【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

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175.黒い輝き宴のあと(2)

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アスマとラハマが持っている槍は、いわゆる「ランス」っていうヤツだ。

円錐形えんすいけいの穂先ほさきと、強靭きょうじんな槍身そうしんを持つ「騎槍きそう」とも呼ばれる騎士が持つ槍だ。しかも、かなり長くて、黒光りしている。

なにこれ、この異世界、古代中華風なだけじゃなくて、中世ヨーロッパ風も織おり込こんでくる。

装甲そうこうを装飾そうしょくしてる金細工きんざいくは精緻せいちで、オリエンタルな雰囲気もある。

真っ黒に光る宝石のティアラを２人ともが着けているのは、王族の装備そうびではなく、聖堂騎士の装備だからなのか。

ランスを持ちつつ、背中には黒い小弓しょうきゅうと矢筒やづつ、腰には半月刀はんげつとうが装着そうちゃくされてる。

全身兵器かよ。

装甲にも、まだまだ仕込しこみの武器を隠かくし持っていそう。

そして、抜群ばつぐんのスタイルに、絶妙ぜつみょうに露出ろしゅつが高いのも異世界っぽくて推おせます。

デザインの違う装甲だけど、２人とも胸の谷間はしっかり出てて、ラハマが着けてる顎あご当てもカッコいいです。

はっ。

マリームが黒地に紺こんのワンピースで、「ご武運ぶうんを」って頭を下げて２人を送り出してる。

そして、夕陽ゆうひにたなびく銀髪。

いやぁ。

絵になりますなぁ……。

と、心の中で思うだけにする。

望楼ぼうろうで隣に立つシアユンさんの表情には、まだ少し割わり切れないものが残って見えたからだ。

アスマとラハマには、初参戦ということで、北側城壁の東西両端を受け持ってもらう。

日没を待つ。

シルエットになっていく、２人の輪郭りんかくがまたカッコいい。

玉篝火サーチライトに火が灯ともされ、剣士の手が挙あがり、長弓ながゆみ隊の斉射せいしゃが始まる。

日没した。

アスマとラハマが、城壁の外に向けてランスを撃うち込み始めてる。

――速い。

あの長さだと、城壁の下でよじ登り始めたばかりの人獣じんじゅうにも届とどいてる。

しかも、短弓たんきゅう兵や槍兵の動きも捉とらえて、挙動きょどうが連携れんけいしてる。

離れたところで、跳とび上がった人獣じんじゅうを、兵の頭越あたまごしに難なんなくランスで眉間みけんを撃うって仕留しとめた。

そしてまた、城壁の外に撃うち込こんでる。

――お、鬼強おにつよいな。

マジか……。こんなに強いのか……。

リヴァントの都みやこ、大丈夫なんじゃね？

いや、本当に驚嘆きょうたんすべきはダーシャンの剣士たちだ。

500年前の最初の侵攻しんこうを除けば、その後はこの聖堂騎士たちを退しりぞけ続けたんだから。フェイロンさんに至いたっては、斬りまくった返り血で異名いみょうがつくほどだ。

その剣士たちをしても、人獣じんじゅうには最終城壁まで押し込められたんだ。リヴァントも楽観らっかんは出来ないか……。

「ラハマ様は聖堂騎士の中でも最強なのです」

と、望楼ぼうろうに招まねき上げたマリームが、ちょっと鼻息はないきを荒あらくして教えてくれた。

「城壁では馬が使えませんが、騎乗きじょうしたラハマさまは、もっと強いのです」

「それは、早く見たいな」

「アスマ様もご即位そくいなさる前、お父上が王位にある頃から、最強騎士の一人として有名だったのです」

「そうなんだ。それは、ジーウォは得したな。そんな強い２人に来てもらえて」

「んふふっ」と、マリームは誇ほこらしげな笑えみを浮かべた。

おいおい。ランスで貫つらぬいた人獣じんじゅうを放ほうり投げて、足止あしどめさせる共食ともぐいポイントをコントロールし始めたよ。

ただ、アスマもラハマも強いけど、やはり数の多さが脅威きょういの人獣じんじゅうを相手に、戦況せんきょう全体を変えることは出来ない。

それでも、北側城壁の兵士も剣士も、士気が上がって見える。特に剣士が負けじと張はり切ってる。

「ジーウォ公……、いや、我わが主あるじよ」

と、マリームが俺のことを呼んだ。

「私にも、なにか出来ることはあるだろうか？」

「そうだな。料理は出来る？」

「多少なら」

「それならシュエンを手伝ってくれるかな？」

「あの偉えらそうな物言ものいいの娘だな」

「たまに口が悪くなる時もあるけど、優しいよ」

マリームは神妙な顔をした。

「それは知っている」

「そうか……」

「からかったり怒らせたりしながらでも、あの時、粥かゆを食べさせてくれなかったら、あのまま死んでいたかもしれない」

「仲良く出来そう？」

「いや！応戦おうせんする」

と、鼻の穴を広げた褐色の美少女に、「そうか」と、笑ってしまった。

北側城壁ではヤーモンの指揮しきで、アスマが休憩きゅうけいを取り、水で喉のどを潤うるおしていた。

俺が小さく手を振ふると、任まかせとけとでも言わんばかりに、黒く輝かがやくランスで天てんを突ついた――。

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