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174.黒い輝き宴のあと(1)
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ヨウシャさんのお誘いでふわふわしてたけど、宴もたけなわというところで舞台に上がった。
ミンリンさんとシーシを招き入れ、いよいよ『回廊決戦』の構想を発表する。
交渉ごとの苦手なミンリンさんだけど、シーシと何度もリハーサルしたらしい。2人が掛け合う漫才のようなプレゼンに、広場には響めきと歓声が交互に訪れた。
そして、プレゼンの熱狂覚めやらぬ中、俺が口を開いた。
「まだまだ準備しないといけないことが、たくさんあります。成功させるには多くの方の協力と参加が必須です」
広場を埋める住民の皆さんの目には、希望の火が灯って見えた。
「もとより全員の力を合わせずして、立ち向かえる相手でもありません。どうかこの、決戦を成功させるために、力を貸してください」
俺が頭を下げると、住民の皆さんは歓声で応えてくれた。
それからしばらく宴は続き、皆が熱く語り合ってる様を眺めた。
ふと、ツイファさんの紫色の髪が目に入った。
――そうだ。ツイファさん。
そっと手招きして呼んで、コソコソと話し掛ける。
「し、城で近々16歳を迎える純潔の乙女がどのくらいいるか、こっそり調べてもらえませんか?」
「はあ……」
「け、結構、ドキッとするんスよ。突然、新しい人が大浴場に来たら。心の準備をしときたいって言うか……」
ツイファさんは、クスッと笑った。
「ツ、ツイファさんくらいしか、頼める人、いないんですよ」
「かしこまりました。内密にお調べいたしますね」
「頼んますっ」
と、俺は手を合わせた。
ツイファさんは、いつもの澄まし顔でお辞儀をして、そっと目立たないように離れていった。
たぶん【闇の者】の使い方として、おかしい。
でも、ドキドキするしなぁ……。
せめて、事前に……。
なんて思ってた頃、空が茜色に染まり始めた。今日は外征隊の出陣はなしにしてある。
とはいえ、そろそろ戦闘開始の時間だ。
舞台上でエジャが最後の挨拶を始めた。花婿の家の一員となり、竈を預かることになる花嫁が、一家の嫁として最後を締めくくり、参列した客を送り出す。
エジャの挨拶は涙混じりだったけど、堂々としたものだった。
――ヤーモン、尻に敷かれそうだな。
なんて、皆んなが想像を逞しくしていたその時、エジャの緋色の花嫁衣装が脱ぎ捨てられて宙を舞った。
茜色の空に舞う緋色。
俺も含めた皆が、呆気に取られてエジャを見ると、既に剣士の鎧姿だった。
「宴の続きは……」
と、エジャは剣を抜いて夕陽を指した。
「城壁で!!!」
たちまち、皆の雄叫びで広場が満ちる。
城壁の外の人獣が、ビビって凶暴化してしまうんじゃないかという勢いの大音声だった。
「片付けはやりまーす! そのまま持ち場に向かってくださーい!」
と、シュエンが声を張っている。
結婚式の演出に使われていた荷運び櫓が、城壁に向けて移動し始める。
ふたつの舞台は、シーシたち職人チームが撤去を始めている。
すべてが機能的で有機的に動いていく。
「エジャに、いいところを持って行かれましたな」
と、フェイロンさんが俺の側に来て笑った。
「結婚式は花嫁さんのもの、って聞きますから」
「ははっ! 違いありませんな」
日没前、結婚式も宴もなかったかのように、すべては取り払われ、清掃され、皆は戦闘配置についている。
そこに、黒の装甲に身を固めたアスマとラハマが長い槍を持って現れた。
――カッケー、なぁ! もう!
ミンリンさんとシーシを招き入れ、いよいよ『回廊決戦』の構想を発表する。
交渉ごとの苦手なミンリンさんだけど、シーシと何度もリハーサルしたらしい。2人が掛け合う漫才のようなプレゼンに、広場には響めきと歓声が交互に訪れた。
そして、プレゼンの熱狂覚めやらぬ中、俺が口を開いた。
「まだまだ準備しないといけないことが、たくさんあります。成功させるには多くの方の協力と参加が必須です」
広場を埋める住民の皆さんの目には、希望の火が灯って見えた。
「もとより全員の力を合わせずして、立ち向かえる相手でもありません。どうかこの、決戦を成功させるために、力を貸してください」
俺が頭を下げると、住民の皆さんは歓声で応えてくれた。
それからしばらく宴は続き、皆が熱く語り合ってる様を眺めた。
ふと、ツイファさんの紫色の髪が目に入った。
――そうだ。ツイファさん。
そっと手招きして呼んで、コソコソと話し掛ける。
「し、城で近々16歳を迎える純潔の乙女がどのくらいいるか、こっそり調べてもらえませんか?」
「はあ……」
「け、結構、ドキッとするんスよ。突然、新しい人が大浴場に来たら。心の準備をしときたいって言うか……」
ツイファさんは、クスッと笑った。
「ツ、ツイファさんくらいしか、頼める人、いないんですよ」
「かしこまりました。内密にお調べいたしますね」
「頼んますっ」
と、俺は手を合わせた。
ツイファさんは、いつもの澄まし顔でお辞儀をして、そっと目立たないように離れていった。
たぶん【闇の者】の使い方として、おかしい。
でも、ドキドキするしなぁ……。
せめて、事前に……。
なんて思ってた頃、空が茜色に染まり始めた。今日は外征隊の出陣はなしにしてある。
とはいえ、そろそろ戦闘開始の時間だ。
舞台上でエジャが最後の挨拶を始めた。花婿の家の一員となり、竈を預かることになる花嫁が、一家の嫁として最後を締めくくり、参列した客を送り出す。
エジャの挨拶は涙混じりだったけど、堂々としたものだった。
――ヤーモン、尻に敷かれそうだな。
なんて、皆んなが想像を逞しくしていたその時、エジャの緋色の花嫁衣装が脱ぎ捨てられて宙を舞った。
茜色の空に舞う緋色。
俺も含めた皆が、呆気に取られてエジャを見ると、既に剣士の鎧姿だった。
「宴の続きは……」
と、エジャは剣を抜いて夕陽を指した。
「城壁で!!!」
たちまち、皆の雄叫びで広場が満ちる。
城壁の外の人獣が、ビビって凶暴化してしまうんじゃないかという勢いの大音声だった。
「片付けはやりまーす! そのまま持ち場に向かってくださーい!」
と、シュエンが声を張っている。
結婚式の演出に使われていた荷運び櫓が、城壁に向けて移動し始める。
ふたつの舞台は、シーシたち職人チームが撤去を始めている。
すべてが機能的で有機的に動いていく。
「エジャに、いいところを持って行かれましたな」
と、フェイロンさんが俺の側に来て笑った。
「結婚式は花嫁さんのもの、って聞きますから」
「ははっ! 違いありませんな」
日没前、結婚式も宴もなかったかのように、すべては取り払われ、清掃され、皆は戦闘配置についている。
そこに、黒の装甲に身を固めたアスマとラハマが長い槍を持って現れた。
――カッケー、なぁ! もう!
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