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【敵同士→恋】1話(4)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む陽向は、自分の頭の中で、太い血管がブチリと切れる音を聞いた。
「おいっ、海斗っ! テメエ~!」
静寂に包まれた雪空に、怒声が響き渡る。
「もしかしてお前、貸してやった金で──キャバクラに行ったんじゃねえだろうなっ!?」
「ち、違う、これは同伴出勤でっ……! 俺なら特別に格安にしてくれるっていうからっ……!」
「はぁ~!? つまりなんだ!? 人の家で一発ヤったあと、仲良く同伴ってか!?」
バン、と足を踏みしめる。
雪の下がギシギシと悲鳴をあげた。
海斗がギョッと後ずさる。まるで猛獣に襲われたウサギのように、両腕で顔をかばう
「待って! 話せばわかる! 話せば……ほら、セナちゃんも何か──」
海斗が振り返ったとき、風俗嬢の姿はもうなかった。
ピンヒールの足跡だけが、点々と通りの向こうへと続いている。
どうやら胸の大きさだけでなく、逃げ足もピカイチな女性だったようだ。
「……ほう、話せばわかるって?」
陽向はポキポキと拳の骨を鳴らしながら、じりじりと近づく。
「ま、待て! 陽向! 落ち着けよっ! ちょっと相談に乗ってただけなんだ! 彼女、今訳ありで! ほんと、それだけだからっ!」
「ほう。じゃあ、ヤってないってことか?」
「……いや、ヤったけど……」
ブチリ。
今度は全身の主要な血管が、一斉に切れた音がした。
「この万年発情期のクサレチ○コザルがあ~!」
陽向はアパートの窓際に置かれていた植木鉢を手に取ると、中身の植物を引っこ抜き、鉢だけを海斗めがけて投げつけた。
「ア、 アガッ(痛い)! 危ない! 危ないよ! 」
ひょいっと身をかわした海斗の足元で、テラコッタの鉢が派手に砕ける。
陽向はすかさず次の鉢を手に取り、今度は確実に狙いをつけて構えた。
「~ッ、俺はな、今さらお前がどこの誰と寝ようが知ったこっちゃない。けどな──人ん家をラブホ代わりに使うのは、絶っっっ対に許さねぇ!」
鉢は海斗の身体ギリギリをかすめて飛び、破片が雪の上に飛び散った。
これには、さすがの海斗も声を荒げる。
「おい陽向! やりすぎだ! 当たったら死ぬぞ!」
「死ぬ? お前は一回死んで、蝿から生まれ直した方が、もっと謙虚になるだろうが!」
陽向は、並べられていた鉢を端から順番に投げていった。
海斗は、一つひとつを器用にかわしていく。
それが逆に陽向の導火線に火を注いだ。
今度はバラの植えられた大型の鉢を抱え上げ、両手で頭上に構える。
「これで終わりだ! 覚悟しろっ!」
「ちょ、ちょっと陽向!? 嘘だろう!?」
「嘘だと思うなら、俺の本気をその頭で受けてみろっ!」
「ぎゃっ、ぎゃああーっ! 殺されるぅ! 誰か、助けて!」
海斗が周囲に向かってわめき散らした、そのとき——
「──そこらへんにしておけ」
甘く、かすれた声が陽向の耳元をくすぐった。
鉢を持った手に黒皮の手袋をした大きな手が重なり、背後からひょいっと鉢を取り上げる。
「まったく、その細い腕で、どうしてこんなものが持ち上げられるんだ」
黒皮の手袋の男は、鉢を階段の下に静かに置くと、コートにかかった砂を軽く払って立ち上がった。
「……あんたは……」
陽向は目を見張る。
男は──先ほど駅前の本屋で見かけた、あの黒コートの男だった。
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現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
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■あらすじ動画(1分)
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