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【敵同士→恋】2話(1)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む「あんた、一体……」
「良かった! 来てくれたんだっ!」
海斗は、ヒーローが現れたかのように喜々として男に駆け寄った。
(もしかして、こいつも海斗の相手……?)
胸に苦いものがよぎる。
やっぱり今日の自分は、本当にツイていない。
街中で思わず見とれた男が、まさかあのクソだらしない同居人の相手だったなんて。
そんな皮肉、ちょっと出来すぎている。
(いっそ、精進潔斎でもしたほうがいいんじゃないだろうか)
天に向かって叫び出しそうになるのを、どうにか堪えていると──
「助けてくれっ! あいつに殺されそうなんだっ……!」
海斗は男の背後に隠れ、コートの裾を掴んで揺すった。
対する男は迷惑そうに眉をひそめ、慇懃な声で言う。
「大丈夫ですよ。お二人の身長と体格から鑑みて、彼に貴方をしとめるのは無理です」
「でも今の見ただろう!? こいつ、細っこいくせに、キレた時の馬鹿力は相当なんだっ!」
「……おい、お前ら」
陽向はゆらりと近づき、据わった目で二人を睨みつけた。
「それ以上、小さいとかガリガリとか言ったら、シナサリンドー(ぶちのめすぞ)!」
「ひっ」
海斗はまた男の背後に隠れ、びくびくしながら陽向を指さす。
「ほら、今の! これで俺の依頼がいかに正当か、わかっただろう!」
「……依頼?」
陽向は二人を交互に見やり、最後に海斗を鋭く睨む。
「おい、海斗。依頼って、何のことだ……?」
海斗はふふんと鼻息を荒くしながら、得意げに胸を張る。
だがその手は、まだ男の黒コートをぎゅっと掴んだままだった。
「よくぞ聞いてくれた。この人はなぁ、お前から身を守るために、俺が雇った探偵なんだ!」
※
人は、怒りが頂点を超えると逆に冷静になるらしい。
陽向は、ソファに座った男の前にお茶を置き、テーブルを挟んで向かいのカウチに腰を下ろした。
もちろん、男の隣に座っている海斗のことは完全に無視だ。
「ありがとうございます」
男はお茶を一口すすったあと、懐から名刺を取り出した。
「申し遅れました。わたくし、こういう者です」
──LGBT専門探偵 玄沢《くろさわ》敦《あつし》
名刺にはそう書かれていた。
「LGBT専門……?」
陽向が顔を上げかけた、そのとき。
「そうなんだ、すごいだろ?」
海斗が横から、ずいっと割って入ってくる。
「この人、普段は普通の探偵なんだけど、あるツテから依頼があった時だけ、LGBT──特にゲイ専門の探偵になるんだよ! 界隈じゃちょっと有名でさ! 男同士の浮気調査とか、痴話喧嘩の仲裁とかもしてるんだ!」
注目されていないと死ぬ病にでもかかっているのかというほどに、海斗はしゃべり倒していた。
「しかもこの見た目だろ? 依頼人がひっきりなしで、予約とるのも大変だったんだぜ。ちなみに一番面白いのが──この人、ゲイ専門の探偵してるくせに、自分はゲイじゃないらしくて──」
「海斗。うるさい。ちょっと黙れ」
ギロリと睨みつけると、海斗はしゅんとソファで身を縮めた。
「……で、その探偵さんが俺に、何の用ですか?」
陽向は名刺をテーブルの上に置き、お茶でガラガラの喉を潤した。
本音を言えば、海斗が連れてきた人間なんて、怒鳴りつけて追い出したい。
たとえ、どんなにいい男だったとしても。
だが、それをしない程度の分別は、一応持ち合わせている。
──とくに、相手が探偵ともなれば、なおさらだ。
「それがですね」
玄沢は一息ついて、事務的な口調で話し始める。
「謝花海斗氏は、貴方に慰謝料を要求したいと」
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ご覧いただき、ありがとうございます。
現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
興味がありましたら、お越し下さいませ☺
■あらすじ動画(1分)
https://youtube.com/shorts/o6KYEqYVPOI
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