次第にバカデカ声になっていく異界の妻(男)

陽花紫

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二人の夜※

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 新婚生活は、甘くゆるやかに過ぎていく。
 ユウトはギルの妻として、日中はその仕事の補佐をしていた。
 夜は秘めやかに愛を育み、その身に幸せを感じていた。

***

 しかしある晩、ギルはふと気づく。
 夜の場において、ユウトの声が以前よりも大きく響くようになっているのではないかと。
 初夜の頃はその身をギルの前に晒すことさえ恥じていたものの、ユウトは今となっては積極的に衣服を脱ぎ落としギルの愛に応えるようになっていた。
 その声もまた、初めはか細いものであったかのように記憶している。ギルに聞かれるのが恥ずかしいのだと、いじらしく口に手をあてている時もあった。

 しかし近頃では、口にあてる手もギルの首元へと回されユウトはだらしなく口を開けて喉奥から声をあげていた。
「んあっ、そこぉ……!」
 室内に甘く響き渡るそれは歌のようでもあり、祈りのようでもあった。
 夜の静けさを破るわけではなく、むしろ夜を染め上げていくような情熱的な響き。
「……んううっ、ギルっ……!!」
 その甘い声が耳に届くたびに、ギルの胸はざわついた。
 その声に呼応するかのように、自らの鼓動までもが早まっていくような気がしたのだ。

 勢いのまま、ギルは今宵もユウトの内に向けて熱を放つ。

 全てを終えた後、ギルは瞼を閉じようとするユウトに向けて声をかける。
「少し、いいかな?」
「……何か、あった?」
「その、ユウトのその愛らしい声が、以前よりも強くなっているような気がしてね」
「えっ、……そうかな?」
 ユウトは首をかしげ、少し照れくさそうな笑みを浮かべる。
「私が理性を失い、激しく抱いてしてしまっていることは申し訳ないと思っているよ。ただ、それにしても……」
 大きすぎやしないかとギルが伝えようとするものの、ユウトの唇によってその口は塞がれてしまう。
「たぶん、いっぱい……ギルに聞いてほしいからかな?」
 その返事に、ギルは言葉を失った。
 途端に頬が熱くなり、思わず目を逸らしてしまう。
「ごめん、嫌なら気をつけるよ」
「いや、決して嫌なわけではなくてだね……。君のその声を、誰にも聞かれたくはないんだ」
 ぼそりと呟かれた言葉に対して、ユウトもまた頬を赤く染めていた。

 しかしその夜の記憶は、ギルの胸の奥で長く響き続けることとなる。

***

 それからもユウトの声は収まるどころか、反対に強さを増していく。
 そのたびにギルはそれとなく伝えるものの、ユウトは無意識のうちにそのような声を出してしまっているとのことであった。
 次第に屋敷の使用人達にもその声は漏れ伝わることとなり、このままでは外にも響いてしまうのではないかとギルは危惧していた。

 悩みに悩んだ末、ギルはとある方法を思いつく。
 夜の帳が降りる前、ギルは自室に向けて分厚い本を手に何やら呪文を唱えていた。
 傍から見れば怪しげな儀式であるかのように思われるそれは、防音魔法を施すものであった。
 この世界では魔法が存在するものの、ギルは常より魔法を必要とはしていなかった。自らのことは自らの手で行う、ギルの家では代々そのことが美徳とされていたからである。
 そしてユウトがやってきてからは尚更、ギルは魔法の存在を封じていた。ユウトもまた、魔力を持たず魔法を必要とせずにこれまで生活をしていたからだ。

 しかしこればかりは、流石のギルも魔法に頼らざるを得なかった。
 愛するユウトの声と名誉を守るために、ギルはやっとの思いで探し出した魔導書に向き合い呪文を唱えていた。
 何度かその強度を確認した後に、ギルは静かに微笑む。
「ユウトのためなら、私はなんだってしよう」
 ギルは魔導書を引き出しに隠すと、彼が待つ庭へと足を進めた。

***

 それ以来、防音魔法はギルにとっては欠かせない存在になっていた。
 魔法の効果もあってか、屋敷は夜になると恐ろしいまでに静まり返っていた。
 しかしギルの部屋の中だけは、ユウトのあられもない声が大きく響いていた。
「んああっ!ギルっ、ギルぅ……!!」
 もはやその声は恥じらいなどもなく、直接的な愛の形としてギルの耳へと届いていた。
「もっと、もっとそこ突いてぇ!んはあっ、ぐちゃぐちゃにしてぇ……!」
 ギルの熱を感じるユウトの顔も、昼間のものとは異なりその目は潤み頬も赤く、鼻にかかった息と時折漏れ出る大きな声がギルの興奮を誘っていた。
 そしてギルもまた、その声に応えるかのように何度も激しく腰を打ち付けた。
「あっ、あっ、そこぉ!いいっ、いいよぉっ……!!」
 だらしなく開いた口からは、唾液に塗れた赤い舌がのぞく。ギルはその舌を吸い上げながら、ユウトの口を強く塞いだ。
「んんうっ……。んーーーーっ!ん゛ん゛ーーっ゛!!!」
 口を塞がれてもなお、ユウトは愛を叫び続ける。
 思わずギルの耳の奥が震えるが、それと同時に気づけば熱い精を放っていた。

 しかしそれだけでは、ユウトの熱は収まることをしらなかった。

「んむ゛ぅ……、ギルぅ、も゛っ゛と゛。も゛っと゛ずぼずぼし゛て゛ぇ゛!」

 もはや声だけではなく、卑猥な言葉まで放たれる始末であった。
 ギルは眩暈をおぼえながらも、しかし愛するユウトの期待に応えようと静かに腰を引く。
 その動きさえも刺激となり、声が上がる。
「ん゛あ゛あ゛あ゛っ!」
「わかったよ、君が満足するまで……。愛しあおう」
 そして再び強く腰を打ち付けられたことにより、ユウトの身は小刻みに震えてしまう。
「あ゛あ゛あ゛あっ!!ギルっ゛、すき゛ぃ……!!」
 収縮を繰り返す熱い内に、ギルはもはや何度精を放ったのか考えることをやめた。ただユウトが求めるままに、その身を貪り尽くしていた。


 長い夜が過ぎ、爽やかな朝が訪れる。
「ギル、おはよう」
 愛らしい笑みを浮かべるユウトに反して、ギルは苦い笑みを浮かべていた。
 近頃、夜が激しいせいで足腰に痛みを感じてしまうようになっていたのである。
 以前であれば治癒魔法を使用していたものの、今朝はついにその魔力も尽きてしまった。しかしユウの言葉に答えるべく、口を開く。
「おはよう、ユウト。今日も君は、愛らしいね」
 昨晩までの乱れた姿が嘘であったかのように、ユウトは控えめに笑ってみせた。
「ギルも、今日もかっこいい」
 しかしその一声だけで、ギルの気力は回復の兆しをみせていた。
「つくづく、私は君に甘くなってしまうな……」
 ギルは腰をさすりながら、どうしたものかと心の中でため息をついた。

***

 防音魔法の強化に加え、翌朝のギルの治癒。
 それはギルが本来持つ魔力の量をはるかに超えていた。

 ついに魔力を補助する魔法石を大量に買い込んで、ギルはその日も夜に臨んでいた。
 先ほどまでは庭の薔薇を眺め微笑んでいた純粋な瞳が、次第に欲望の色に染まってしまう。
 ギルの手を控えめに掴む細い手は、今やがっしりとギルの背を掴んで放しはしない。喉の渇きを潤すかのようにユウトはギルの唾液を吸い上げ、小さな舌を懸命に回してギルの舌を味わっていた。
 そのあまりの激しさに、ギルは肩で息をしながらも腰の動きを止めることはなかった。
 ユウトがそう、強く望んだからである。
「ん゛ぅう゛う゛!!!お゛い゛しい゛っ!ギルの゛っ、く゛ち゛っ!ん゛あ゛っ、ちんぽも゛っ!!!お゛いし゛い゛よぉ゛ぉっ!!」
 ついには聞き慣れない単語も飛び出し、ギルは困惑するばかりであった。
 しかしユウトは満足げな笑みを浮かべて、ギルの肩元に向けて深く吸い付いた。

 ――これは、キスマークというものだったか。

 ユウトの世界での愛情表現であると聞いたその甘い痛みに、ギルの思考回路は溶けていく。
「ユウトっ、愛している。愛しているよ……!」
「あ゛う゛うっ、俺も゛っ……!俺も゛っ゛っ、あ゛い゛じてる゛ぅ゛ぅ!!!」
 絶叫に近いその叫びと共に、夜は更けていく。

***

 そしてある時、ギルは気付く。
 自らの声もまた、ユウトにつられて大きくなっているという事実に。
「ユウトっ、ああっ!!!」
 その夜、ユウトはギルに向けて奉仕をしていた。
 硬く張りつめたギルの熱を口に含み、ユウトは柔らかな笑みを浮かべて長い時間むしゃぶっていた。
 当初ギルは声を抑えていたものの、声を出した方が感度も上がるとユウトから教わったのであった。
「ギルぅ、んむぅ……。……ぷはっ、どお?」
 その言葉に、ギルは確かに快楽の違いを感じていた。
「とても、気持ちがいい。ユウト、気持ちがいいよ……!」
 思わず目を伏せ、熱い舌の感触だけに意識を向ける。
 普段目にしているあの小さな舌が、自らの熱を這いまわり包み込んでいる。そのことがさらに、ギルの熱を燃え滾らせていた。
「んへへっ……おっきくなった」
 ユウトはにじみ出る先走りを小さく吸うと、喉の奥深くまでギルの熱を咥えこんだ。
「ユウト……!駄目だ、……っ、そのようなことをしては!!」
 ギルの声がユウトの耳に届くはずもなく、ユウトは顔を上下に動かす。
 これまでに感じたことのない強い刺激に、ギルは思わず熱を放ってしまう。しかしユウトは気にすることなく、ごくりと喉を鳴らしてその精を飲み込んだ。
「ユウト!!」
 信じられない光景にギルは思わずユウトの肩を掴むものの、ユウトはギルを見上げてこう口にした。
「ギル、……んっ、きもちよかったぁ?」
 その満面の笑みに、ギルは手の力を弱めてしまう。
「……ああ、とても、っ……気持ちよかったよ」
「んぅ、ちゅっ。……ならっ、……うれしぃ」
 ギルは次第に、考えることを放棄してしまう。
「あ゛ーーーっ゛!!も゛っ゛ど!も゛っとお゛くに゛ぃ゛!!き゛でぇ!!!」
「ああっ!ユウトっ……!いくよっ、いくからねっ!!」
「ん゛ほ゛お゛おっ!あ゛あ゛っ!ギルの゛ちん゛ぽっ!お゛ぐっ!お゛ぐに゛ぃ゛ぃ!!!」
「駄目だ、ユウト!そんなに締めつけたらっ、あああっ!!」
「い゛い゛よ゛ぉ!!い゛っぱい゛、い゛っぱい!な゛かに゛だしでぇ゛!」
「出すよ、ユウトっ!出る、出るっ……!!」
「い゛っちゃう゛っ!い゛ぐっ!い゛ぐう゛ーっ゛!……あ゛ついの゛っ、い゛っぱい゛っ!でてる゛よ゛ぉ……!!!」
 もはや二人は互いに叫びながら、その深く激しい愛を確かめ合うのであった。
「ギル゛ぅ、……だい゛すぎぃ゛!」
「ユウト、好きだ……愛している!!」

***

 夜な夜な繰り返される痴態に、ギルはもはや何かが壊れてしまったかのような感覚に陥ってしまう。
 貴族としての血筋、屋敷の主として、この地を治める者として、一人の男としての何かが。
 それは理性という名の抑止か、はたまた溢れ出る愛という名の欲望か。
 今となってはもう、何もわからずにいた。
「今夜もっ、ギルのでかちんぽっ……俺にはめはめしてぇ?」
「ああっ、ユウト!早く、早く私の熱を冷ましておくれ……!」
「ん゛ほ゛ぉ゛ぉっ゛、い゛きな゛り゛っ!?う゛れ゛じい゛っ゛!!」
 時には服も脱がぬまま、ただ互いの下半身を覆う布をずらしたまま交わることも多々あった。
 夜が、待てなくなってしまっていたのだ。

 夜な夜なこのようなことが繰り広げられていることなど、使用人たちはつゆほども知らない。
 ギルが施す防音魔法によって、壁一枚を隔てた外では全ては何事もなかったかのような静寂に包まれるだけであった。
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