれで良かったのかもしれない。
想いが大きくなって、もっと深く傷つく前に気づけたのだから。
恋愛感情を抱いていなかった海斗にさえ、ずるずると関係を続けてしまった結果、ここまで痛い目を見ている。
ならば、早めに現実を知ったのは幸運だ。
「よし!」
ゴシゴシと目を拭い、勢いよく立ち上がる。
——決めた。しばらく恋はしない。
今の自分に必要なのは、ただ静かで穏やかな日々だ。
裏切りも衝動もない、淡々とした暮らし。
それを手に入れるためなら、恋なんて切り捨ててやる。
恋愛なぞ、貯金と生活を食い潰すだけの、大いなる災いだ。
「そうだ! 俺は大丈夫! 何ともない! 寝て起きたら忘れてる!」
大声で叫びながら、陽向はドシンドシンと寝室に向かう。
※
深夜二時。
結局眠れず、陽向はソファに寝そべっていた。
頭の後ろで手を組み、窓の外を見上げる。
粉砂糖のような雪が、音もなくしんしんと降り積もっていく。
——ずいぶん遠くまで来てしまった。
東京で初めて雪を見た夜も、同じことを思った。
灰色の空。ネオンにけぶる街。星のない夜。
見渡す限りのビルとコンクリート。
どれも、故郷の空や海や太陽とはまるで違う。
ふいに、寂しさと懐かしさが胸にこみ上げた。
(もう、帰ろうかな……)
東京に来て十年。自分はよくやった方だ。
確かに、帰るべき家はもうない。
だが、またあの土地で一から始めればいい。
小さなアパートを借り、金を貯め、どんなに小さくてもいいからおばあがやっていたような店を開く。
そうして、一人で生きていけばいい。
誰にも頼らず。
一人で。
(そうだ、それがいい。そうしよう……)
寒さで詰まった鼻をすすった、その時。
ルルル……。
テーブルの上の携帯が鳴った。
メッセージらしく、すぐに音は止む。
(ったく、こんな時間に誰だよ)
渋々携帯を手に取る。液晶には「2:40」の表示。
どうせイタズラか何かだろうと画面を開いた。
——そして、息が止まった。
差出人の名前を見て、思わず目をこすり、もう一度確認する。
見間違いではない。
海斗からだった。
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ご覧いただき、ありがとうございます。
現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
興味がありましたら、お越し下さいませ☺
■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI
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