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【敵同士→恋】14話(2)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む「玄沢さん」
陽向は、そろそろと相手を見上げた。
自信はない。でも、これだけは伝えたかった。
「助けにきてくれて、ありがとう……本当に、嬉しい……」
今の自分には、それを言うので精一杯だった。
内心、心臓はバクバク鳴っている。
返事を待つが、いつまで経っても何も返ってこない。
(……どうしよう。やっぱり間違ってた? 『怖かった』とか、無理にでも泣きつくべきだったか……?)
思考が空回りし、ぐるぐるとパニックに陥りかけたその時——。
ふっと、笑い声が聞こえた。
顔を上げると、玄沢が穏やかな顔で微笑んでいた。
「今は、いい。それで十分だ」
ふいに背中に温もりを感じた。
大きな手にぐいっと引き寄せられ、気がつけばきつく抱きしめられていた。
「……陽向、会いたかった」
耳元に、玄沢の温かい吐息がかかる。
「本当に心配した。新聞を取りに行ったっきり戻らないし、気になって部屋を見に行ったら、ポストの中身が散らばってて……。心臓が止まるかと思った」
玄沢の声はわずかに、震えていた。
「気がついたらリエさんの店とか、アパートとか……がむしゃらに駆けずり回ってて。普段は絶対に近づかないヤクザの組員にも接触して、お前の情報を買ったり——」
言葉は徐々に掠れ、最後は囁きのようになった。
「……ようやく、お前の気持ちがわかったよ。確かに、パニックになったら周りなんて見ていられないな……ごめん。こんなに遅くなってしまって……」
「違う! 玄沢さんが謝ることじゃないっ! 俺だって、玄沢さんに——」
陽向は思わず声を張り上げていた。
——会いたかった。
そうだ。俺は、会いたかったんだ。
今になってようやく気づいた。
どうして、こんな簡単な言葉さえ忘れてしまっていたのだろう。
ひとりで気張って生きていくうちに、「会いたい」「寂しい」……そんな簡単な気持ちを、素直に言えなくなっていた。
陽向は、玄沢の背中に腕を回した。
抱きしめ返すと、胸いっぱいに相手の匂いが広がる。
二人の心臓の音が、トクトクと重なっていく。
——安心する。
張り詰めていた神経が、少しずつ緩んでいくのを感じた。
「あ、あの、お取り込み中すみませんっ……!」
地下牢へ続く扉の隙間から、ボンレス君がおどおどと顔をのぞかせる。
後ろには、手を頭の後ろで組んだ海斗の姿も見えた。
玄沢が眉をひそめる。
「おい、そいつを外に出すなって——」
「す、すみません。でも、誠吾さんの指示なんです。何でも時間らしくて。海斗さんも一緒に連れて来いって」
ボンレス君は携帯と陽向を交互に見比べる。
陽向がハッとしてガラス戸の外を見ると、ちょうど朝日が差し込み始めていた。
——くそっ。
思わず舌打ちする。
海斗に引っかき回されたせいで、誠吾にどう報告するか、まだ何も整理できていない。
自分の一言が、海斗と自分、ふたりの運命を左右するのだ。
うまくやらなきゃならない——そう思えば思うほど、プレッシャーで頭が爆発しそうになる。
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現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
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■あらすじ動画(1分)
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