【敵→恋】春雪に咲く花【探偵ミステリーBL】

郁雨いくううう!

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【敵同士→恋】13話(4)【探偵ミステリーBL】

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誠吾は顎を指でさすりながら、ゆっくりと口を開いた。

「今回の詐欺に関しても、どうも腑に落ちない。謝花は本当に詐欺のことを知らなかったのか?」
その目が陰を帯びる。

「あいつはターゲットたちを誘惑して、見返りに莫大な金を受け取っていた。しかも、その金をこっそり貯め込んでいたらしい。……それを知っていたか?」

「……いや、知らない……」

陽向の喉の奥から、乾いた笑いがこぼれた。

「じゃあ何だよ。海斗はがっぽり貯め込んでたくせに、俺からも金をせびってたってのか?」
「どうやら、都合よく利用されたのはおたくの方だったらしいな」
「……くそっ!」

陽向は座布団に拳を打ちつける。
誠吾はそれを面白そうに眺めていた。

「これでも、あいつが何も知らなかったと思うか?」
「わからない……。あいつの無神経さとバカさ加減は、底が知れないから……」
「恋人のベッドで浮気するくらいには、な」
「——っ!?」

驚いて顔を上げると、誠吾は唇の端を歪めた。

「謝花は、ここに数日いた。少しつつけば、大抵のことはすぐに吐いたよ」

どうやら、海斗の顔の痕は詐欺グループだけじゃなく、誠吾側からも〝いただいた〟ようだ。

(……俺の私生活、何人の人間に筒抜けなんだよ……)

この調子じゃ、街中の人間に知れ渡ってもおかしくない。
いっそ、ほとぼりが冷めるまでここで監禁でもしてもらった方がマシかもしれない──そんな考えさえよぎった。

「……で、海斗は何て?」
「詐欺については『知らない』の一点張りだ。意外と強情でな。どんなに〝挨拶〟してやっても吐かない。——だからだ」

誠吾は腕を組み替え、袖の中に手を差し入れた。

「おたくに頼みたい。奴が有罪か無罪か、引き出してほしい。恋人相手なら、油断してぽろっと話すかもしれないだろう」

「恋人じゃない」と言いかけたが、それよりも気になることがあった。

「……もし、海斗が知ってて荷担してたとしたら……?」

誠吾の目が、蛇のように細く光った。

「そしたら——〝山登り〟にでも行ってもらおうか。ただし、戻ってこられるかはわからない山登りだがな」
「……!? そんなっ——」

思わず立ち上がりかけた陽向を、誠吾が手で制した。

「他人の心配をしてる場合か、坊や?」

その声に、ぞくりと背筋が粟立つ。

「もし謝花が詐欺と知ったうえで関わっていたなら……おたくにも〝連帯責任〟を負ってもらう」
「でも、さっきは俺が関与してないって……!」

「関与していないことは認める。だが、おたくは彼氏があれだけの人数と浮気していても黙っていた」

誠吾の声が、静かな嘲笑が混じる。

「詐欺のことを知っていて、おこぼれを狙って黙認していた。……そう思われても、仕方ない」
「そんなの、違っ……! それに海斗は俺の彼氏じゃない!」
「信じろと? 一緒のアパートに住んでいて、同棲までしていて?」
「それはっ……」

陽向はぐっと唇を噛み、息を整えてから押し殺した声で尋ねた。

「じゃあ……もし海斗が有罪だったら、俺も……? その、楽しい〝山登り〟に?」
「そうだな……おたくは——」

誠吾は陽向をじろじろと見回し、何か思いついたように口元を吊り上げた。

「俺があの繁華街を仕切ってるって話はしたな? あそこには男好きの男が集まる。中には、ちょっとヤバい店もある。そうゆうところは、いつも人手不足でな」

嫌な予感がして、陽向の眉間が引きつる。

「……つまり、売られるってこと?」
「さぞ高く売れるだろうな、おたくは。きっといい『ご主人様』が見つかるだろう。ただし——五体満足でいられるかは、保証できんが」
「……っ」
「言っておくが、恋人をかばって嘘でもつこうもんなら、同じ末路だ」

誠吾は脇息をポンと叩いた。

「俺が欲しいのは、真実だけだ。まがい物はいらん」

それは、まるで判決を告げる裁判官のような口調だった。

「さっそく取りかかれ。期限は……今夜中だ。朝になったら答えを聞こう」
「朝って……もうすぐじゃんか!?」
「生憎、こちらにも時間がない。謝花ばかりに時間をかけていられん。逃げた他の奴らも追わなきゃならないしな」
「でも……!」
「いいか。これは〝お願い〟じゃない。〝命令〟だ。わかったら、さっさと戻れ」

陽向の頬がぴくりと痙攣する。

「……もしかして、さっきのところに戻されるの?」
「貞操の危機か? いい手だと思うがな。あの男は拷問より、色仕掛けの方が弱そうだ」

陽向の顔色が変わったのを見て、誠吾は軽く手を上げた。

「わかった、わかった。そう怖い顔するな。護衛はつけておく。謝花が必要以上に近寄らないよう言い含めておこう」

親切そうに言うその口ぶりの裏に、誠吾の本意は見えていた。

——護衛とは名ばかりだ。
実際は、陽向が海斗と口裏を合わせないよう見張るための監視役。

「……わかった」

陽向が小さく頷くと、誠吾は満足そうに目を細めた。




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ご覧いただき、ありがとうございます。

現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
興味がありましたら、お越し下さいませ☺

■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI

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