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二十 おねがい
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「リュ、リュミネーヴァ様! わたしたち、応援してますから!」
「公爵家のご令嬢でいらっしゃると、ご自分では選べませんものね。……おいたわしい」
「せめて、ユールティアス様との仲も、応援させていただきます!」
「え、えぇ。ありがとう……」
婚約破棄。
それはご令嬢方の興味関心をひくには十分で。
あの騒ぎ後の最初の登校では、まるで腫れ物のごとく遠巻きに憐みの目を向けられた。
ライエンやシンシアとも、そう関わることもない。
シンシアは相変わらず攻略キャラとの仲は深めているようだが、前回の騒動からはユールティアスの進言もあり、現在は城での監視生活を送っているらしい。
学校も、教師が城へ個別授業という待遇のようだ。
表向きは、婚約者だから。だそうだが。
魅了の事情を知っている王と、ライエン。一部の高官にとっては、よけいな力を使わせないための監視だ。
最近は魔皇国の協力で、魔道具を用いて魅了耐性を上げているらしい。
そうした中、良くご飯を共にしていたご令嬢方より、激励の言葉を賜る。
いや、そんなに気にしてないんだけど……。
気になるのは平穏な将来設計が崩れたことくらい、か。
なにせ、魔皇国との争いは起きず、一応悪役令嬢である私の婚約は破棄。
そしてヒロインがライエンと婚約。
そう、ここは今、エンディング後の世界線ともとれる。
原作クラッシャーが二人いるので、もうどこのルートを彷徨ってるのか分からないけど。
「リュミ」
「ユール様」
ライエン達と疎遠になったと同時に、シンシアのお目付け役であったはずのユールとの接触は増えた。
いや、私のことには構わず見張っといて欲しい。
「……そんなに露骨な顔をされると、さすがの私も傷付くよ?」
「え゛」
顔にだしていたとは、さすがに不敬だ。
これ見よがしに手で顔を整える。
「ゆ、ユール様。いかがなさいました?」
「あぁ、うん。今度、そちらにお邪魔することになったよ」
「……はい?」
「グスタフ殿にも約束が取れたからね、ちゃんとご挨拶に伺うよ」
「…………はい?」
お父様に、ご挨拶?
そんなのまるで……。
「きちんとご婚約の報告、しないとね。……ライエン殿が強行なさるから」
デスヨネーー!
「あの、婚約って、もう、そのっ」
焦って思う様に言葉がでない。
がんばれ、ちゃんと言うんだ!
「貴女には残念かもしれないけど、決定事項だよ?」
……ですよね。
「男性に免疫がないのは分かるけど、公爵家のご令嬢なら遅かれ早かれ、だ。……むしろ、私で良かったと言わせてみせるよ」
「はぁ」
えらい自信ですね。
さすがラスボス。
まぁ実際、非の打ちどころがない次期魔皇帝どの。
セラフィニ国内でもさぞおモテになったでしょうな。
「そういえば、今日リュミにお願いしたいことがあるんだけど。放課後付き合ってくれるかな?」
「? えぇ、私にできることでしたら」
「良かった」
「?」
改まってなんだろう。
元々、どたばた婚約劇だ。
再度、自己紹介。
お互いを知ろう! とでも言うのだろうか。
「じゃぁ、また後で」
「はい。ではのちほど」
その輝く銀の髪を揺らし、去って行った。
……お願いしたいこと?
(面倒なことじゃないといいけどねぇ)
最近はどうも心労が絶えない。
「公爵家のご令嬢でいらっしゃると、ご自分では選べませんものね。……おいたわしい」
「せめて、ユールティアス様との仲も、応援させていただきます!」
「え、えぇ。ありがとう……」
婚約破棄。
それはご令嬢方の興味関心をひくには十分で。
あの騒ぎ後の最初の登校では、まるで腫れ物のごとく遠巻きに憐みの目を向けられた。
ライエンやシンシアとも、そう関わることもない。
シンシアは相変わらず攻略キャラとの仲は深めているようだが、前回の騒動からはユールティアスの進言もあり、現在は城での監視生活を送っているらしい。
学校も、教師が城へ個別授業という待遇のようだ。
表向きは、婚約者だから。だそうだが。
魅了の事情を知っている王と、ライエン。一部の高官にとっては、よけいな力を使わせないための監視だ。
最近は魔皇国の協力で、魔道具を用いて魅了耐性を上げているらしい。
そうした中、良くご飯を共にしていたご令嬢方より、激励の言葉を賜る。
いや、そんなに気にしてないんだけど……。
気になるのは平穏な将来設計が崩れたことくらい、か。
なにせ、魔皇国との争いは起きず、一応悪役令嬢である私の婚約は破棄。
そしてヒロインがライエンと婚約。
そう、ここは今、エンディング後の世界線ともとれる。
原作クラッシャーが二人いるので、もうどこのルートを彷徨ってるのか分からないけど。
「リュミ」
「ユール様」
ライエン達と疎遠になったと同時に、シンシアのお目付け役であったはずのユールとの接触は増えた。
いや、私のことには構わず見張っといて欲しい。
「……そんなに露骨な顔をされると、さすがの私も傷付くよ?」
「え゛」
顔にだしていたとは、さすがに不敬だ。
これ見よがしに手で顔を整える。
「ゆ、ユール様。いかがなさいました?」
「あぁ、うん。今度、そちらにお邪魔することになったよ」
「……はい?」
「グスタフ殿にも約束が取れたからね、ちゃんとご挨拶に伺うよ」
「…………はい?」
お父様に、ご挨拶?
そんなのまるで……。
「きちんとご婚約の報告、しないとね。……ライエン殿が強行なさるから」
デスヨネーー!
「あの、婚約って、もう、そのっ」
焦って思う様に言葉がでない。
がんばれ、ちゃんと言うんだ!
「貴女には残念かもしれないけど、決定事項だよ?」
……ですよね。
「男性に免疫がないのは分かるけど、公爵家のご令嬢なら遅かれ早かれ、だ。……むしろ、私で良かったと言わせてみせるよ」
「はぁ」
えらい自信ですね。
さすがラスボス。
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「そういえば、今日リュミにお願いしたいことがあるんだけど。放課後付き合ってくれるかな?」
「? えぇ、私にできることでしたら」
「良かった」
「?」
改まってなんだろう。
元々、どたばた婚約劇だ。
再度、自己紹介。
お互いを知ろう! とでも言うのだろうか。
「じゃぁ、また後で」
「はい。ではのちほど」
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最近はどうも心労が絶えない。
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