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1.転職!転勤!→異世界
こちらはそうなりました
しおりを挟む第13話 こちらはそうなりました[???.side]
これなら保護して家に送り返してやったら報奨金間違いない。家柄によっては熊狩りよりはずむかもしれん。
…幸運の兎の尾でも掴んだかな?(※こちらのラッキーの慣用句)
警戒させないように斜め向かいに腰を下ろす。とりあえずマーシナリーとわかるように…、
「なあアンタ、何処から攫われて来たんだ?小綺麗なナリしてるから貴族なんだろ?金次第だが家まで送ってやるよ。」
傭兵契約を匂わせば自分を保護に来たと分かるだろう。斡旋所を通した保護依頼ではないから、はっきり契約しろと言い切れないのが歯痒い。
しかし、コイツはかなりの箱入りらしく…。
匂わせが通じない。
「あ、あの、えーと、どうやってコチラまで来たんです?道は塞がってたと思うんですが…。」
何故か自分の状況より俺の侵入を気にした。コイツ、犯人にどんな扱いを受けてたのだろうか…?
入口をロックスで破壊したこと、遺跡に部屋を見つけたこと、そしてコイツを見つけたことを話してやる。
すごくぽやんと他人事のような顔で話を聞いてるが…、コイツはもしかしたらただの箱入り世間知らずじゃなく、本当に世間に出ないほうの高位貴族かもしれない…?
「ま、考えても仕方ねえ。アンタ、名前は?家名は何家だ?」
「え、はい、スズキ・コウです。家名って言うのはスズキですけど…。」
スズキ家なんて初めて聞く。しかも家名を先に名を後に、これはこの国の者ではない名乗り方だ。近隣他国の貴族か、もしくはどこぞの属国からの人身御供サマか。
どちらにしても面倒な事には変わりない。下手に政治が関わると報酬以前にコッチがヤバくなる時もある。届けて元がとれるか…。それとも首がとれるか…。それは嫌な選択肢だな。
やはり幸運の兎はすぐ跳ねて行ってしまうのか?
「とりあえずここ出るぞ。いつ誘拐犯が戻ってくるかわかんねえからな。一旦、近くの街に寄って手配書かけて、あとそっからは帝都だな。領事館まで行きゃなんとかなるだろ。」
お荷物サマをお家に届ける前に、先手を打って誘拐犯の手配書出しとけば不慮の事故は防げるだろう。あとはお上次第、と言うところだな。
よっこいせと立ち上がり、ついでにお荷物サマも手を引いて立ち上がらせる。
やはり小柄な男だ。顔の感じからは20才そこそこのような大人な気配はするのだが、背丈は…成人(※15才で成人)したての子供くらい。
病気…、いや他国では嫁がせる為に成長をとめる手段があるとかないとか。もしかしたらそう言う用途の者なのかもしれない。
特段見目麗しい訳ではないが、平凡な割に愛嬌があり愛玩向け、ある意味、
性奴隷だな…。世知辛え。
掴んだ手をそのままに歩き出そうとしたが、よくよく足元を見れば裸足であった。逃亡防止で靴を奪われたのだろう。
ふむ、どうするか…。
抱き抱える、背負う、……肩に担ぐだな。
片手を開けないと何かあった時対処できない。
「悪りぃけどしばらくコレで我慢してくれや。片手開けるにはコレが一番なんだ。」
大丈夫、落とさないとケツをポンと叩く。
しかし初めてこんな格好で担がれたのか、非常に驚いたらしくお荷物サマが暴れ出した。
「あ、あ、あの!!すいません!!俺、攫われてないです!!貴族じゃないし!!大丈夫!!大丈夫!!」
パニックを起こし、攫われてない、貴族じゃないと命乞いのような事を叫びだす。他国へ嫁いだなら自国に縋るなとでも、そう故郷で教えられたのかもしれない。居た堪れない気分になる。が、
「いや、マジ、ほんと大丈夫なんで!ここ、俺のウチなんで!!」
いま何と言ったか?
肩からおろし、縦抱きにして顔を覗き込む。
「え、はい、ここは俺の家なんです…。すいません。…なんで、誘拐犯とか悪い人はいないし、住居だから危険はないですから…。」
家、なのか?
この従者がいないと何も出来そうもないお荷物サマが、この人里外れた遺跡に住んでると?
「あの、…降ろしてもらってもいいですか…?」
突然の事にうっかり反応が遅れてしまった。お荷物サマを降ろしてやる。
お荷物サマは明らかに平民の俺へ丁寧に腰を折って感謝を伝えてきた。
「ありがとうございます。こちらも勘違いさせてしまってすいませんでした。」
一体どうなっているんだ、コレは。
コイツの様子、俺への態度、ただの誘拐じゃない。
ススッとお荷物サマが戸口へたつ。明らかにこの場から俺を出すつもりだ。
「本当にここが家なのか?脅されてるんじゃねよな?」
「はい、大丈夫です。」
にこり、と眉を下げ困ったように微笑む。
これは大丈夫、ではないな。もしかしたらここでの出来事が記録されているのかも知れない。
質問で探りを入れてみる。
「家族もいるのか?」
「ああ、そうですね。」
にこり、また先程のような困った笑顔。
これはノーだ。
「アンタ以外人の気配がないようだが、いま出払ってるのか?」
「ええ、まあ。」
にこり、としたが返事が曖昧だ。
イエスと言うところか。しかし、何故だかコイツの反応は…。
アレだ、アレの反応だ。
「………一人でここにいるのか?」
「そうですね、はい。」
にこぉ。
商人が売る気がなくてのらりくらりと躱わす、アレ。
「おいお前、いま適当に返事してるだろ?」
「ええ、大丈夫……で……ス…」
間違いない。適当に返事をした。
そして顔をよく見れば、コイツ眼の色が何かおかしい。こんな黒い眼は人族にでない。
…そうか、コレは、
ドンッ
腕を捻り上げドアに顔から押し付ける。
「お前、何モンだ?その魅了眼、人族じゃねえだろ?妖精族か?人、誑かしに来たのか?なあ?」
コイツはハナっから遺跡にいた人族狙いの何かだ。魅了が強いから妖精族か!?
あのまま魅了に掛かれば間違いなく喰われてた。クソ、俺はエサに困って引き入れたカモかよ。
俺の精神耐性、ブチ抜いてくるとかとんだ上位妖精に出会っちまった。今も頭の隅はまだ揺らいでる。ぐいっと腕を締め上げる。
「ウワアアアア!!!!人族です!!!!間違いなく人族ですから!!!!さっきは適当に答えてごめんなさいいいい!!!!本当にすいませんんんん!!!!」
腕を捻りあげられジタバタとしながらも、まだ魅了眼を使って懐柔しようとしてくる。目尻に涙を浮かべてエロ…クッ!いや違う、これは違う!
騙されるな、これは魅了だ。エロいなんて、
「…うっ、ほんとごめんなさ…、グスッ…」
泣き顔エロい。
…ハッ、ダメだ、しっかりしろ!
あざとい仕草でコイツは堕ちるのを待ってるんだ!
「…ッ、クソ!泣けば誤魔化せるとか思ってんのか?…俺は、そんな泣き真似に騙されねえぞ!騙されて魔力カラっカラになるまで喰われるなんて真っ平だ。」
せめて妖精族の魔力帯、羽の力を抑えないと完全に耐性が押し負けてしまう。根本から落とせばなんとか形勢逆転できるはず。
服に隠されたヤツの羽を引き摺り出す為、捻り上げた腕を掴み直し頭上へ固定した。
「背中に羽あるんだろ?確認させて貰うぜ!」
ガバリと上着を捲り上げる。
「………。」
「………。」
日に当たらない生っ白い普通の背中だ。
滑らかな肩甲骨以外目立った凹凸はない。
普通の人族の背中だな…。
チラリとこちらを伺う視線が刺さる。
「…あー、アレだ。本当は隠蔽してんだろ…?今なら怒らないからさ、素直に羽出してみ?」
隠蔽、あるかもよ?(羽を隠す魔法なんて聞いた事はないが…)
さらにチラリチラリとこちらを伺う視線が刺さる。
…ない?
「………マジで人族か?」
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