勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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今こそ、今だからこそ4

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「うおおおおっ!」
「ギイイッ!」

 ハークの火の魔法剣が、アルヴァの一体を斬り裂く。
 深く踏み込んで繰り出されたハークの剣をアルヴァは避ける事叶わず、黒い霧のようなものとなって消えていく。
 一方のエドもアルヴァと打ち合ってはいるが、互いに決め手に欠けるのか中々決着が付かない。

闇撃アタックダーク!」

 イクスラースの放った闇撃アタックダークがそのアルヴァを打ち倒し、部屋に静寂が戻る。
 
「イクスラース様。やっぱりエドは本物では……」
「……」

 イクスラースは、黙ってエドを見つめる。
 しかし、そうしていてエドの正体が判別できるわけでもない。
 すぐにエドから視線を外すと、そこまま壁へと短杖を向ける。

「まあ、どうでもいいことよ。この壁をぶち抜いて出る。そうすれば何の問題も無いわ」
「え、ええ!? し、しかしそれは……」
「何よ。ほぼ廃墟と化しても直ったのよ。壁の一枚や二枚壊したところで平気よ」

 イクスラースはそう言うと、再びハークが止める間もなく火撃アタックファイアを放つが……火撃アタックファイアが命中したその瞬間、次元城の壁が薄く輝く。
 そうしてその輝きが収まったその後には、焦げ跡一つついていない壁がそこにある。

「……あら、頑丈ね」
「今のは……魔法障壁マジックガード? 建物に?」
「違うわ。魔法剣と同じ理屈なだけよ。規模は桁違いだけどね」

 そう、今のを見て記憶が一つ呼び起こされた。
 これは次元城の機能……というよりも、次元城を形作っている材質の機能だ。
 この名前すらも分からぬ石材は魔力との親和性が高く、魔法石のように増幅しやすい。
 だが、それだけだ。
 放出することもできず、増幅したものを回収することもできない。
 今のように魔法攻撃に対する破壊への対策とすることはできるが……本来の用途である「次元の狭間への出入り」の時に城が破損しないように保護する為の機能の副産物でしかない。
 それが起動しているということは……誰かが、この誰がやっても動かなかった次元城を「起動」させたということになる。
 そして、次元城が起動しているということは……入り口の扉が開くかどうかも分からない。
 となると、やはり転移して出るしか無い。
 そう考えてイクスラースが口を開こうとすると、エドが「上に行きましょう」と提案する。

「上? だがエド、上は……」

 上には、今回の元凶がいるかもしれない。
 そうハークが言おうとするのを、エドが止める。

「だからこそ、だ。元凶にしてみれば、俺達が上に行くとは思わないはず。むしろ、なんとか入り口から脱出しようと考えるはずだろう? だからこそ、そこの妨害は薄いはずだ」
「それは……」
「ダメよ」

 エドの提案を、イクスラースは一言で切って捨てる。

「元凶に近づいたら安心なんていうのはバカの考えよ。そんな事を考えるのなら、この壁を壊すか入り口の扉付近まで行ったほうがまだ安全。というか、それ以外は認めないわ」
「エド。イクスラース様の決定だ。行こう」
「……分かった」

 ハークはエドの返答にほっとした様子で笑う。
 ハークも、エドの様子が何処かおかしい事には勘付いていたのだろう。
 それ故に、エドが素直に頷いた事に安心したのだ。
 だからこそ。
 エドが顔面に向けて繰り出した拳を受けて、ハークは壁際まで吹っ飛んでいく。

「がっ……!」
「よし、今のうちに安全な所へ……!」

 やはりアルヴァかと反応したイクスラースは腰に手を伸ばし……しかし、黒薔薇の剣が先程手元から離れた事を思い出して腰の後ろの短杖を取り出そうとする。
 だが、それよりもエドの方が速い。
 イクスラースを蹴りで弾き飛ばしたエドは床に転がっていた黒薔薇の剣を拾うと、もう反対側の腕でイクスラースを抱え……先程は開かなかった扉を開ける。

「エド! お前……!」
「安心しろ、ハーク! 俺に任せておけ!」

 そう叫んでエドは後手に扉を閉め……慌てたようにハークは扉を開けて追いかけようとするが、扉は鍵でもかかってしまったかのように開かない。
 ガチャガチャと音を立てて開かない扉にハークは蹴りを入れるが開かず、仕方無しにハークは剣を構える。
 本気で壊すしかない。そう考え、ハークは剣に魔力を集中させる。

「……火よっ!」

 火の魔力を宿した剣をハークは扉に向けて一閃させ……しかし、薄く輝く魔力を纏った扉はそれを空しく弾き返す。
 だが、剣に込めた魔力がそれで尽きたわけではない。
 ハークは扉を乱打するように次から次へと斬撃を繰り出し……やがて、扉に軽い傷がつく。

「よし、いけ……」

 呟いたその瞬間。
 目の前で扉に付いた傷はまるで幻であるかのように消えていく。

「なっ……このっ」

 再度剣に魔力を込め乱打するハークであったが、やはり結果は同じ。
 扉に僅かに傷がついたかと思えば、すぐに修復してしまう。
 これでは、この扉を突破する事は叶わない。
 ならば次善の策に移行するしかない。
 最良なのは転移魔法だが、ハークは転移魔法は使えない。
 だからどうにか脱出できる場所を探して外にこれを伝えなければならない。
 そう、たとえば窓。
 そう考えたハークは……その瞬間、何か違和感のようなものを感じる。
 そう、先程から……城の中が、妙に明るいような。
 たとえるならば、窓から燦々とした光が降り注いでいるような……そんな何か。

「なん……だ、これは……」

 見上げた窓の外。
 そこに広がっていたものは……極彩色の、空間であった。
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