懸賞に応募したら珍獣が当たったんだが

林りりさ

文字の大きさ
11 / 24

【キューピッド?】

しおりを挟む
 夏休みを目前にした頃、期末試験を終えた玲と麻美が、教室で話していた。
「玲、テストどうだった?」
「まぁまぁかな。中間と同じく、理科で落としたけど」
「あたしも~。うちは社会でも落としたぜ!」
「自慢みたいに言うな」

「でもでも聞いて! 全体順位は中間より三十位も上がって三十六位だったんだよ!」
「それは自慢しても良い結果だね」
「玲は今回も十傑入りですか?」
「ううん。ちょっと落ちて、十四位だった」
「それでもすごいじゃ~ん」
 玲は少し照れたように机の上の消しゴムをいじった。

「テスト前に、銀ちゃん達とゲームしたり、色んな話したりして過ごす時間が増えたんだけど、その分勉強時間が削られちゃったのが響いたかも」
「へぇ~。でも家族が仲良いってのは素敵なことじゃん!」
「銀ちゃんが来てから、家族の雰囲気がちょっと明るくなった気がしてるんだ。これで勉強にも良い影響を与えてれば言うこと無しだったんだけどね」
「贅沢言うな~。ちなみに、ゲームって何したの?」

「トランプしたり、ゴルフしたり」
「コア……じゃなくて銀ちゃん、トランプできるの⁉ そしてゴルフまで……」
「そうなの。トランプも色々やったけど、神経衰弱が一番好きらしい。ゴルフも、一人で黙々とやってるよ」
「ゴルフやってる姿とか——尊さMAXだね!」
「あれは、尊いのかなぁ?」
 玲は、銀仁朗がおたまでパターゴルフしている姿を思い出して、思わず吹き出しそうになった。

「とにかく、テスト良い結果だったでしょ~私! と言う事で、ご招待券獲得だよね!」
 麻美は期待感に満ちた目を玲に向けた。
「そだねぇ。もうすぐ夏休みだし……遊びに来ちゃう?」
「行っちゃう行っちゃう~」
 大喜びする麻美の姿を見て、笑みを浮かべた玲だったが、すぐさま真顔に戻る。

「でも、お母さんに聞いてみないとだし、今日帰ったらまた連絡するよ」
「イエッサー」
 麻美は敬礼のポーズをとりながらそう言うと、何かを思いついたように、手をポンッと叩く。
「あっ、そーだ! もし行っていいってなった時にさ、銀ちゃんと一緒に遊べるもの、なんか持っていっても良いかな~?」
「銀ちゃん色んな物に興味ありそうだから、きっと喜ぶよ」

「うちには兄ちゃんがいるから、男の子が遊ぶおもちゃとかも色々あるし」
「あ、それで思い出したけど、こないだ遊び道具を色々貸してあげた時にさ、私と桜が遊んでたリクちゃん人形も渡してみたの。だけど、気に入らなかったみたいでさ、無言で全部箱にしまっちゃったんだよ。ふふっ」
「女の子が遊ぶヤツって分かったのかな?」

「そんな感じだった。妙に照れてる感じで仕舞いだしたから、思わず笑っちゃった」
「それはウケるね~。じゃあ、兄ちゃんに要らなくなったおもちゃとか無いか聞いてみて、良さげのがあったら持ってくよ」
「ありがと。楽しみだね!」
「だね! 今年の夏は良い思い出がいっぱいできそうだぁ~」


 その日の夕方。玲は、夕食の支度をしている英莉子に話しかけた。台所からは、味噌汁のだしの香りがふんわりと漂っている。
「ねぇ、お母さん」
「なぁに?」
「麻美のこと覚えてる?」
 玲は包丁を持つ母の横顔を見つめながら問いかけた。

「もちろん覚えてるわよ。確か自然学校の班が一緒になってから仲良くなった子よね。うちに遊びに来たこともあったんじゃなかったっけ?」
「そうそう。前に来たのは六年の時だったかな。でさ、麻美が久々にうちに遊びに来たいって言ってるんだけど……」
 英莉子は手を止めると、表情を曇らせた。
「ああ……銀ちゃんのことがあるもんね。うーん、どうしようかしら……」

「それなんだけどさ」
 玲は少し言いにくそうにもじもじしはじめ、意を決したように口を開いた。
「実はさ、あの懸賞に応募しようって言ってくれたの、麻美なんだよ」
「あら、そうなの?」
「たまたま麻美と一緒に食べてたコアラのマッチョのパッケージに、あの懸賞のことが書いてあってさ、ちょうど家に五個あるって話したら『だったら応募してみなよ!』って言ってくれたの」

 英莉子は腕を組み、しばらく何かを考えるように目を細めていたが、やがてぽんと手を叩いた。
「つまり麻美ちゃんは、銀ちゃんに出逢わせてくれたキューピッドってことね!」
 普段の麻美の姿と、玲の中のキューピッド像がミスマッチ過ぎて、玲は思わず笑いそうになった。
「いや、麻美がキューピッドってのは、なんか違和感あるけどなぁ」
 二人は顔を見合わせて、ふっと笑った。

「でも、先生にあまり口外しないようにって言われてるし……」
「それなんだけどさ……。ごめんなさい!」
 深々と頭を下げる玲の姿を見て、英莉子は事の顛末てんまつを悟った。
「あー、話しちゃった感じなのね」
「……うん。あの懸賞の話になった時に、嘘ついて誤魔化そうとしたんだけど、私、嘘つくの下手だから、すぐバレちゃって……。ごめんなさい」

 玲が嘘をつく時の癖が出た姿が容易に想像でき、英莉子は苦笑いを浮かべる。
「またいつもの嘘つくときの癖、出したんでしょ?」
 玲はコクリと小さく頷いた。
「でも、その癖を知っていて、それを見逃さなかった麻美ちゃんは、きっと玲の大切なお友達だってことよね。いつも玲のことをよく見てくれてる証拠だし」

「やっぱり大事な友達に嘘つき続けるのって、正直しんどいなって思っちゃってさ。隠し通せなかった」
 英莉子は玲の顔をしばらく見つめていたが、やがてふっと表情をゆるめた。
「で、麻美ちゃんは銀ちゃんのこと聞いて、何て言ってるの?」
「絶対内緒にしてくれるって。約束破ったら切腹するらしい」
「せ、切腹はマズイわね」

 英莉子は『切腹』という単語に一瞬固まり、思わずまな板の上に置いてある包丁に目をやった。玲が学園内で一体どんな日常を送っているのか想像しきれず、少し顔が引きつった。
「それはまぁ冗談だけどさ。でも絶対に誰にも話さないって言ってくれてる」
 英莉子はしばらく考え込むように鍋の中を見つめていたが、しばらくして小さく頷いた。

「そっかぁ~。じゃあ、仕方ないか。普段ワガママなんか全然言わない玲からの頼み事だし、ご招待して差し上げましょうか! 銀ちゃんとのご縁を作ってくれた人でもあるなら、張り切ってご歓待しなくちゃだしね」
「ほんと⁉ ありがとうお母さんっ!」
 玲はその場で跳ねるように喜び、両手をぎゅっと握った。

「お友達に銀ちゃんのこと喋ったって桜が聞いたら、色々とややこしいことになると思うから、桜には私から良いように言っておくわ」
「助かる。お願いします」
「何かを守る為につく嘘もあるからね!」
 そう言って、英莉子は玲にウインクした。玲も少し照れたように笑い返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

処理中です...