もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

文字の大きさ
上 下
88 / 109

花火

しおりを挟む

夜まではみんなでコテージに置いてあったUNOやトランプをして過ごした。

絶対にテレビは付けない。

そして夜。

軽装な俺たちは花火をたくさん持って、再びコテージの外へ向かう。

山沿いにあるってだけあり、真夏なのに夜は涼しくて心地良い。

この夏、初めての花火。

「めっちゃ綺麗。ね、俊也」

「うん」

暗がりを彩る花火を互いに持ち、笑顔になる。

涼太や豊も、

「わっ、綺麗」

「夏って感じするなー」

二人とも楽しそう。

「樹がさ、あの中華料理屋で言い出してくれて良かった。星が見たいって」

「星....」

「うん」

手持ち花火が終わり、ふと空を見上げると、満天の星空の下にいた。

「花火だけじゃない、星空まで綺麗...」

「だな。みんなさ、あのニュース知って、気を使ってくれたんだろ?」

「....知ってたんだ、俊也」

再び、隣に同じように座り込んだ俊也が真新しい花火に火をつけた。

花火が彩る俊也の横顔は綺麗な微笑だった。

「俺、テレビ観ないし、そもそも部屋にないからさ、わからなかったんだけど、母親から連絡があって。父さんの病院で事故があって、女優さんが亡くなって。病院も自宅もマスコミがたくさん湧いてて大変だから、暫く自宅には戻ってこないように、てのと、学校までマスコミが来たりはしないだろうけど...なんか心配されて。似てるから、て」

「うん....」

あの女優さんの件は、当初は自殺と報道されたものの、遺書もなく、自殺とは断定できないとして、転落事故に変わっていることも知った。

「お母さんも...俊也のこと、心配してるんだね」

「だね。あの家で唯一、俺を心配してくれてるのは母さんかも。それと学校では樹や涼太、豊」

「うん」

消えそうになった手持ち花火の先から火を貰い、俺も真新しい花火を手に持った。

「みんなに感謝したいな」

「このコテージとかで、充分だよ。バーベキューも美味しかったし」

俺と俊也は見つめ合い、そして、互いに微笑んだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

邪魔者王女はこの国の英雄と幸せになります

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,595

邪魔者は静かに消えることにした…

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:4,194

【第2章開始】あなた達は誰ですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:340pt お気に入り:9,699

婚約者を妹に奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:911

召喚されない神子と不機嫌な騎士

BL / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:464

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:53,776pt お気に入り:6,792

夫の愛人が訪ねてきました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:65,592pt お気に入り:626

私のバラ色ではない人生

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:95,815pt お気に入り:4,890

処理中です...