うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ダンジョンスタンピード第二波 奇病

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「ふしゅぅ~~…」

アーマード蟲王スーツ姿で、難なく並み居るモンスターを蹴散らしたオレ。

まさに無双。こんなスタンピードの最中でも、この余裕。闇落ちし、ダンジョンで荒れ暴れまわっていた日々も、無駄ではなかったということか。

なるほど、これが人間万事塞翁ホースでズキュンドキュンというのだな。


そんな感じでモンスター大軍団との熾烈な戦いを終えスッキリした後は、細い支流を粘液ボートで南下。ここでは極力他者との接触を避け静かに移動。うん、いま自衛隊や警察にあっても面倒なだけだし。



だがそうして都奈美さんの勤めるスーパー銭湯へと到着したのだが、なんでか知らないがスーパー銭湯がフォートレスってな感じでガッチリ要塞化されていた。

(おわ、なんだこりゃ軍事拠点さながらだな…)

スーパー銭湯の周囲は自衛隊車両によって固められ、鉄条網やコンクリブロックでバリケードも構築されている。かつて使ってたオレの簡易防御陣なんて、それこそ目じゃないグレードだ。

「どもぉ、おつかれさまで~す」
「……」

入り口に停まっている装甲車両の上では、機銃に手をおき周囲を警戒している自衛官の姿。そんな彼にひと声挨拶して敷地内へと入る。

ものすごくジロジロ視られたが、特に誰何もされなかった。ふぅ…まぁこの非常時にこんな派手な格好でウロついてるヤツ、ふつう相手したくないよな色んな意味で。

戦闘中は蟲王マスクで戦っていた。が、人のいる場所ではバイクのヘルメットに変更済。また自衛官に撃たれたくないし。

しかしそんな恰好でも、建物内に入れば充分不審者。

そこで下駄箱の並んでいる玄関先で装備を解き、シンプルな蟲王スーツボディだけの状態に。まぁこれでも充分派手っちゃあ派手なんだけど、フル装備のお祭り山車状態よりはマシだろう。


そうして都奈美さんを探して癒し処リーフに向かうと、店内でその姿をすぐに見つけることができた。

「こんにちは、都奈美さん」
「え、江月さん…!?」

声をかけると施術用の丸椅子に座りなにやら作業をしていた都奈美さんが、ハッとした顔で立ち上がり口に手を当てる。

「ほんとに江月さん…。き、きてくれたんですね…」

ん、なんだ?なんだかすごく感激してくれてる。それに今にも泣き出しそうなくらい瞳までウルウルさせて…。

「はい。シャーク…あ、いや、るりくんと会った時に、都奈美さんと連絡がつかないと心配してまして。それで代わりに無事を確認にきたんです」
「あ…。そ、そうだったんですか…(しゅん)」

むむ?今度は見るからに落ち込んでしまった。え、オレなにもおかしな事いってないよね??

「おい、おまえダレよ?忙しいのになに利賀センパイと話してんだよ。困ってんだろセンパイが」

するとなにやらインネンめいた声が、背後から聞こえてきた。そこで振り返ると館内着を着て左腕を吊った若者に、なぜだか睨まれている。

「…?」
「やめなさい!江月さんはあなたが入る前にお店を手伝ってくれてた方なのよ!」

あ、いや、手伝ってってほどの事は。むしろ以前の同僚がお店で騒いじゃってすみません。

「どいてっ!そこ、道を空けてくださいッ!!」

だがそんなやりとりを、担架にひとを載せた自衛官の声が遮った。

「おわっと!」
「きゃっ!」

担架が通るのに人が割れる。その際に押されたオレと都奈美さんは同じ側に。

「あ、都奈美さん。なんともないですか?」
「え、あ、はい。ありがとうございます」

「(あ、…くそぉ!)」

さらにぶつかられた弾みでよろけた都奈美さんを支えるため、抱くような格好になってしまった。すると反対側にばらけた都奈美さんの後輩らしい若い男の子が、明らかに苛立つような声をあげているのが聞こえた。

(なんだ…?また随分とムッ!?)

「都奈美さん、気をつけて!モンスターの気配だ!」
「エッ!?こ、この館内にですか??」

ずっとモンスターと戦い続けたオレ。そうそうモンスターの気配を読み違えることはない。小さいが、コレは確かにモンスターの気配だ。

「ぶひゃひゃひゃ!ごぇッごぇッごぇッごぇッ…!!」

すると担架で運ばれてきた人から、なんとも不気味な笑い声が聞こえてきた。

「くぅッ、んんぅ~~…ッ!」

だか、おかしい。

運ばれてきたのは女性で、いまも苦痛に顔を歪めて苦しんでいる。だからこれは、彼女の声ではない。ではいったいどこからこのおかしな笑い声が…??

「なんじゃこの変な音は…?おい、この患者はいったいどうした?」

警戒しつつ見ていると、白髪眼鏡の医師が患者を運んできた自衛官に事情を訊いている。

「は…それが、我々ではなんとも判断がつきません…。なのでこちらで診て頂けないかと…」
「うぬ?なんじゃ煮え切らん奴め。どれ、診察するから患者を見せてみろ」

「あ、待ってください!」

あわてて自衛官が止めようとするも、その前に医師が患者に掛けられていた上着を剥がしてしまった。

するとそこには、なんとモンスターがいた。

ただ、いたにはいたが…女性の左肩から胸にかけて、不気味でコブだらけの醜悪な顔が張り付いていたのだった。

「ヒヒィィ!」
「きゃああああ!」
「やだ~!なによアレ…!!」

「「「うわぁぁぁぁあああ~~ッ!!」」」

それを目にした人達が悲鳴をあげその場から逃れようと…く、なんてことだ。館内でパニックが起きてしまった。
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