オジカさんとコジカちゃん

陽花紫

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 俺、コジマ。
 とある商社で働く、二十六歳の営業マンだ。

 茶色の天パに、何をしても焼けない白い肌がトレードマーク。
 顔はそこそこ、そこまで悪くはないと信じたい。
 一応スキンケアは欠かさないし、気分と場面によっては軽く化粧もしていた。営業職は身嗜みが命だからな。

 下の名前は、誰にも教えない。
 クソキラキラネームで恥ずかしいから。
 今の会社が名字呼び文化で、本当に助かっている。
 このクソダサい名前を呼ばれずに済む、それだけで心が少し楽になることもあったんだ。

 年収もそこそこ。
 住まいは、駅から少し離れた狭いワンルーム。
 料理は苦手、家事もそこまで得意じゃない。だからミニマリストを気取って、持ち物は最低限に減らしている。

 夢は、パートナーと一緒に暮らすこと。
 できたら料理上手で、家事力が高めだと嬉しいなぁ。

 でも、現実はそんなに都合よくできていない。
 俺は、独り身の寂しいゲイだ。
 性欲ばかりが有り余って、気付けばセフレをつくったりつくらなかったり。
 たまに裏垢をつくって録画したオナ動画をアップして、承認欲求を満たしまくる。

 とにかく、忙しい年頃なんだ。
 仕事が忙しくて真面目に恋愛するのもだるいし、何より出会いもない。

 それに俺は、人専だ。ヒトセン。
 えっ、聞き慣れない単語だって?
 なんてったって今のこの時代、人間と獣人とが共存する社会でもあったんだ。

 俺の勤める会社も例外じゃなく、人間も獣人も分け隔てなく採用されていた。
 同種族同士はもちろん、人間と獣人の社内恋愛や結婚だって、べつに珍しくも何もない。

 それでも、俺にはパートナーができないでいる。
 なぜかって?
 俺が、ゲイであるからだ。
 人間であろうと獣人であろうと、同性愛者はまだまだ肩身が狭かった。

 だから俺はノンケのふりをして、表向きには器用に笑ってうまく社会に馴染めている。
 でもその裏では、溢れ出る欲望を抑えきれずにいたんだ。

***

「うぃー、つっかれたぁー……」

 風呂上がりに、静かな部屋でカメラを回す。

 シコりにシコって、時には玩具も使ってズボズボやって。
 疲れたこの身にムチうって編集をして、最低限のモザイクをかけてアップする。

 アカウント名は、“コジカ”。
 自慢じゃないけど、ソッチの世界でわりと有名な“バリウケ、モロ感、ドMのコジカちゃん”とは俺のことだ。
 ケツイキが十八番で、イったときは必ず生まれたての小鹿みたいに脚がプルプル震えることから、いつしかそう呼ばれるようになっていた。
 冗談半分でつけられたあだ名であったはずなのに、気付けばそれは俺自身の一部にもなっていたんだ。

 それにコジマとコジカって、なんか響き似てねぇ?

 気づけば鹿をモチーフにしたグッズが、この部屋には増えていた。
 小鹿のぬいぐるみを傍らに置いて、今日も今日とてシコってアヘって動画編集をする。

 代わり映えのしない夜を、何度も何度も繰り返していた。

 寂しい生活だと、わかっていた。
 それでも、こうするしかなかったんだ。

 年をとっていくたびに、真面目な恋愛に疲れを感じるようになっていた。
 仕事も忙しいし、休日も体力を回復するためだけに休んで家にこもることが増えていた。
 でも、むしょうに人肌恋しい時がある。

『セフレ募集中』

 そう一言添えて、動画を投稿した。
 再生数はあっという間に伸びて、俺は苦笑しながら布団に入る。

 そういえば明日は、同じ部署に異動してくる人がいるらしい。
 遠くの支社からくるせいか、男性だということしか前情報はなかった。
 人間か、獣人か。
 どうせなら、人間だと嬉しいなぁ。

 俺がいる部署は、九割くらいが獣人だった。
 おまけに犬とか虎とか豹とか、元気溌剌な体育会系のむさ苦しい男ばかり。
「無理だと思うけど、俺好みのイケメンがきますように!」
 俺は、ほどよく筋肉があってそれでも落ち着きのある人が好みだった。
 人間の先輩は皆細い人ばかりで、俺の趣味ではなかった。

 かくいう俺も、薄ひょろのなよ男なんだけどな。
 せめて、スリ筋名乗れるくらいにはなりたかった。

「とにかく、イケメンを!目の保養がほしい!」

 そう祈って、俺は眠りについた。
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