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【敵同士→恋】3話(3)【探偵ミステリーBL】
しおりを挟む「そういえば、玄沢さんって何歳な──あ、いや、ですか?」
何個目かの植え替えが終わった頃、陽向は何気なく聞いた。
「今更だな。まあ、いいよ」
玄沢は、ちょいと片手を上げた。
「三十五だ」
「へぇ」
意外といえば意外だし、そうでもないとも言える。
今のような私服姿なら二十代後半にも見えるし、逆にクラシックなスーツなら四十代前半でも通りそうだ。
さすが探偵というべきか。
(……七歳差、か。それくらいなら、いいかも?)
すぐにハッとして頭を振る。
玄沢はゲイではない。
今こうして付き合ってくれているのも、仕事の一環に過ぎないのだ。
もやもやしながら手を動かしていると、玄沢がおもむろに顔をのぞき込んできた。
「前から思っていたんだが、不思議な色だな」
「え?」
「いや、その目もおばあ様譲りか?」
玄沢が、じっと瞳の奥をのぞき込んでくる。
「ヘーゼルっていうんだろ、こういうの。ぱっと見は茶色っぽいのに、中心に近づくにつれて緑やグレーにも見える」
「……よくわかったね。まじまじ見ないとわからないのに。こんなに早く気づいたのは、玄沢さんで二人目だよ」
「ちなみに、一人目は?」
「海斗」
玄沢が不満げに鼻を鳴らした。
その仕草が何だか子どもっぽくて、可愛らしくすら見えた。
陽向は土を鉢に入れながら言う。
「うちのおばあはもっと濃いヘーゼルだったよ。沖縄にはハーフも多いし、俺みたいなクオーターは地味な方。ほら、瞳以外はほとんど日本人顔だし」
「何言ってる。そんな生っ白い肌しておいて」
玄沢はシャベルを握る陽向の腕をちらりと見た。
陽向は、思わず顔を伏せた。
気のせいかもしれないが、相手の視線が全身をなぞっているような気がして、作業に集中するふりで誤魔化すしかなかった。
「細かいところまでよく見てるね、目とか」
「外見的特徴は、尾行時に欠かせないからな」
「へぇ。じゃあ玄沢さんを尾行するのも簡単そう。その外見だし、俺だったらすぐに見つけ──」
とんでもないことを言いかけて、慌てて付け加える。
「ほ、ほら、背ぇ高いし、体格もいいから」
「背? 別に普通より少し高いくらいだろ」
玄沢は怪訝そうな顔をしたまま、少し黙った。
「ずっと聞きたかったんだが、どうしてあの時、俺の方を見た?」
「あの時?」
「駅前で」
「あ、ああ、それは……」
──姿が様になっていて、見惚れてました……とはさすがに言えない。
「えーと、俺の担当した雑誌を持ってたから、かな。玄沢さんくらいの年齢であの雑誌って、ちょっと意外で」
「そうか」
玄沢はほっと胸をなで下ろした。
「てっきり尾行がバレたかと思って冷や冷やしたよ。雑誌はな、君があまりにも俺のことをじっと見るもんだから焦って、資料の中にあったのを咄嗟に手に取っただけなんだ。あれは失敗だったな。探偵失格だ」
「そういえばさ、玄沢さんって、どうして探偵になろうと思ったの? しかもゲイ専門なんて。あ、いや、別に深い意味はないんだけど。ただの好奇心」
「素直だな」
玄沢はふっと笑い、手元へ視線を戻した。
「平日は普通の探偵もしてる。ゲイ専門の方は、知り合いのゲイバー経由の依頼が来た時だけだよ。──さてと」
玄沢が立ち上がり、軽く伸びをする。
「そろそろ休憩しようか。さすがにずっとかがみっぱなしは、腰にくる」
玄沢は階段の上がり口に腰を下ろし、ペットボトルのお茶をひと口飲む。
はぐらかされたのだとわかってはいたが、陽向はそれ以上、深く突っ込もうとはしなかった。
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現在、中華ファンタジーBLを連載中です!
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■あらすじ動画(1分)
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