【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

73.ミーティング大浴場(5)

「シーシ？」

「なに？」

「槍やりって作れないの？」

「……ヤリって、なんなのだ？」

槍を知らないのか……。ないんだ、槍……。

「武器なんだけど」

「武器なのか。どんなの？」

「こう、長い棒の先に、刃物はものが付いてる……」

「鍬くわ？」

「いや、まっすぐ……」

「まっすぐ？」

「マレビト様」

と、シアユンさんが柔やわらかな微笑ほほえみを浮うかべて、口をはさんだ。

「ダーシャン王国では、初代マレビト様が邪じゃを祓はらう武器として『剣』を打ち、それ以外の武器は全て破却はきゃくしたと伝わるのです。それまでは多種多様たしゅたような武器があったそうなのですが」

「へぇ……」

な、なんでやねん。としか思わない歴史だ。初代マレビトの意図いとが分からん。700年前から剣だけだったんだ。

「シーシ殿がご存知ぞんじないのも無理はございません。よろしければ、もう少し噛かみ砕くだいて教えてあげてください」

「そうなのだ」

と、シーシが胸を張った。

槍か。単純たんじゅんすぎて、パッと言葉が出てこない。なんて言えば伝わるのか……。

「そうか、剣だ。小さい剣が棒の先についてるんだ。長い棒。鍬くわの倍くらい。もっと長くてもいい」

「長い棒の先に？ 剣を？ 使いにくくない？ どうやって鞘さやから抜ぬくの？」

「鞘さやには入れないで……、いや、ついてるのもあるのかな……？」

「なんなのだ？」

「突つくんだ」

「突つく？」

「こう……、やあっ！ って」

俺は長い棒を持って腰に構かまえる身振みぶりをして、それを突つき出だす動きをして見せた。

「……」

まだ、ちょっとピンときてない様子だ。

「敵を、……刺さし殺ころすの」

「あっ……」

「遠くから距離きょりを空あけて攻撃できるから……、なんて表現していいか分からないんだけど、剣より安全なはずなんだよ」

「……なるほど」

「剣ほど技を鍛きたえる必要もなくて、前に突き出すだけだから。誰でもって言うとアレだけど、剣に比べたら扱あつかいやすい武器のはずなんだ」

「うん……」

「それに、人獣じんじゅうの武器は爪つめと牙きばだけで間合まあいが近いから、離はなれて攻撃できる槍は有効ゆうこうだと思うんだ」

「そうか。でも……、棒の先に剣を付けるんだよね？」

「そう」

「剣は神聖しんせいなものだから、剣士団けんしだんの職人しょくにんしか作っちゃいけないのだ……」

「よしっ。一旦いったん、忘れよう」

と、俺が宙ちゅうを平たいらにならすように両腕りょううでを開く動きをすると、右腕に、ぽいんっという感触かんしょくが。……ま、まだそこにいたんですね、ミンリンさん。

「す、すみません……」

「いえ、こちらこそ……」

唐突とうとつに２人で顔を赤らめてしまった……。

「ニシシ。すっかり忘れたのだ！」

と、シーシが笑った。

「よ、よし……」

と、気を取り直して。

「包丁ほうちょうだ。棒の先に付いてるのは包丁。包丁を刺そう。もしくは、でっかい鏃やじり。矢やの先さきっぽ。これなら、どう？」

「ニシシ。分かった。それなら作ってみる！」

……うん。なんか実みのり多いミーティングだった気がするぞ。

目の前にいる女子たちを見回すと、各部署のそれなりの人が揃そろってる。

剣士団けんしだんに相談したいことがあれば、イーリンさんもいる。狩人かりうどでは長弓ながゆみのメイファン、短弓たんきゅうのミンユー……。

あっ！ これ……。城の中の連携れんけいを図はかるのに、かなり有効な場なんじゃ……。

改めて今、俺を囲んでる、ミンリンさん、シアユンさん、クゥアイ、シーシ、スイランさんを、一人ひとり見る。みんな当然、全裸だ。

――俺が照てれくさ死、さえしなければ……。