【敵→恋】春雪に咲く花【探偵ミステリーBL】

郁雨いくううう!

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【敵同士→恋】14話(3)【探偵ミステリーBL】

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「話は、誠吾から少しだけ聞いている」

玄沢がグイッと陽向の肩を掴む。

「ここは俺が何とかする。俺の話なら、誠吾も耳を貸すかもしれない」
「お、お二人って……どういう関係なんですか?」

ボンレス君が好奇心を抑えきれず、恐る恐る尋ねた。
玄沢は「あー」と間の抜けた声を出し、首の裏を掻いた。

「探偵になる前、雪人(ゆきと)——友人の事故を調べていた時に知り合った。あの頃の俺は右も左もわからなくて、警察の捜査資料をどうにか手に入れようと躍起になってた」

苦みを噛みしめるように、玄沢は続ける。

「そんな時に、誠吾が手下を連れて現れてな。『これ以上嗅ぎ回ったら命がないぞ』って脅された。何でも、雪人の相手だった男が、松葉組の遠縁だったらしい」

「で、それで?」

ボンレス君が食いつくように急かす。

「断った。真実を知るまで止めないって言ってな。そしたら誠吾が急に笑い出して、『そういうの、嫌いじゃない』って」

玄沢は、ふうと大きく肩で息をする。

「以来、妙にちょっかいをかけてくるようになった。しまいには『お前が真実を掴むのが先か、俺が組の頭になるのが先か、競争だな』とか言ってきたり」

「ははぁ~……噂に聞いたライバル関係って、本当だったんですねぇ~」

感心するボンレス君の隣で、陽向が玄沢に尋ねる。

「でも……大丈夫なの? そしたら今回のことって、あの人に借りを作ることになるんじゃない?」
「大丈夫だ。お前はそんなこと、気にするな」

玄沢はにこりと微笑み、

「誠吾のところに案内してくれ」

とボンレス君を促す。
通りすがりに、ポンと陽向の肩を叩いた。

「陽向、お前はここでおとなしく待ってろ。いいな、絶対に暴れるなよ」

その言葉に、胸の奥に黒い染みのような不安が広がる。

この人は危ない。
——いや、危うい。

玄沢は、周りの人間を守ろうとするあまり、何もかも——自分自身すら差し出してしまう。

果たしてそれは、玄沢にとっていいことなのだろうか?

「ちょっと待って!」

去りかけた玄沢の広い背中を、思わず呼び止めた。
玄沢が不審そうに振り返る。

「どうした?」
「どうしたもこうしたもない! 玄沢さんって、どうしてそうなんだよ!」
「……そうって?」
「そうやって、いつも他人の責任まで背負いこもうとするところ!」

陽向は拳を握りしめ、叫ぶ。

「雪人さんのことだって、そうだ! 必要以上に彼の死をしょいこんでいる! 玄沢さんのせいじゃないのに!」

陽向はひゃっくりと上げるように息を飲み込んだ。

「前に言ってたよな? 『雪人が今でもあの雪山に閉じこめられているようだ』って……でも違う!
——本当に閉じこめられているのは、玄沢さんの方なんじゃないのか!」

「……何だって?」

玄沢の眉が、ゆっくりと歪む。
陽向は一瞬たじろぐが、もう止まれなかった。

パニックでも、怒りのせいでもない。
今、言わなきゃいけないと思ったのだ。

「あんた、散々、俺に言ってたじゃん!? 『頼れ』だの『甘えろ』だの。それは俺も同じだよ!」

拳を握りしめて、身を乗り出すように言う。

「確かに俺は玄沢さんみたいに頼りがいもないし、すぐ頭に血がのぼる。
だけど、もし玄沢さんが間違った方向に行こうとしていたら……俺だって、全力で止めたいと思う!」

そこで大きく息を吸う。

「もし玄沢さんが、いまだにあの雪山に閉じこめられているなら、俺が連れ出す! いつだって、何度だって!」

「ぎゃー、ヤバイッ! 陽向、カッコイイ!」

背後から、海斗の黄色い悲鳴が上がった。
無視して、陽向はボンレス君をキッと睨む。

「……連れてってくれ。これは俺の問題だ。俺がどうにかしなきゃいけない」

ボンレス君はしばらく、玄沢と陽向を交互に見ていたが——
やがて観念したように小さく頷くと、

「こっちです」

と歩き出した。

「うふふふ。俺、一生陽向についていくぜ!」

海斗が後ろから腕を組んでくる。

「うざい」

そう突き返すが、懲りずにスキップで後ろをついてくる。

陽向はボンレス君の背中を追いながら、ふと後ろを振り返った。
玄沢は、ガラス戸からもれる朝の光を背に、呆然と床を見つめていた。

胸がずくりと痛む。

せっかく助けに来てくれたのに。
「俺の問題だから」と言い放って、彼を拒絶してしまった。

人を助けること——それは、玄沢にとって〝生きる意味〟だ。
だけど、俺はその手をはねのけてしまったのだ。

(……もしかしたら、俺たちの関係もここで終わるのかもしれない)

それでも、後悔だけはしたくなかった。

海斗の時のように、何も見ないふりをして誤魔化す恋愛なんてもうやめよう。
誰かの期待に応えるために、自分をすり減らして付き合うのは、もうたくさんだ。
他人に寄りかかって生きるのは、終わりにする。

——何よりも、玄沢とは対等でいたい。

一方的に守られるだけなんて、嫌だ。
寄りかかるだけじゃなく、甘えたり甘えられたり、支え合える関係になりたい。

陽向は、ぐっと前を向いた。
ボンレス君のあとについて、しっかりと歩を進める。


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ご覧いただき、ありがとうございます。

現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
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■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI

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