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仕事と問題
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扉を開けると、そこには予想以上に大勢のお客様がいた。
え。すごい。まさか初日からこんなに大勢の人が開店前から並んでるなんて。
想定外の人数に少々戸惑いながらも
「順番にご案内致しますので並んでお待ちください」
と告げて、先頭の女性グループのお客様を案内する。
「あの、店員さん。できれば厨房に近い席が良いんですけど」
「かしこまりました」
厨房に近い席? 不思議なリクエストだ。
私は女性客達をちらりと見やる。それにしても、このお客様達、どこかで見たことあるような……。
そこで気づいた。
この人達、銀のうさぎ亭本店によくきてくれていた人達だ。それが今日は二号店にきている。
と、いうことは、もしかして……。
「きゃあ、レオン様よ。今日も素敵ねえ」
「相変わらず凛々しくていらっしゃるわ」
女性達はテーブルにつきながら、そんなため息を漏らしている。
やっぱり。
この女性客達は以前からのレオンさんのファンで、彼の姿を間近で見つつ料理を食べるために先頭で並んでいたみたいだ。
そういえばさっきチラッと並んでるお客様を見たけれど、女の人が多かったような気がする。まさかあの人達もレオンさん目当て? うーん、レオンさん効果すごい。
結局レオンさん効果なのか、はたまた新規開店のお店に興味のある人達のおかげか、店内はさほど時間の経たないうちに満席となってしまった。
でも、これで喜んでいる場合じゃない。本当の戦いはこれからだ。
「店員さーん、注文いいかい?」
「はーい、ただいま伺います!」
「すみませーん。こっちもいいですかあ?」
「はい、少々お待ちください!」
私一人でホールを担当するとなるとてんやわんやだ。注文を聞いて回るだけで忙しくて目が回りそう。
おまけにできた料理も配膳しないといけないし。
少々ミスしつつも、体力と気力の限界に近づいて来た時、やっとランチタイムが終わった。
◇◇◇◇◇
「レオンさん。無理。私もう無理です。体力の限界です……」
テーブルに突っ伏しながら呟く。
「初日からそんなんでどうするんだよ? せっかく順調な出足だってのに。明日からもこれが続くかもしれないんだぞ」
お鍋をかき混ぜながら、レオンさんはこちらも見ずに応える。
明日からも……考えただけでぞっとする。
私は顔を上げてレオンさんに訴える。
「それなら、もう一人従業員を雇うっていうのはどうですか? それなら負担も半分で済むし」
「もう一人ぃ?」
「お願いします! 私もう初日にしてすでに限界なんです! これから先もこんな事が続くかと思うと憂鬱で憂鬱で」
「そこまでかよ……仕方ねえな。俺も皿洗い担当が欲しいと思ってたとこだし、両方できそうなやつを募集するか」
「ほんとですか!?」
「ああ、そのかわりネコ子、お前が求人のポスターなりなんなり作って店頭に貼っとけよ」
「はい! ありがとうございますレオンさん!」
【従業員募集中! 勤務内容 : ホール兼皿洗い】
早速手書きの簡易的な張り紙を入り口のドアに貼る。いい人が来てくれるといいなあ。
とはいえ、そんなにすぐ反応があるわけでもなく、私は引き続きギリギリの状態で働いていたのだが、しばらく経ったある日の休憩時間。入り口のドアが静かに開いた。
「失礼します。表の求人の張り紙を拝見させていただいたのですが」
まさか! 待ちに待った就職希望者!?
私は椅子からがたりと立ち上がると、その人物に駆け寄る。貴重な人材を逃してはならない!
「お仕事のお話ですか? それでしたらぜひ奥でゆっくりお茶でも飲みながら……」
言いかけてはっとした。服装こそ変わっていて気づくのが遅れたが、目の前にいたその人物は、かっこよくて黒髪で冷静で、どんな問題事が起こっても『想定の範囲内です』とか言いながら眼鏡を指で押し上げて解決するような頭の良さそうな……
そう、花冠の乙女事件の時にいろいろとあったクロードさんだったのだ。
え。すごい。まさか初日からこんなに大勢の人が開店前から並んでるなんて。
想定外の人数に少々戸惑いながらも
「順番にご案内致しますので並んでお待ちください」
と告げて、先頭の女性グループのお客様を案内する。
「あの、店員さん。できれば厨房に近い席が良いんですけど」
「かしこまりました」
厨房に近い席? 不思議なリクエストだ。
私は女性客達をちらりと見やる。それにしても、このお客様達、どこかで見たことあるような……。
そこで気づいた。
この人達、銀のうさぎ亭本店によくきてくれていた人達だ。それが今日は二号店にきている。
と、いうことは、もしかして……。
「きゃあ、レオン様よ。今日も素敵ねえ」
「相変わらず凛々しくていらっしゃるわ」
女性達はテーブルにつきながら、そんなため息を漏らしている。
やっぱり。
この女性客達は以前からのレオンさんのファンで、彼の姿を間近で見つつ料理を食べるために先頭で並んでいたみたいだ。
そういえばさっきチラッと並んでるお客様を見たけれど、女の人が多かったような気がする。まさかあの人達もレオンさん目当て? うーん、レオンさん効果すごい。
結局レオンさん効果なのか、はたまた新規開店のお店に興味のある人達のおかげか、店内はさほど時間の経たないうちに満席となってしまった。
でも、これで喜んでいる場合じゃない。本当の戦いはこれからだ。
「店員さーん、注文いいかい?」
「はーい、ただいま伺います!」
「すみませーん。こっちもいいですかあ?」
「はい、少々お待ちください!」
私一人でホールを担当するとなるとてんやわんやだ。注文を聞いて回るだけで忙しくて目が回りそう。
おまけにできた料理も配膳しないといけないし。
少々ミスしつつも、体力と気力の限界に近づいて来た時、やっとランチタイムが終わった。
◇◇◇◇◇
「レオンさん。無理。私もう無理です。体力の限界です……」
テーブルに突っ伏しながら呟く。
「初日からそんなんでどうするんだよ? せっかく順調な出足だってのに。明日からもこれが続くかもしれないんだぞ」
お鍋をかき混ぜながら、レオンさんはこちらも見ずに応える。
明日からも……考えただけでぞっとする。
私は顔を上げてレオンさんに訴える。
「それなら、もう一人従業員を雇うっていうのはどうですか? それなら負担も半分で済むし」
「もう一人ぃ?」
「お願いします! 私もう初日にしてすでに限界なんです! これから先もこんな事が続くかと思うと憂鬱で憂鬱で」
「そこまでかよ……仕方ねえな。俺も皿洗い担当が欲しいと思ってたとこだし、両方できそうなやつを募集するか」
「ほんとですか!?」
「ああ、そのかわりネコ子、お前が求人のポスターなりなんなり作って店頭に貼っとけよ」
「はい! ありがとうございますレオンさん!」
【従業員募集中! 勤務内容 : ホール兼皿洗い】
早速手書きの簡易的な張り紙を入り口のドアに貼る。いい人が来てくれるといいなあ。
とはいえ、そんなにすぐ反応があるわけでもなく、私は引き続きギリギリの状態で働いていたのだが、しばらく経ったある日の休憩時間。入り口のドアが静かに開いた。
「失礼します。表の求人の張り紙を拝見させていただいたのですが」
まさか! 待ちに待った就職希望者!?
私は椅子からがたりと立ち上がると、その人物に駆け寄る。貴重な人材を逃してはならない!
「お仕事のお話ですか? それでしたらぜひ奥でゆっくりお茶でも飲みながら……」
言いかけてはっとした。服装こそ変わっていて気づくのが遅れたが、目の前にいたその人物は、かっこよくて黒髪で冷静で、どんな問題事が起こっても『想定の範囲内です』とか言いながら眼鏡を指で押し上げて解決するような頭の良さそうな……
そう、花冠の乙女事件の時にいろいろとあったクロードさんだったのだ。
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