うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ダンジョンが分解を開始している…?ということはあのアブラムシがこのダンジョンのラスボスだったのか??いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

「ふたりとも、走るぞ!」
「え、でも罠は!?」

「ダンジョンの機能が停止してるなら、きっと罠も作動しないはず。それよりもあの消失に巻き込まれる方がマズそうだ!」
「せやね。静かでひとつの音もせんけど、なんやスゴイ不気味やわ…」

光の粒となって消えてしまった壁の向こう側は、真っ黒。

ダンジョンの出入り口になっている真っ黒ともよく似ている。が、どこにも繋がってはいないのだろうから、アレに巻き込まれたらどうなってしまうかまったく解らない。

「なら急がないと!私が先を調べてくる。マサル、走るよ!」

そう言うやいなや瀬来さんはマサルの背に飛び乗ると、その肩にビンタをくれた。

「ブッフフンッ!」

「ちょ!瀬来さん!」
「キャア!」

するとムチではなくビンタをくれられたマサルは前傾カンガルーダッシュで跳ね、危うくオレと仁菜さんを弾き飛ばしそうに。しかし辛うじて躱すと、瀬来さんを背に乗せたままビャンビャン加速し飛び出していってしまった。

「もぉ、あの子は無茶するんやから…」
「だいじょうぶ仁菜さん?」

「うん、平気や。それよりウチらも急がんと」
「そうだな」

…。

そうして長い通路を走り、オレと仁菜さんが辿り着いたのはまだ明るい状態のちいさな部屋。円錐状で、部屋の中央に置かれている2つのモノの前にマサルと瀬来さんの姿があった。

「万智、いきなり走り出したら危ないやろ」
「ゴメン。でもそれより、コレみてよ…」


そう瀬来さんが指差した先には、大きな木箱と小さな宝箱が離れた状態でおいてあった。

「右に木箱で、左に宝箱?」
「ここは宝の間、ちゅうことなんやろか…」

円錐状の部屋にはそれ以外に何もなく、強いて不審な点をあげるとするならば「すこしだけ部屋の中央より手前にズレてるな」といったところだけ。

「ねぇ江月さん。コレ、どっちか選べってことじゃないかな?」
「たしかに。モノの配置的にそんな意図を感じるな」

「ほんなら、どっちを選ぶかやね。でもグズグズしとると消えるんに追いつかれてまうよ?」
「ふぅむ…大きな木箱に小さな宝箱か。どうも舌切り雀みたいだな」

「なら小さい方を選んだらええやん」
「え~ッ!ぜったいコッチの大きい方だよ!」

だがここで瀬来さんがまさかの大きい方をチョイス。

「なんで大きい方やの万智…」
「だって小さい宝箱になんかじゃ武器なんて入ってないでしょ?でもコッチの大きな木箱なら、スゴイ武器や鎧が入ってそうだもん!」

う~む、たしかに大きな木箱の方は、人の背丈ほどもあるサイズ。

大型冷蔵庫でも入ってそうな大きさをしている。その一方で小さな冷蔵庫、じゃなかった宝箱の方はホントに小さい。なんか会社でたくさんのハンコをしまっておくのに使ってた、金属の収納箱を思い出させるようなサイズ感だ。

「そんなんわからんやないの。それより小さい方には、小さくてもダイヤとか高価な宝石がつまっとるかもしれんよ?それを売って良い武器買ったって、同じやないの」
「詐欺が横行してるのに、まともに魔法のついた良い武器なんて手に入る訳ないじゃない。それにもし売ってたとしても、きっとトンデモナイ額よ。ならこういうチャンスは、ぜったいモノにしておくべきよ!」

む、なんだ?ふたりの意見が真っ向から割れてしまったぞ。

「ねぇ、コォチはどう思う??」
「ねぇ、江月さんはどう思う??」

で、そのタイミングでオレに振るのッ!?

「うむむ…。オレにはどっちも一理あるし、どっちの可能性もあると思う。ならふたりでジャンケンか、いっそマサルにでも決めてもらったらどうだ?」

多数決によるオレの一票で決まってしまうというのは、絶対にNO。

オレ達は超絶妙のバランスで保たれている人間関係かつ恋愛関係なのだからして、どちらかの味方をしてそれを崩してしまうような真似は決してしてはいけない。

「江月さんがそう言うならいいわ。シズ、じゃあじゃんけんで決めましょ!」
「ええよ。心理戦に強いウチにじゃんけんで勝てたなら、褒めてやるわ」

「それじゃ時間もないし一発勝負ね!せ~の、アッ!!」
「えッ!?」

と、ふたりがジャンケンで勝負をつけようとしたその瞬間、ウロついていたマサルが木箱に抱きついてしまった。おうふ、そういえばカンガルーって、サンドバックとか抱きつきやすいモノが好きなんだっけ…。参ったなおい。
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