270 / 660
ダンジョンスタンピード第二波 奇病
しおりを挟む「ふしゅぅ~~…」
アーマード蟲王スーツ姿で、難なく並み居るモンスターを蹴散らしたオレ。
まさに無双。こんなスタンピードの最中でも、この余裕。闇落ちし、ダンジョンで荒れ暴れまわっていた日々も、無駄ではなかったということか。
なるほど、これが人間万事塞翁ホースでズキュンドキュンというのだな。
そんな感じでモンスター大軍団との熾烈な戦いを終えスッキリした後は、細い支流を粘液ボートで南下。ここでは極力他者との接触を避け静かに移動。うん、いま自衛隊や警察にあっても面倒なだけだし。
…
だがそうして都奈美さんの勤めるスーパー銭湯へと到着したのだが、なんでか知らないがスーパー銭湯がフォートレスってな感じでガッチリ要塞化されていた。
(おわ、なんだこりゃ軍事拠点さながらだな…)
スーパー銭湯の周囲は自衛隊車両によって固められ、鉄条網やコンクリブロックでバリケードも構築されている。かつて使ってたオレの簡易防御陣なんて、それこそ目じゃないグレードだ。
「どもぉ、おつかれさまで~す」
「……」
入り口に停まっている装甲車両の上では、機銃に手をおき周囲を警戒している自衛官の姿。そんな彼にひと声挨拶して敷地内へと入る。
ものすごくジロジロ視られたが、特に誰何もされなかった。ふぅ…まぁこの非常時にこんな派手な格好でウロついてるヤツ、ふつう相手したくないよな色んな意味で。
戦闘中は蟲王マスクで戦っていた。が、人のいる場所ではバイクのヘルメットに変更済。また自衛官に撃たれたくないし。
しかしそんな恰好でも、建物内に入れば充分不審者。
そこで下駄箱の並んでいる玄関先で装備を解き、シンプルな蟲王スーツボディだけの状態に。まぁこれでも充分派手っちゃあ派手なんだけど、フル装備のお祭り山車状態よりはマシだろう。
そうして都奈美さんを探して癒し処リーフに向かうと、店内でその姿をすぐに見つけることができた。
「こんにちは、都奈美さん」
「え、江月さん…!?」
声をかけると施術用の丸椅子に座りなにやら作業をしていた都奈美さんが、ハッとした顔で立ち上がり口に手を当てる。
「ほんとに江月さん…。き、きてくれたんですね…」
ん、なんだ?なんだかすごく感激してくれてる。それに今にも泣き出しそうなくらい瞳までウルウルさせて…。
「はい。シャーク…あ、いや、るりくんと会った時に、都奈美さんと連絡がつかないと心配してまして。それで代わりに無事を確認にきたんです」
「あ…。そ、そうだったんですか…(しゅん)」
むむ?今度は見るからに落ち込んでしまった。え、オレなにもおかしな事いってないよね??
「おい、おまえダレよ?忙しいのになに利賀センパイと話してんだよ。困ってんだろセンパイが」
するとなにやらインネンめいた声が、背後から聞こえてきた。そこで振り返ると館内着を着て左腕を吊った若者に、なぜだか睨まれている。
「…?」
「やめなさい!江月さんはあなたが入る前にお店を手伝ってくれてた方なのよ!」
あ、いや、手伝ってってほどの事は。むしろ以前の同僚がお店で騒いじゃってすみません。
「どいてっ!そこ、道を空けてくださいッ!!」
だがそんなやりとりを、担架にひとを載せた自衛官の声が遮った。
「おわっと!」
「きゃっ!」
担架が通るのに人が割れる。その際に押されたオレと都奈美さんは同じ側に。
「あ、都奈美さん。なんともないですか?」
「え、あ、はい。ありがとうございます」
「(あ、…くそぉ!)」
さらにぶつかられた弾みでよろけた都奈美さんを支えるため、抱くような格好になってしまった。すると反対側にばらけた都奈美さんの後輩らしい若い男の子が、明らかに苛立つような声をあげているのが聞こえた。
(なんだ…?また随分とムッ!?)
「都奈美さん、気をつけて!モンスターの気配だ!」
「エッ!?こ、この館内にですか??」
ずっとモンスターと戦い続けたオレ。そうそうモンスターの気配を読み違えることはない。小さいが、コレは確かにモンスターの気配だ。
「ぶひゃひゃひゃ!ごぇッごぇッごぇッごぇッ…!!」
すると担架で運ばれてきた人から、なんとも不気味な笑い声が聞こえてきた。
「くぅッ、んんぅ~~…ッ!」
だか、おかしい。
運ばれてきたのは女性で、いまも苦痛に顔を歪めて苦しんでいる。だからこれは、彼女の声ではない。ではいったいどこからこのおかしな笑い声が…??
「なんじゃこの変な音は…?おい、この患者はいったいどうした?」
警戒しつつ見ていると、白髪眼鏡の医師が患者を運んできた自衛官に事情を訊いている。
「は…それが、我々ではなんとも判断がつきません…。なのでこちらで診て頂けないかと…」
「うぬ?なんじゃ煮え切らん奴め。どれ、診察するから患者を見せてみろ」
「あ、待ってください!」
あわてて自衛官が止めようとするも、その前に医師が患者に掛けられていた上着を剥がしてしまった。
するとそこには、なんとモンスターがいた。
ただ、いたにはいたが…女性の左肩から胸にかけて、不気味でコブだらけの醜悪な顔が張り付いていたのだった。
「ヒヒィィ!」
「きゃああああ!」
「やだ~!なによアレ…!!」
「「「うわぁぁぁぁあああ~~ッ!!」」」
それを目にした人達が悲鳴をあげその場から逃れようと…く、なんてことだ。館内でパニックが起きてしまった。
42
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
