【敵→恋】春雪に咲く花【探偵ミステリーBL】

郁雨いくううう!

文字の大きさ
4 / 55

【敵同士→恋】1話(4)【探偵ミステリーBL】

しおりを挟む


陽向ひなたは、自分の頭の中で、太い血管がブチリと切れる音を聞いた。

「おいっ、海斗かいとっ! テメエ~!」

静寂に包まれた雪空に、怒声が響き渡る。

「もしかしてお前、貸してやった金で──キャバクラに行ったんじゃねえだろうなっ!?」
「ち、違う、これは同伴出勤でっ……! 俺なら特別に格安にしてくれるっていうからっ……!」
「はぁ~!? つまりなんだ!? 人の家で一発ヤったあと、仲良く同伴ってか!?」

バン、と足を踏みしめる。
雪の下がギシギシと悲鳴をあげた。

海斗がギョッと後ずさる。まるで猛獣に襲われたウサギのように、両腕で顔をかばう

「待って! 話せばわかる! 話せば……ほら、セナちゃんも何か──」

海斗が振り返ったとき、風俗嬢の姿はもうなかった。
ピンヒールの足跡だけが、点々と通りの向こうへと続いている。

どうやら胸の大きさだけでなく、逃げ足もピカイチな女性だったようだ。

「……ほう、話せばわかるって?」

陽向はポキポキと拳の骨を鳴らしながら、じりじりと近づく。

「ま、待て! 陽向! 落ち着けよっ! ちょっと相談に乗ってただけなんだ! 彼女、今訳ありで! ほんと、それだけだからっ!」
「ほう。じゃあ、ヤってないってことか?」
「……いや、ヤったけど……」

ブチリ。
今度は全身の主要な血管が、一斉に切れた音がした。

「この万年発情期のクサレチ○コザルがあ~!」

陽向はアパートの窓際に置かれていた植木鉢を手に取ると、中身の植物を引っこ抜き、鉢だけを海斗めがけて投げつけた。

「ア、  アガッ(痛い)! 危ない! 危ないよ! 」

ひょいっと身をかわした海斗の足元で、テラコッタの鉢が派手に砕ける。
陽向はすかさず次の鉢を手に取り、今度は確実に狙いをつけて構えた。

「~ッ、俺はな、今さらお前がどこの誰と寝ようが知ったこっちゃない。けどな──人ん家をラブホ代わりに使うのは、絶っっっ対に許さねぇ!」

鉢は海斗の身体ギリギリをかすめて飛び、破片が雪の上に飛び散った。
これには、さすがの海斗も声を荒げる。

「おい陽向! やりすぎだ! 当たったら死ぬぞ!」
「死ぬ? お前は一回死んで、蝿から生まれ直した方が、もっと謙虚になるだろうが!」

陽向は、並べられていた鉢を端から順番に投げていった。
海斗は、一つひとつを器用にかわしていく。

それが逆に陽向の導火線に火を注いだ。
今度はバラの植えられた大型の鉢を抱え上げ、両手で頭上に構える。

「これで終わりだ! 覚悟しろっ!」
「ちょ、ちょっと陽向!? 嘘だろう!?」
「嘘だと思うなら、俺の本気をその頭で受けてみろっ!」
「ぎゃっ、ぎゃああーっ! 殺されるぅ! 誰か、助けて!」

海斗が周囲に向かってわめき散らした、そのとき——

「──そこらへんにしておけ」

甘く、かすれた声が陽向の耳元をくすぐった。
鉢を持った手に黒皮の手袋をした大きな手が重なり、背後からひょいっと鉢を取り上げる。

「まったく、その細い腕で、どうしてこんなものが持ち上げられるんだ」

黒皮の手袋の男は、鉢を階段の下に静かに置くと、コートにかかった砂を軽く払って立ち上がった。

「……あんたは……」

陽向は目を見張る。
男は──先ほど駅前の本屋で見かけた、あの黒コートの男だった。




○●----------------------------------------------------●○

ご覧いただき、ありがとうございます。

現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
興味がありましたら、お越し下さいませ☺

■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI

○●----------------------------------------------------●○
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...