うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ダンジョンスタンピード第二波 浴室

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「わたしもコーチに見せたいモノがあるんです」

ひとしきりプレゼントで盛り上がった後、瑠羽がそんなことを言ってきた。

「え、この増加装甲だけでも嬉しいのに、まだ何かあるのかい?」
「えと、外に行かないと見せられないので、わたし達もスーツに着替えますね」

いったいなんだろうと仁菜さんに顔を向けるも、『楽しみにしとき』といった感じで微笑み返された。ふむむ、ともかく彼女らが着替えると言うので、その間にオレは浴室の掃除をすることにした。

うむ、女の子の着替えは時間のかかるものなのだ。

「あらあら悪いわねぇ鳴人さん、そんなことまでさせちゃって」
「ああいえ、大勢でお邪魔させて頂いてるのですからこのくらい」

瑠羽のお母さんが気兼ねして声を掛けてくれるが、浴室の掃除は続行。うん、オレはオタでこんなでも大人であるからして、こうした気遣いくらいはできるのだ。でも気の利いたトークなどで良い関係を築くとかはまるで駄目なので、そこはお掃除でカバーというわけ。

そう、ここでは決して『守ってやってるんだ』などといった横柄な態度をとってはいけない。ナチュラルにヘイトを買ってしまう事の多い嫌われ者のオレとしては、万全を期して瑠羽のご家族から嫌われてしまうような事態は、絶対に避けねばならない。

「むぅ、しかし浴室ってのはどうしてこう汚れやすく作ってあるんだ…?」

糧品宅の浴室は比較的きれいに掃除がされていた。が、それでも扉周りや足元などには水垢がこびりついている。特に掃除のしにくい扉の下のある換気口には、埃の混じった水垢がびっしり。

うむむ、コレって絶対汚れて傷みやすく作ってあるよな?今の日本の工業技術なら、汚れにくい浴室扉なんていくらでも作れるだろうにと思う。

「まぁ上部に換気口をつけると湯気がそのまま洗面所のほうに流れてしまうから下に付ける方が都合がいいのだろうが、でもそれなら掃除しやすいよう取り外せるようにしてくれりゃあいいのに…」

水垢はそれはもうガッチガチに固まっていた。

「フ…だが甘く見るなよ。このオレのスキル【塩】と【強酸】と【粘液】があれば、おまえらなぞは一網打尽だ!それっ!!」
『ズギギギギギィ…!』

まずは岩塩で出来たケレン棒で固まった水垢をこそぎ落とす。

そう、物理的な排除だ。しかしこれには浴室扉を傷めてしまうという危険も伴う。だがしかし、硬さを調整した岩塩のケレン棒なら浴室扉を傷めずに作業を行うことが出来るのだ。

これは例えて浴室扉の硬さが6で水垢の硬さが3としたならば、岩塩ケレン棒の硬さを4とか5にしてやればいい。

「よし、だいぶ落とせたな…。ではお次はコレだ、酸性粘液(アシッドミューカス)!」
『ぬとびゅばぁぁあ!!』

酸性の粘液がベッタリと水垢や石鹸カスを覆い尽くす。さらに時間をおいてやれば、石灰性の水垢や金属化した石鹸カスもへにゃへにゃだ。

『カッシカッシ!ゴシゴシ…!!』

トドメに塩粒をブラシやスポンジにつけて磨いてやれば、水栓金物なんかもピッカピカ。

『(……キラン!)』

「あらあらまぁ!ずいぶん綺麗になったわねぇ~。疲れたでしょう、お茶を淹れたから休憩なさって鳴人さん」
「ああいえ、ありがとうございます」

この程度は朝飯前にも入りませんよ。でもま、ただの風呂掃除にスキル全開は明らかに飽和攻撃だよな。

………。

「(ずずぅ~、はぁ…)」

ああ、労働の後のお茶が美味い。特に綺麗に仕事を成し遂げた後のお茶は最高だ。

「(ぐずっ…、う…うぅ…)」

と、お茶を飲んでいるとなぜか対面に座りお茶を飲んでいた瑠羽のお母さんが突然泣きだしてしまった。

「って…え?瑠羽のおかあさん!?」
「あ…ちがうのごめんなさい、ぐずっ…瑠羽、瑠羽がね…。あんなに内気で臆病だったあの子が…明るく前向きになってくれたことが嬉しくて…」

良かったそっちか。何事かと思ったよ。

「それもこれも鳴人さんのおかげよ…本当にありがとう。これからも瑠羽と仲良くしてあげてくださいね…」
「あ、いえ、こちらこそ」

そこに着替えを終えた瑠羽たちがやってきた。

「コーチ、お待たせしました。あれ、おかあさんどうしたの…?」
「ん…ううん、なんでもないの…。今から出かけるんでしょ?外は危ないから充分気を付けるのよ瑠羽」

「うん。でも今日は万智ちゃんもコーチもいっしょだから、心配しないでおかあさん!」
「ええそうね、ではおねがいします鳴人さん」

「はい、全員しっかりとお守りします」

「ま、私たち4人に歯の立つモンスターなんて、もうこの辺にいないだろうけどねぇ~」
「万智ぃ、出かける前から油断したらあかんやろぉ」

「てへ、ごめ~ん」

「さて、で、どこに行くんだい瑠羽?」
「えと、マンションの周りと、水場になってる遊水道公園にモンスターがいないかパトロールします」


「そうか。よし、では出かけようか」
「ふふ、ひさびさのダンジョンセイバーズ揃い踏みね!腕が鳴るわ!」

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