【完結】あなたの瞳に映るのは

今川みらい

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16(アイラスside)

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ジェミリオン王国に向けて出発する日の朝、ライオネル王国軍が進軍を開始したとの報告を受けた。

「問題ない。ここからの距離だと奴らが王都に入る前に阻止出来る。ライオネル軍が通過すると予測した村の住民達の避難は終えているのだろう?」

俺の言葉に報告へ来た団長補佐のクロードは頷いた。

「ならば予定通りジェミリオン王国側の兵はアストレア城を守れと伝えろ。ライオネル王国軍は我々で殲滅する」

「団長……新人騎士だけでは危険です。国王陛下には悟られぬよう秘密裏に先鋭騎士達を集めております。どうか一緒にお連れ──痛っ」

言葉の途中だったがクロードの頭を掌で思い切り叩いた。

「馬鹿にするな。守って貰うほど俺は弱くない」

「それは良く分かってますよ!でも、もし貴方に何かあったら……」

叩かれた頭を押さえながら、涙目でクロードが言った。

「そうなったらお前が代わりに団長を務めるだけだ。そのための団長補佐だろう。めそめそするな」

「いや、この涙は貴方に叩かれたからで……」

「それより留守を頼んだぞ。俺に何かあった時は直ぐ屋敷まで伝えてくれ」

「了解しました。団長。どうかご武運を」

そう言ってクロードは俺に向かって見事な敬礼をした。
俺は小さく頷くと新人騎士らを率いてジェミリオン王国へ向け出発した。





王都周辺でライオネル王国軍と戦闘になったゼスティリア王立騎士団は、予想通りの苦戦を強いられていた。

「敵兵が圧倒的多数の為、我々新人騎士だけでは太刀打ち出来ません!ジェミリオン王国側に協力を求めましょう」

酷く焦燥した様子の新人騎士が、後方で指揮をとっていた自分の元に報告に来た。

「それは無理だ。不測の事態に備え、アストレア城の守りを弛める事は出来ない」

「そんな……新人騎士だけではここは突破されてしまいます!」

「泣き言を言うな。お前にはゼスティリア王立騎士団としての矜持がないのか。新人かベテランかどうかはこの際関係ない」

やはり新人騎士は心が弱い。
戦場の過酷な環境下では、直ぐに心が折れてしまう。

ここは団長ある自分が前線に出て、騎士達を奮い立たせなければならなかった。

「お前ら良く聞け!王都の住民達のほとんどはまだここに留まっている。それは大陸最強と言われる我がゼスティリア王立騎士団が、ここを必ず守ってくれると信じているからだ。その住民達の信頼をお前達は裏切るのか!」

俺は馬で前線へ駆けながら声を張り上げた。

「ここから先の王都には、何人たりとも通すな!大陸最強を誇るゼスティリア王立騎士団に敗北は許されない。新人だからと弱音を吐いている暇があれば、一人でも多く敵を倒せ!」
     
自分の言葉に賛同するように、周りから新人騎士たちの咆哮が一斉に上がった。
その奮起した様子に安堵したのも束の間、今度は敵兵が自分に群がって来た。

「指揮官が前線に出るなど愚かな奴よ!」

ライオネル王国軍の兵士達が一斉に斬りかかってくる。

『貴方の強みはその卓越した攻撃の速さです。その速さをさらに極めれば、もう誰も貴方には敵わない。最強の剣士となるでしょう』

自分に剣術を指南してくれたシリルの言葉を、そんな時ふと思い出した。

現役時代のシリルは『戦場の悪魔』と恐れられる程、圧倒的な強さとパワーを持っていた。
そんな人に指南して貰っていた俺は、力でこそシリルに遠く及ばなかったが、攻撃の速さでは負けた事がなかった。

そんな確固たる自信があったからこそ、俺は前線に出てきたのだ。
素早く剣を抜くと、閃光のような早さで向かって来る敵兵を次々に斬り裂いた。






「ライオネル王国軍はほぼ壊滅しました。残存している兵士達も次々と投降しています。我々の勝利は確定したかと」

戦闘が落ちつき、救護にまわっていた自分に隊長を務める騎士が報告してきた。

周囲を見渡せば、ライオネル兵の屍で辺り一面埋め尽くされていた。

「良く戦ってくれた。後の負傷者の救護はお前に任せる」

「了解しました。団長は大丈夫ですか?」

「ああ。これは全て返り血だ」

臙脂色の騎士服全体が返り血によってどす黒く染まっていた。

一体何人の敵兵の血を浴びたのだろう。
さすがに疲労で身体が鉛のように重かった。

「やった!俺達新人騎士だけでライオネル王国軍を倒したぞ!」

勝利を確信した新人騎士達の歓喜の叫びがあちらこちらで響いていた。

「つい先ほどまでは弱音を吐いていたくせに。調子の良い奴らだ」

「仕方ないですよ。自分達にとっては、これが初陣だったんですから」

新人騎士らの浮かれた姿に、呆れ返っていた俺を諫めるように隊長の騎士が言った。

「それもそうだな。初陣ながら本当に良く戦ってくれた。皆を誇りに思う」

圧倒的に不利な状況下でも、自分を信頼してついてきてくれた仲間達に深謝した。

「この場はお前に任せて、俺はアストレア城へ戦況報告に──」

その時、ジェミリオン王国側の兵士が切羽詰まった様子で馬を飛ばして来るのが見えた。

「ご報告申し上げます!アストレア城北方よりライオネル王国軍が襲来。現在、アストレア城前にて激しい戦闘になっております!」

アストレア城の北方は標高の高い山々に囲まれており、ライオネル王国軍がそこを越えて来ることはないだろうと判断したのが甘かった。
敵は本隊を囮に使い、守りが手薄な北側から支隊を送り込み奇襲を仕掛けて来たのだ。

「敵の本隊は既に倒している。アストレア城を攻めて来たのは支隊に過ぎない。我々が加勢をすればすぐに倒せる」

ジェミリオン王国の兵士にそう伝えると、部下に直ぐ騎士達を集めるよう指示を出した。

「動ける奴を全て集めてアストレア城へ加勢に向かえ。俺は先に行く」

馬に飛び乗るとアストレア城へ急いだ。

ティアラのために、ここでレオンハルトを失う訳にはいかなかった。

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