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【敵同士→恋】15話(1)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む「誠吾さん、失礼します。二人を連れてきました」
「入れ」
ボンレス君が広間につながる襖を開け、陽向と海斗を中へ招き入れる。
大広間は以前とは違い、組員と思われる男が数人集まっていた。
全員がびっしりとスーツを着こみ、異様なほどの威圧感を放っている。
上座には松葉誠吾の姿があった。
出掛ける直前なのか、上質な三つ揃いのスーツを纏い、片手で懐中時計を弄んでいる。
「で、『真実』は見つかったか?」
案内されて陽向が向かいに座った瞬間、誠吾が目を向けてきた。
「真実? 真実って、何のこと?」
隣でしつこく聞いてくる海斗を肘で押しやり、陽向はぐっと背筋を伸ばした。
何組もの鋭い眼差しが、自分の動向を注視しているのを背中で感じる。
ここで下手なことを口にすれば、即、ボコボコにされて山にポイ——が現実味を帯びるほどの空気だった。
陽向はごくりと唾を飲み込み、意を決して誠吾の目をまっすぐに見据える。
「海斗は……海斗は、白です」
「その根拠は?」
「それは……」
言葉を探そうとした瞬間、かたり、と後ろで襖が静かに開く音がした。
振り返ると、玄沢が音もなく部屋に入り、襖の近くに腰を下ろすところだった。
思わず、陽向は気づかぬうちに安堵の息を吐いていた。
少なくとも玄沢は、自分を見捨てたわけではなかった。
その事実が、不思議と背中を押す。
ひと呼吸おいて、陽向は誠吾へと向き直った。
「俺は一年間、海斗と暮らしてきた。だから……わかるんです」
言葉に力を込めるように、陽向はゆっくりと話し始めた。
「海斗は確かに快楽に弱くて、気分に流されやすい。これまで何度も、勢いのまま危ないことに手を出しては、痛い目に遭ってきた。それは自業自得です。ぶっちゃけ、地獄に堕ちればいいと思ってるくらいです」
「そ、そんなぁ……」
横で海斗が情けない声を漏らしたが、陽向は無視して続ける。
「でも——」
一瞬言葉を切り、目線を誠吾から外さずに、重ねた。
「こいつ、自分が騙されたり痛めつけられたりしたことはコロッと忘れるくせに、他人を騙したり傷つけたりしたことは絶対に忘れないんです」
昔からの記憶が脳裏に次々と甦る。
「俺のうーちゃん——ウーパールーパーが死んだ時も、『あの時はごめんね』って、こっちが引くくらい泣いてたし。
三股がバレてキャバ嬢に刺されそうになった時も、腕からドクドク血を流しながら、全員に土下座して謝ってました」
海斗の顔がかたつむりのようにどんどん俯いていくのを横目に見ながら、陽向は言葉を締めくくる。
「海斗は……人を騙そうとしても、結局どこかでボロが出てしまうような、小心者なんです! そんな奴が、詐欺だとわかってて客を騙すなんて、絶対にできません!」
思っていた以上に熱が入ってしまったのか、大広間に自分の声が反響する。
「なるほど。面白い演説だな」
パチパチと拍手の音がこだまする。
見ると、誠吾が薄笑いを浮かべて手を叩いていた。
だが、その音はすぐに途絶える。
「だがな——」
誠吾の声のトーンが一層、低くなる。
「俺が欲しいのは、思い出話じゃない。真実だ。誰が見ても客観的で、普遍的な——」
「そんなもの、あるはずないじゃないかっ!」
たまらず、陽向は声を荒げた。
「そもそも客観性が欲しいなら、なんで俺を呼んだ!? おかしいだろう、それって!」
気づけば身を乗り出し、拳を握りしめていた。
「陽向、止めろ」
いつの間にか、玄沢が後ろから肩を掴んできていた。
肩越しに陽向を見つめ、神妙な表情で頷く。
——大丈夫だ、任せろ。
そんな無言のメッセージが伝わってくるようだった。
「誠吾」
玄沢が陽向の前に出ると、膝元に静かに書類の束を置いた。
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■あらすじ動画(1分)
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