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第1章
9話、絶望と改心(ネヴィル視点)
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何も考えられず、何一つ頭に入ってこない。僕は音一つ入らない、無の空間に放り出された気分である。
底知れぬ絶望で視界がおぼろげとなるが、シルフィがだんだんと遠ざかって行くのは分かった。
僕は耐えきれず、頭の整理もつかないまま彼女を引き止めた。
「ちょっと待て!!!何が初対面なものか!!お、おい、お前!!僕が誰なのか分からないのか!?」
シルフィと呼び捨てにするのは憚れて、咄嗟にお前と言ってしまった。
これはマズイ。向こうからしたら見ず知らずの男にお前などと言われるのだ。失礼以外の何ものでもない。
「人違いをなさっているのでは?」
眉を顰めて言う彼女に、どん底から込み上げてくる針を飲むような悲しさが胸いっぱいに広がる。
「嘘だろ、し、シルフィ、、」
最後に絞るように出した声は弱々しいものだった。それでも彼女を引き止めたい一心で名前を呼んだ。
「何でしょう…。この懐かしい感じ…。今、身体中に鳥肌と悪寒が走りましたわ…。」
とりはだとおかん…?僕はどれほどシルフィに嫌われているのか…。
彼女は頭では僕のことが分からなくても、心に受けた傷が僕を覚えているのだろう。
そう思うと自分の図々しさに殆呆れた。
僕は自分の愚かさにやっと気づき、その場にしゃがみ込んだ。
別に彼女を虐めたことを忘れた訳ではない。
ただ、忘れられた事に勝手に絶望した自分が本当に情けない。彼女の心に深い傷を負わせたくせに、彼女に愛して欲しいなど本当に図々しいにも程がある。
(それでも、、それでもだ。彼女に、シルフィに、愛して欲しい…。)
この気持ちは変わらない。罪深いとは承知している。しかし、ストーカーまがいの事までしているのだ、今更後に引きたくない…。
気付けば目の前にシルフィの兄、ヴィンセントが顰めっ面で僕を見下ろしていた。
彼はシルフィを部屋に戻し僕を追い払うため玄関まで赴いたのだろう。
「おい、ネヴィル・ハーフォード。今日のことで十分懲りただろ、シルはお前の事など微塵も覚えてなんかいないんだ。わかったら帰れ。俺はお前の顔を見るだけで胸糞が悪くなる。」
言葉遣いは荒いが、彼の言い分はごもっともだ。僕がシルフィにした事は許されたものではない。シルフィを目に入れても痛くないぐらいに可愛がる彼なら尚更のこと僕を許せないのだろう。
「はい、今日のところはこれで帰らせていただきます。」
「今日のところ?一生来るな。次来たら俺はお前を殺しかねない。」
彼の瞳は怒りで燃えていた。だが、僕はもう怖気付かない。いつか必ず彼と向き合わねばならない時が来る。僕は彼の大切な宝を奪うのだから。
「殺されるのは御免です。」
「そうか、では妹の事は忘れ諦めろ。」
「それは了承しかねます。」
僕は一呼吸置いて、彼に言い放った。
「シルフィは何としても諦めません!いつか必ず彼女を頂きます!!」
そう、高らかに宣言して、彼が呆気としている隙に僕は彼に背を向け堂々と門の出口まで歩いた。
僕は新たに心を入れ替え、名残惜しみながらも侯爵邸を後にしたのだ。
底知れぬ絶望で視界がおぼろげとなるが、シルフィがだんだんと遠ざかって行くのは分かった。
僕は耐えきれず、頭の整理もつかないまま彼女を引き止めた。
「ちょっと待て!!!何が初対面なものか!!お、おい、お前!!僕が誰なのか分からないのか!?」
シルフィと呼び捨てにするのは憚れて、咄嗟にお前と言ってしまった。
これはマズイ。向こうからしたら見ず知らずの男にお前などと言われるのだ。失礼以外の何ものでもない。
「人違いをなさっているのでは?」
眉を顰めて言う彼女に、どん底から込み上げてくる針を飲むような悲しさが胸いっぱいに広がる。
「嘘だろ、し、シルフィ、、」
最後に絞るように出した声は弱々しいものだった。それでも彼女を引き止めたい一心で名前を呼んだ。
「何でしょう…。この懐かしい感じ…。今、身体中に鳥肌と悪寒が走りましたわ…。」
とりはだとおかん…?僕はどれほどシルフィに嫌われているのか…。
彼女は頭では僕のことが分からなくても、心に受けた傷が僕を覚えているのだろう。
そう思うと自分の図々しさに殆呆れた。
僕は自分の愚かさにやっと気づき、その場にしゃがみ込んだ。
別に彼女を虐めたことを忘れた訳ではない。
ただ、忘れられた事に勝手に絶望した自分が本当に情けない。彼女の心に深い傷を負わせたくせに、彼女に愛して欲しいなど本当に図々しいにも程がある。
(それでも、、それでもだ。彼女に、シルフィに、愛して欲しい…。)
この気持ちは変わらない。罪深いとは承知している。しかし、ストーカーまがいの事までしているのだ、今更後に引きたくない…。
気付けば目の前にシルフィの兄、ヴィンセントが顰めっ面で僕を見下ろしていた。
彼はシルフィを部屋に戻し僕を追い払うため玄関まで赴いたのだろう。
「おい、ネヴィル・ハーフォード。今日のことで十分懲りただろ、シルはお前の事など微塵も覚えてなんかいないんだ。わかったら帰れ。俺はお前の顔を見るだけで胸糞が悪くなる。」
言葉遣いは荒いが、彼の言い分はごもっともだ。僕がシルフィにした事は許されたものではない。シルフィを目に入れても痛くないぐらいに可愛がる彼なら尚更のこと僕を許せないのだろう。
「はい、今日のところはこれで帰らせていただきます。」
「今日のところ?一生来るな。次来たら俺はお前を殺しかねない。」
彼の瞳は怒りで燃えていた。だが、僕はもう怖気付かない。いつか必ず彼と向き合わねばならない時が来る。僕は彼の大切な宝を奪うのだから。
「殺されるのは御免です。」
「そうか、では妹の事は忘れ諦めろ。」
「それは了承しかねます。」
僕は一呼吸置いて、彼に言い放った。
「シルフィは何としても諦めません!いつか必ず彼女を頂きます!!」
そう、高らかに宣言して、彼が呆気としている隙に僕は彼に背を向け堂々と門の出口まで歩いた。
僕は新たに心を入れ替え、名残惜しみながらも侯爵邸を後にしたのだ。
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