うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ダンジョンスタンピード第二波 宿泊

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おかしな異世界の夢は、続いていた。

偶の連休なんかに惰眠を貪ってたりすると夢の続きを視たりもするが、なんだか今回はやけに長いぞ…。

「オレが男前って…、リディスの方が余程いい男だろう?」
「かぁああッ…!嬉しい事いってくれちゃってまぁ!でも、その顔で言われちゃ嫌味にしか聞こえないぞソルト」

オレの言にリディスはおちゃらけ半分、だが後半はやや真面目な顔で『嫌味な事は言うな』と釘をさしてくる。ふむ、とするとやはりこの異世界と元の世界では、美醜の価値観が違うという事か…。

「だがオレはともかく、顔面傷男や出っ歯チビはどうなんだハイロウ?奴らもいい男か?」

とはいえ余りリディスとばかり話をするのも悪いと思い、今度はハイロウに訊いてみる。

「ん…?まぁ奴らに関してはなんだな。特徴的…いや、個性的なな顔立ちというヤツだ」

あれま?顔面傷男や出っ歯チビは、こちらの世界の価値観でも評価が低い様子。

「ただまぁ、今はあんなだが以前は真面に依頼をこなす真面目な連中だったんだがなぁ…」
(え、そこ掘り返すの…?)

そういって冒険者ギルド事業部部長のハイロウが語り出したのは、彼らの過去。

それによると以前は真面目な冒険者だったが、モンスターに深手を負わされて以来その恐怖が染みついてしまい、討伐関係の依頼が受けられなくなってしまったそうな。

「じゃあ、あの顔の傷はその時の…?」
「そうだ、それ以来性格まで歪んでしまってな。おまえのような新顔がギルドに来ると、今日みたいに絡むようになっちまった。まぁ多少なら浮かれてる新人の教育になるからと、今までは大目にみていたんだが…」

なるほど、人に歴史あり。あの顔面傷男にそんな背景が…。ただまぁ、『そうだったんだぁ』とは思うけど、絡まれる方は普通に迷惑千万だよ。

「ふぅむ、モンスター恐怖症というわけか。でもさ、魔法があるのだから、それで解決すればいいじゃないか?」
「ん、おまえ何を言っている…?」

「だって『口にした言葉が、いろいろと作用する』のだろ?だったら朝晩鏡にでも向かって、『モンスターなんか怖くない!』とでも、自身に言い続ければ効果があるんじゃないか?」
「な、なに…ッ!?」

「それは魔法を自分自身に使うってことか…、ハイロウ!なにかソルトが凄い事を言い出したぞ!」
「ああ、これは盲点だッ!」

え…今までの言霊魔法って、対象を他者に限定してしか使用していなかったの?

『俺なら出来る!』とか『わたしならやれる!』とか自身のマインドに働きかけるのって、自己啓発本には同じようなことが大抵書かれてるんだけど…。

「しかもコレ…『僕は男前だ!』って自分に魔法をかければ、僕も男前になれるってことじゃッ!?」
「おお、それだ!確かに…ッ!!」

なにやらリディスとハイロウの反応をみるに、言霊の魔法を自身に使う事は今までされてなかった模様。まぁ効果の程が凄いから逆に、『下手に弄ると不味いことになる』などと指導されてきたのが定着して、いつしか忘れ去られた技術…ロストマジックとなっていたのかもしれない。

「おいリディス、その皿を俺に貸せ!」
「いや待ってください!僕が先ですって!」

いい歳した男ふたりが取り合うようにして、金属の皿を鏡に自身に魔法をかけようとしている。

ま、オレ的にはふたりとも目の覚めるようなイケメン。もしふたりが渋谷の街でも並んで歩いてたなら、絶対写真を撮られるだろう。

にしても『魔法が発達している代わりに、科学技術が遅れている』というのは異世界モノによくある設定。でもこういった概念についても失念されているのは、ちょいと珍しいかもな。

ともあれこの様子なら、もう衛兵に突き出されるような事はなさそうだ。

…。

眼を覚ますと同時に、身体の節々がひどく痛むのを感じる…。

が、それでも意識を失う前から比べたら大分マシか。視れば大きなベッドの上には3人が戦闘スーツのまま横になっていて、彼女らを守るように御霊たちが見下ろしていた。

「「「………」」」
「おまえたちも本調子じゃないのに、すまないな」


ピクシークイーンたちも、高負荷の生命エナジー吸収に若干参っている。ただ1/4に配分された負荷なのに加え元々モンスターという事もあり、オレよりかなりマシな状態ともいえる。

「ふぅ~…。だが丁度いいとこに、丁度いい場所があって助かった…」

ガポリとマスクを外して見回すと、そこは大きなベッドに洋風な拵えの室内。オレ達が逃げ込んだ場所はキャッスル的な…、街中にあるお城のような外観の建物。

そう、ここは料金によりご休憩やご宿泊の出来る施設で、窓も塞がれているうえ廊下も細く狭い。

故に大きなモンスターは建物内に入って来れず、身を隠し籠城するには持って来いの場所といえた。ちなみにオレにとっては人生初の場所となる。ちくせう、こんな時じゃなければもっと喜べたのに…と言っておこう。

ともあれヨロヨロと起き上がると、まずは一番状態の悪かった瀬来さんの様子を診に行く。

「すぅ…すぅ…」
(ホッ…良かった)

鼻や口元には、拭った血の跡が残っている。が、呼吸が安定していることにひとまず胸を撫で下ろす。生命エナジー過剰摂取のダメージなんて、回復ポーションが効くかも解らないので心配してたんだ。

「……んぅ」
「…すぅ」

うん、瑠羽や仁菜さんも疲れた顔をしているが、寝ているうちに生命エナジーが身体に馴染めば問題はないはず。なにより今は、ゆっくりと身体を休めることが肝要だ。

時間を確認してみると朝の4時、このホテルに入ってからすでに12時間が経過したらしい。ともかく部屋に据え付けの冷蔵庫を開けると、まずは喉の渇きを癒すのに水のペットボトルに口をつけた。

「…ハァ」

冷たい水が喉を流れ落ちていくと、幾分気分が落ち着く。

酷く濃い生命エナジーを浴びたこともある。が、やはり無傷とはいえ、自身を容易く殺せる相手と戦うのは相当神経をすり減らす。だから気を付けていたにも関わらず、こんなに眠ってしまったのだろう。

「ああ。オレはもう大丈夫だから、戻っても良いぞ」

そう御霊たちに声をかけると、ピクシークィーンと塩太郎の姿が光となって溶けてゆき、オレの胸へと戻ってくる。そしてその後を追うようにしてレッドスライムもまた、左の義足へと戻ってきた。

「さて、いったい今はどんな状態に…ファッ!?」


           現在     前回
レベル        19       15 
種族:       人間?
職業:       教師

能力値
筋力:         568      380
体力:         573      375
知力:         603      388
精神力:        612      377 
敏捷性:        546      392 
運:          666      496 
やるせなさ:      282      462

加護:
【塩精霊】奇御霊・【小妖精女王】幸御霊・【赤粘性生物】準奇御霊

技能:
【強酸】2・【俊敏】2・【病耐性】7・【簒奪】・【粘液】7・【空間】6・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【蛆】2・【女】・【格闘】6・【麻痺】4・【跳躍】9・【頑健】8・【魅惑】

称号:
【蟲王】・【ソルトメイト】・【しょっぱい男】・【蟲女王】・【女殺し】・【ムシムシフレンズ】


分配1/4があっても、レベルが4も上がっている!

しかも人間の限界スペックであった筈の能力値500…。その壁をサラッと超えちゃってるジャン!え…嘘、マジで…ていうか種族に『人間?』て、疑問符ついてるんですけど…。そんなにファジーなんステータスって!?

で、新たなスキルの取得はナシ…と。ま、解っちゃいたけどね。いや…、でも良い徴候ではある。

下手に頭打ちを食らうよりも、何処までも成長できるのならそれに越したことはない。ただ『種族:人間?』てトコが気になるところではあるが…。

それでも能力値が未知の600台に突入ですよ奥さん!

『もしやこの先、青天井なのでは…!?』などと期待してしまうのは早計かもしれないが、この分だと1000くらいまでは充分期待できそうな気もする。

そしてさらに大きくその値を落とした『やるせなさ』と、最大値をマークした『運』。

これはあれかね…巨大黒蜘蛛にみんなで力を合わせてトドメを刺すという戦隊ヒーローにありがちなフィニッシュを決めたことで、ボッチ判定が大きくマイナスに振れたのかもしれない。

「それに『運』か、運はこのところずっと良かったモンな…」

巨大赤蠍も巨大黒蜘蛛も、なんだかんだで倒すことが出来た。しかもこちらはほぼ無傷。こんなにラッキーだったのだから、運が上昇するのも納得だ。

そんな事を考えている合間にもペットボトルの水でタオルを濡らし、寝ている3人の顔の汚れを拭ってやる。

これは起きてから3人のレベルやスキルを聞くのが、とても愉しみになったぞ…。
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