弁護士とヤクザ

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キョーコとチョージ※

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 ああ、ムカムカが止まらない。私は行きつけのコンビニに向かい、缶ビールを大量にカゴに入れた。脇から伸びてきた指と、自身の指が触れ合う。ごめんなさい、と言いながら顔をあげたら、見知った人物と視線が合った。

「あれ? 鏡」
「岩城くん」
「何してんだ、おまえ」
 彼の視線は、カゴの中の缶ビールに注いでいる。

「アル中にでもなる気?」
「……むしゃくしゃしたから」
「まあいいけど。飲みたい気分?」
「まあね」
 飲まなきゃやっていられない。
「いいとこ連れてってやろうか?」
「は?」

 岩城が私を連れて行ったのは、「square」というバーだった。
「ここ最近見つけてさ。結構いいんだよ」
「バーなんて初めて入るんだけど」
「大丈夫だって」
 促された私は、カウンターに座った。カウンター内にいた、背の高い男がこちらに笑みを向けた。
「!」

 私は、カウンターの客に目を向け、瞳を見開いた。蝶次が座っていたのだ。彼は垂れた目で、私と岩城を見比べている。岩城が知り合い? と尋ねてきた。
「いいえ、知らない人」

 私はそう言って、蝶次から離れた場所に座った。ソーダ割りを注文し、店内を眺めていたら、岩城が尋ねてくる。
「で? なにがあったんだよ」
「べつに……なにも」
「嘘つけ。眉間のシワやばいぞ」
「昔から男を見る目がないってだけよ」

 私はカウンターに置かれたソーダ割りを手に取った。
「なんだ、仕事じゃなくて男のことかよ」
 岩城は肩をすくめ、からかうように言った。
「なら俺と付き合う?」
「冗談はやめて」
 彼には遠距離恋愛している彼女がいる。おまけに癒し系のかわいい子だ。私とはまるでタイプが違う。
 私はソーダ割りをぐっ、とあおった。

 店を出ると、岩城はこう言った。
「じゃあな、あんま荒れんなよ、男なんていっぱいいるんだからさ」
 手を振りながら去っていく。たしかに、この世の半分は男のはずだが、私はなぜかおかしな男と出会ってしまうようだ……。

 私はため息をついて、店の前の歩道に出た。手を振ってタクシーを止める。自宅の住所を告げ、乗り込もうとしたら、とん、と肩を押される。
「!」

 乗り込んできたのは蝶次だった。
「ちょっと、なに」
「ちょっと酔っちゃった。先生のところに泊めて」
 彼はふわふわした声で言って、私の肩に頭を乗せた。
「ちょっ、離れて」
「先生いい匂い」

 蝶次はすりすり肩に頭を擦り付けてきた。なにこの人。酔っ払ってるの? 押しても引いても動こうとしないため、私は蝶次の頭を押しのけるのを諦めた。ああもう、私ばかり振り回されている。タクシーが自宅マンションについたので、私は半ば引きずるようにして蝶次を下ろす。

 蝶次は空を指差し、ふわふわした声で、
「ねえ先生、星がでてる。綺麗ですね」
「はいはい、綺麗ね」
「あっ、ねこだ。にゃー」
 裏声を使って猫を呼ぼうとする蝶次を引き戻した。
「まっすぐ歩きなさい」
 私は蝶次をソファに投げて、水を汲みにキッチンへ向かった。
「ほら、水。飲んで」

 蝶次は水を飲み干し、じっと私を見た。
「ねえ、せんせい」
「なによ」
「まだ怒ってる?」
「……当たり前でしょう」
「ヤクザでも悪いことしないから」
 そんなヤクザいるものか。彼は私の肩に頭を埋めてくる。
「ねえ、ぎゅってして、先生」
「……」

 私は蝶次を抱きしめて、彼の頭を撫でた。しばらく撫でていたら、ぐるん、と体が反転した。
「!?」
 蝶次は私の上にのしかかり、素早く私の両手を拘束した。ベルトを引き抜き、しばりあげる。あまりにも鮮やかな手つきで、反応が遅れた。何事!?

「やっぱり無防備だね、先生。そんなことじゃいけないな」
 その言葉にはっとして、私はベルトをほどこうともがく。この男……!
「あなた、酔ってないわね!」
 蝶次は先ほどとはがらりと声を変えて、
「先生は悪いひとだ。俺にプロポーズしておいて、他の男とデートするなんて」
「デートなんかしてないわ。ちょっと飲んだだけじゃない」
「でも楽しそうだった」
 蝶次が私の顎を撫でた。その指が、唇を押しひらく。

「先生の唇がよく動いてた。あなたは警戒してるときはほとんど口を動かさない。あの男に気を許してる証拠だ」
「それは同僚だからで、ん」
 彼は私の唇に指を入れた。
「なめて。噛んだらダメだよ」
 長い指が口の中を動く。
「ん、っ……」
 私は眉を顰めて蝶次をにらんだ。
「反抗的だな、先生」
「この、社会のクズ、ひゃ」

 口から指が引き抜かれ、スカートの中に入り込んだ。
「一回破ってみたかったんだ、ストッキング」
「破ったら、弁償させるから、あっ」
 蝶次はストッキングをピッ、と破いて、中に指を侵入させた。
「蒸れてるね」
「う、うるさい」

 長い指が、ショーツ越しに恥丘に触れた。
「あ」
「あれ、濡れてる。ストッキング破られて興奮したの?」
「ちが、あっ」
 蝶次はショーツの上から花芯を探り当て、ぎゅっと押した。私はびくりと震え、喉を鳴らす。

「それともあの男と寝るつもりで準備してたとか?」
「ち、がう」
「どうかな……恭子先生は意外といやらしいから」
 蝶次にいじられると、愛液がどんどん溢れてきて、ショーツにシミができる。
 蝶次は私の頭を腕で抱きかかえ、唇をうばった。
「ん」
「恭子先生とやりたがってる依頼人はたくさんいそうだね」
「変なこと、言わないで」
「あんたのなかがどんな具合か、想像してるかも」

 蝶次は私の足をぐい、と開かせ、顔を埋めた。
「な、や」
 ぴちゃ、ぴちゃ、と水音がひびく。押しのけたくても、両手を拘束されているせいでできない。花芯をちゅ、と吸われ、内股が震えた。ソファが愛液で濡れているのがわかって、恥ずかしくてたまらなくなる。

「こうやって舐めて、あんたをいかせて」
 蝶次は私の足を抱え上げ、指先で膣を押し開いた。ひくついたのがわかって、慌てて足を閉じようとする。
「や」
「ベタベタになったあんたのここに、硬いのを挿れたいんだろうね」
 熱いものがひたり、と触れる。蝶次がはいってきた瞬間、頭の奥がしびれた。

「っ」
 小さく震えた私をみて、蝶次が低い声で囁いた。
「先生……もういったの? いやらしいね」
「あ、あ、蝶次、さ」
 蝶次は容赦なく、達したばかりで敏感な中を擦りあげてくる。

「いったのに締め付けてくる。淫乱なんだな、恭子」
「蝶次、や」
 蝶次のものがなかで暴れている。きゅんきゅんとなかが締まり、全身が甘くしびれた。彼の指が花芯に触れる。
「あ、あ、あ」
 思わず腰を揺らしてしまう。蝶次は息を吐いて、私の耳を撫でた。
「はしたなくてかわいいよ……先生」

 腕に回ったベルトが、カチャカチャと音を立てている。
「蝶次、さん」 
「なに?」
「腕、外して」
 蝶次が動きを止めて、ベルトをほどいた。ベルトはソファから滑り落ち、かしゃん、と床に落下した。蝶次は優しく私の腕を撫でる。
「ごめんね、いたかった?」
 痛くはなかったが、少し怖かった。
「……痛めつける趣味はないって、言ってたくせに」
「ないよ。ヤキモチ焼いたから、ついね」
「でも、あきらかに縛り慣れてたわよね」

 蝶次はそれには答えず、私のシャツを脱がせ始めた。私は蝶次の髪を引っ張る。
「ちょっと、きいてるの」
「いて、髪は引っ張らないで」
「縛ったりした仕返しよ」
「謝ったのに」

 私は蝶次の肩を押して、彼をソファに倒した。
「恭子さん?」
「動いたらダメ」
 私はゆっくり腰を揺らし始めた。蝶次が息を飲む。
「先生」
「喋らないで。声も出したらだめ」
「……」

 蝶次は吐息を漏らし、眉根を寄せた。その顔が色っぽくてぞくっとする。なかで彼のものが蠢いていた。きっともどかしいのだろう。やられっぱなしでいたから、少し優越感を覚えた。
「情けない顔ね、ヤクザのくせに」
 彼が唇だけを動かした。

「え? あっ」
 私の腰を掴んで突き上げてくる。
「動いたら、だめって言ったじゃない、ひあ」
 蝶次は私の胸に顔を埋め、乳首をちゅ、ちゅ、と吸い上げた。
「そんな、に吸ったらだめ」
「恭子、かわいい」
「や、あ」
 突かれるたびに、切なくて甘い痺れが背筋にはしる。

「いきたい、恭子……抱きしめて」
 私は蝶次をぎゅっと抱きしめた。乳房が押しつぶされる。ぱちゅぱちゅいやらしい音がするたび、身体の芯がしびれた。突かれてる。蝶次が私を欲しがってる。
「蝶次、蝶次、や、ああ」
 私は蝶次の手をぎゅっと握りしめた。
「好きだよ、恭子」

 蝶次のものが脈打って、熱いものが胎内を満たす。あったかい。彼は私をぎゅっと抱きしめて、息を吐いた。その吐息にまた感じてしまう。 蝶次が性器を引き抜くと、とろりとしたものが溢れ出した。それを丁寧にぬぐったあと、蝶次は私の額に口付ける。

「子供ができたら言って。責任は取るよ」
「ヤクザはやめないんでしょう。なら結婚はしない」
「じゃあ結婚は三十年後くらいかな」
「その前にあなたが死んだらどうなるのかしら」
 蝶次はうーん、と考えこんで、にこりと笑った。
「そのときは、来世に期待して」
「あなたって最悪ね」
 私はそうつぶやいて、将来薄くなりそうな、色素の薄い髪を撫でた。

 番外編/おわり
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