【敵→恋】春雪に咲く花【探偵ミステリーBL】

郁雨いくううう!

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【敵同士→恋】15話(3)【探偵ミステリーBL】

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海斗は図体に似合わぬ素早さで、誠吾の胸倉を掴んだ。

「何で、何で陽向がそんな目に合わなくちゃいけないのさ!?」

肩を怒らせながら、怒気混じりの声を張り上げる。

「俺が何かした!? 確かに浮気はしたし、ギャンブルも止められないし……女の子に入れてもらうのも好きだけど、あれは全部、ホストの仕事で——」

「お前は本当に、ただのホスト業だと思っていたのか? 嘘は、逆効果だぞ。俺はこれ以上、雑音は聞きたくない」

「嘘なんか、ついてないよっ……!」
「なら、金のことはどう説明する? あんな大金、ホストだけで稼げるか?」

「大金? そんなのもらってないよ。出張ホストの相場よりも低いくらいの給料だったし」

誠吾は呆れたように首を横に振る。

「じゃぁ、貯め込んでいた金は何だ? 知っているんだぞ、お前が口座に大金を貯め込んでいるのは。まさか、あんな短期間であれだけ稼げる訳ないだろう」

「……あ、あれは……」

海斗の視線が泳いだ。
誰の目にも明らかなほど、動揺しているのが見て取れた。

「あ、あれは……稼いだ訳じゃない」
「では何だ? あんな大金、もらったとでもいうのか?」

言葉を詰まらせた末、海斗は自棄を起こしたように叫んだ。

「そうだよ! もらったんだよ!」
「は?」

誠吾が目を細める。
その鋭い視線に気圧されながらも、海斗はもごもごと口を動かした。

「……あれは、もやいなんだ、もやい!」
「もやい?」

誠吾が眉をひそめる。
それに呼応するように、その場にいた全員が、はて、と首を傾げた。

陽向は反射的に口を開いた。

「もやいっていうのは、ええっと……」

一瞬、説明の言葉を探しながらも、どうにか続ける。

「毎回、みんなでお金を持ち寄って、くじで引き当てた人が、その全部をもらえるっていうやつなんだ」
「そう、それっ! 俺、やっともやいが当たってさ、それであの金が手に入ったんだ!」

勢いよく頷く海斗に、誠吾は疑わしげな視線を向けた。

「本当か? こっちが沖縄のことを知らないと思って、嘘を言ってるんじゃないだろうな」
「そんなことしないよ!」

海斗は必死に手を振った。

「じゃあ、その金を何に使うつもりだったんだ? 知っているんだぞ。宵越しの金を持たないお前が、大事に貯め込んでいた。よもや、一人で逃げようとしていたんじゃないだろうな?」

「そ、それは……言えない……」

まごついた海斗を前に、誠吾が再び懐中時計の蓋を鳴らした。

「おい、そいつを連れていけ」

陽向を拘束していた組員が動きかけた瞬間——。

「わっ、わっ、言うよ! 言うからっ……! だから陽向は離してあげてっ……!」

海斗は叫び、何かを決意したように唇を噛む。
そして、顔を真っ赤に染めたまま口を開いた。

「お、俺は……女の子になりたかったんだっ……!」

その場が凍りついた。
全員が、ぽかんとした表情を浮かべる。

「う、嘘じゃないよっ……本当だ!」

海斗は慌てて弁解し始めた。

「ホストで貯めた金ともやいでもらった金で、手術を受けようって。改造済みの子たちに近づいたのは、もちろんヤるためでもあったけど、本当は色々と経験談とか聞いてみようと思って、その女になったあとのこととか……」

うつむいたまま、海斗は勢い良く言い放った。

「だから、俺が彼女たちをカモろうなんて、あるわけないじゃないか! 同志なのに……!」

そのまま地面に額をつけるように、土下座をする。

「お願いしますっ! 陽向を連れていかないで! 騙した女の子たちには、俺が謝りに回るから! 何なら、もやいの金で弁償もする!」
「ちょ、ちょっと待って! 海斗!」

陽向は思わず叫んでいた。

「そもそも何で、女になろうとしたのっ……!?」

衝撃すぎて、思考が追いつかない。
海斗が女になりたかったなんて、一度も聞いたことがない。

「だって、だって……」

海斗は喉を詰まらせ、鼻をすすった。

「女になったら、ぶっちゃけ……俺、かなり美人になると思うし! そしたら、みんながちやほやしてくれるんじゃないかって!」
「ちやほやって……十分されてると思うけど。あんなにモテて……」

陽向が呆れたように返すが、海斗はかぶせるように叫んだ。

「みんな、俺と一回寝たら、絶対、本命のところに帰っていっちゃうんだ。見捨てないでいてくれたのは、陽向くらいだよ!」

泣きじゃくる声の中で、海斗はぽつりぽつりと漏らした。

「……俺は、俺は……沖縄にいた時みたいに、ずっと構って甘やかしてもらいたいの! なのに、こっちきてから『バカ』だの『アホ』だのばっかりで……」

ひゃっくりと嗚咽の合間をぬって、海斗は続ける。

「それに女になったら、実家の墓守りなんてしなくてもよくなるし……」

ついに、うわーんと海斗は盛大に泣き始めた。

あまりの衝撃と勢いに、場にいた全員が言葉を失う。
呆然とした視線だけが、海斗に集まっていた。



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ご覧いただき、ありがとうございます。

現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
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■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI


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