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74.反攻の日は近い(1)
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昼過ぎまで寝て、里佳の夢で目が覚めた。
ジーウォ城を一番高く囲んでる第3城壁の上に2人で並んで立って、日の出を見てた。
城壁の外は、すごく綺麗な景色だと感じてたけど、朝日が眩しくてハッキリとは見えなかった。背後にある人獣のいなくなった城内からは、歓喜の声が聞こえる。
里佳は「頑張ったね!」とでも言ってくれてるように、微笑んで俺の方を見てた。
一方的に想いをぶつけて涙目にさせて、それでも俺を思い遣って謝らせてしまったというのに、俺も身勝手な夢を見るものだと、苦い笑いを噛んだ。
起きてまず、昨日お世話になった皆さんにお礼を言って回った。
司空のミンリンさんには今朝の大浴場でお礼できてたので、まずは司徒府にウンランさんのところから。
「お見事でしたな」
と、いつもの人の良さそうな笑顔を浮かべたウンランさんが言ってくれた。
「剣士長殿が協力的だったのは、少し驚きましたが、マレビト様の人徳でしょうな」
やっぱり、フェイロンさんの姿勢にはウンランさんでも驚いてたのか。
それから、シュエンの宿舎で口にした粥のことを思い出して、食事の改善を打診してみた。正直、不味かった。俺に出してもらってる料理とは全然違う。
すると、ウンランさんは配給を担当しているという青年を呼んだ。
「ズハンと申しましてな、本来は財政が担当なのですが、今はやることがありませんから、配給を担当してもらっておりますわい」
と、紹介されたのは赤毛のお兄さん。聞くと24歳だという。いやぁ、男の相談相手ほしいんだよなぁ。仲良くしてくれるといいんだけど。
けど、話してみると、これ多分、数字のことしか分からないタイプ。
財政担当って言ってたもんなぁ。年の近い男の友だち欲しいけど、相談相手にはちょっと違うかなーって感じだった。
話しは要領を得なかったけど、要するに調理の手が足りてないんだと分かった。
よーし、困ったときは村長さんだ! あとで、相談してみよう。
次は、剣士府にフェイロンさんを訪ねた。
話しもそこそこに、シュエンを宮城に連れて帰ったことにお礼を言われた。長い付き合いだった戦友の娘さんで心配してるって、イーリンさんから聞いていた。
『4代マレビトの新シキタリ』っていう話の展開が、あらかじめ用意してたものかどうか、はぐらかされた気もするけど、もう終わったことだ。今は2人とも、やることが多い。
ただ、フェイロンさんは「本音では納得してない者も多いでしょうな」とは言った。
「コンイェンは、いい剣士なんですが、頭に血が上ると訳の分からないことを言い出すことがありましてな」
と、フェイロンさんは苦笑いを浮かべた。
「思いがけず失恋させられたヤーモンは気の毒ですが、アレのお陰で、不満のある者の気勢が削がれましたな。ただ、なにかあれば不満が噴き出すことも考えられます。そのことだけは、頭の片隅に置いておいてください」
それは、きっとその通りなんだろう。不思議はない。内心不満な人にも納得してもらえるかは、これからの頑張り次第だ。いや、結果を出さないといけない。
それから最後に、フーチャオさんを訪ねた。
フーチャオさんが入居している仮設住宅の玄関からは、宮城から北に張り出している祖霊廟が見えて、もうクゥアイが周囲の植え込みを耕し始めていた。
楽しそうに鍬を振るクゥアイに頬が緩むのを感じながら、フーチャオさんのお宅にお邪魔した。
中に通されると、少し茶色い黒髪を三つ編みにした女の人がいた。フーチャオさんが自慢げに口を開いて紹介してくれた。
「俺の嫁っ子だ」
「ミオンと申します」
と、にっこり笑った女の人は、メイファンとミンユーのお母さんとは思えない若さに見えた。
「いつも、メイファンとミンユーがお世話になっております」
「あ、いえいえ……」
あの巨乳姉妹がそれぞれに、俺の耳元で「子種を授けてほしい」って囁いた声が蘇って、少し赤面するやら、なんか申し訳ないやら。
でも、ミオンさんの続く言葉に、俺は驚愕した。
ジーウォ城を一番高く囲んでる第3城壁の上に2人で並んで立って、日の出を見てた。
城壁の外は、すごく綺麗な景色だと感じてたけど、朝日が眩しくてハッキリとは見えなかった。背後にある人獣のいなくなった城内からは、歓喜の声が聞こえる。
里佳は「頑張ったね!」とでも言ってくれてるように、微笑んで俺の方を見てた。
一方的に想いをぶつけて涙目にさせて、それでも俺を思い遣って謝らせてしまったというのに、俺も身勝手な夢を見るものだと、苦い笑いを噛んだ。
起きてまず、昨日お世話になった皆さんにお礼を言って回った。
司空のミンリンさんには今朝の大浴場でお礼できてたので、まずは司徒府にウンランさんのところから。
「お見事でしたな」
と、いつもの人の良さそうな笑顔を浮かべたウンランさんが言ってくれた。
「剣士長殿が協力的だったのは、少し驚きましたが、マレビト様の人徳でしょうな」
やっぱり、フェイロンさんの姿勢にはウンランさんでも驚いてたのか。
それから、シュエンの宿舎で口にした粥のことを思い出して、食事の改善を打診してみた。正直、不味かった。俺に出してもらってる料理とは全然違う。
すると、ウンランさんは配給を担当しているという青年を呼んだ。
「ズハンと申しましてな、本来は財政が担当なのですが、今はやることがありませんから、配給を担当してもらっておりますわい」
と、紹介されたのは赤毛のお兄さん。聞くと24歳だという。いやぁ、男の相談相手ほしいんだよなぁ。仲良くしてくれるといいんだけど。
けど、話してみると、これ多分、数字のことしか分からないタイプ。
財政担当って言ってたもんなぁ。年の近い男の友だち欲しいけど、相談相手にはちょっと違うかなーって感じだった。
話しは要領を得なかったけど、要するに調理の手が足りてないんだと分かった。
よーし、困ったときは村長さんだ! あとで、相談してみよう。
次は、剣士府にフェイロンさんを訪ねた。
話しもそこそこに、シュエンを宮城に連れて帰ったことにお礼を言われた。長い付き合いだった戦友の娘さんで心配してるって、イーリンさんから聞いていた。
『4代マレビトの新シキタリ』っていう話の展開が、あらかじめ用意してたものかどうか、はぐらかされた気もするけど、もう終わったことだ。今は2人とも、やることが多い。
ただ、フェイロンさんは「本音では納得してない者も多いでしょうな」とは言った。
「コンイェンは、いい剣士なんですが、頭に血が上ると訳の分からないことを言い出すことがありましてな」
と、フェイロンさんは苦笑いを浮かべた。
「思いがけず失恋させられたヤーモンは気の毒ですが、アレのお陰で、不満のある者の気勢が削がれましたな。ただ、なにかあれば不満が噴き出すことも考えられます。そのことだけは、頭の片隅に置いておいてください」
それは、きっとその通りなんだろう。不思議はない。内心不満な人にも納得してもらえるかは、これからの頑張り次第だ。いや、結果を出さないといけない。
それから最後に、フーチャオさんを訪ねた。
フーチャオさんが入居している仮設住宅の玄関からは、宮城から北に張り出している祖霊廟が見えて、もうクゥアイが周囲の植え込みを耕し始めていた。
楽しそうに鍬を振るクゥアイに頬が緩むのを感じながら、フーチャオさんのお宅にお邪魔した。
中に通されると、少し茶色い黒髪を三つ編みにした女の人がいた。フーチャオさんが自慢げに口を開いて紹介してくれた。
「俺の嫁っ子だ」
「ミオンと申します」
と、にっこり笑った女の人は、メイファンとミンユーのお母さんとは思えない若さに見えた。
「いつも、メイファンとミンユーがお世話になっております」
「あ、いえいえ……」
あの巨乳姉妹がそれぞれに、俺の耳元で「子種を授けてほしい」って囁いた声が蘇って、少し赤面するやら、なんか申し訳ないやら。
でも、ミオンさんの続く言葉に、俺は驚愕した。
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