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私はジェミリオン王国のダグラス伯爵家の長女として産まれた。
実母は私を産んだすぐ後に亡くなった。
元々病弱な人で、出産に耐えられる身体ではなかったのだ。
だから私は母の顔を知らない。
義母曰く、黒髪黒目で私そっくりの地味な容姿の人だったらしい。
そして母が亡くなって半年も経たないうちに、父は義母と再婚した。
その時既に義母のお腹にはローズがいたらしい。
父にとって母は所詮政略結婚の相手であり、愛情の欠片もなかったのだろう。
父が再婚してから、ダグラス伯爵家に私の居場所はなくなった。
下級貴族出身の義母は、侯爵家出身だった亡き母に酷く嫉妬しており、その娘である私にもいつも辛く当たっていた。
「うす気味悪い真っ黒な瞳でこっちを見ないで!本当にあの女にそっくりだね。忌々しい」
吐き捨てるように言うと、ティーカップに入った熱い紅茶を顔にかけられた。
義妹のローズは、そんな私を同情するでもなく、義母と一緒になって私を虐めては可笑しそうにケラケラと笑っていた。
この伯爵家に安住の地は無いのだと悟った私は、物心つく頃には早くも自分の人生に絶望していた。
そんな時、とても美しい女性が伯爵家に訪ねて来た。
「会いに来るのが遅くなってごめんなさい」
一人庭園で遊んでいた私をその人がぎゅっと抱き締めてくれた。
ふんわりと柔らかく温かい身体に包まれて、私はこの時初めて人の温もりを知った。
「私は貴女の亡きお母様の親友のシャーロットよ。この子は息子のレオンハルト。どうぞよろしくね」
シャーロット様の隣には、自分より少し年上くらいの男の子がいた。
レオンハルトと呼ばれたその子は、光輝く銀髪に澄んだ空色の瞳をしていた。
「これからは困った事があったらすぐ私に伝えるのよ。分かった?」
シャーロット様の言葉に、私はうつ向いたまま頷いた。
母は自らの身体が出産に耐えられないと悟った時、誰よりも信頼していたシャーロット様に私の事を託したようだ。
「レオンハルト。私はティアラのご両親とお話があるからここで待っていて」
シャーロット様の言葉に彼は少し戸惑った様子を見せながらも頷いた。
そばにいるレオンハルト様は幼いながらも母親譲りの綺麗な顔立ちをしており、醜いと言われて育った自分は居たたまれない気持ちになり、ずっと下を向いて黙っていた。
「何故そんな薄汚れた格好をしているの?君は伯爵家の長女なんでしょう?」
彼の言葉に悪意はなく、素朴な疑問を口にしただけだった。
「洋服、これしか持ってないから」
たとえ衣服がどんなに汚れていようとも、誰も洗ってはくれない。
私を少しでも助けたら、義母がその人を厳しく罰していたから。
「そうなんだ……ところで、どうして君はさっきからずっと下を向いているの?」
「私の瞳は闇のように真っ黒で不気味だから……」
「そうなの?見せて」
純粋な彼の好奇心の言葉に負け、私は諦めて顔を上げた。
「真っ黒じゃないよ」
まじまじと自分の瞳を覗き込んでいた彼が不意に言った。
「え……?」
「陽が当たって虹色に光ってる。黒真珠みたいでとても綺麗だ」
とても綺麗だ──生まれて初めて褒められた私はポカンと口を開けた。
「綺麗……?私が?気味が悪くないの?」
「気味が悪いなんて一体誰が言ったの?君は綺麗だよ。だから下を向かないで」
その言葉が私の暗かった心に光を差した。
お前の瞳は不気味で気持ち悪いと言われて育った自分に、レオンハルト様は前を向く自信を与えてくれた。
そんな彼に心を奪われない筈もなく。
その出会い以降、レオンハルト様達の来訪を心待ちにしていた。
実はこの国の王妃殿下であったシャーロット様の強力な後ろ楯を得た私は、ダグラス伯爵家での待遇も一気に改善した。
義母からの嫌がらせや、使用人達から放置される事もなくなり、やっと平穏な日常が訪れたのだった。
実母は私を産んだすぐ後に亡くなった。
元々病弱な人で、出産に耐えられる身体ではなかったのだ。
だから私は母の顔を知らない。
義母曰く、黒髪黒目で私そっくりの地味な容姿の人だったらしい。
そして母が亡くなって半年も経たないうちに、父は義母と再婚した。
その時既に義母のお腹にはローズがいたらしい。
父にとって母は所詮政略結婚の相手であり、愛情の欠片もなかったのだろう。
父が再婚してから、ダグラス伯爵家に私の居場所はなくなった。
下級貴族出身の義母は、侯爵家出身だった亡き母に酷く嫉妬しており、その娘である私にもいつも辛く当たっていた。
「うす気味悪い真っ黒な瞳でこっちを見ないで!本当にあの女にそっくりだね。忌々しい」
吐き捨てるように言うと、ティーカップに入った熱い紅茶を顔にかけられた。
義妹のローズは、そんな私を同情するでもなく、義母と一緒になって私を虐めては可笑しそうにケラケラと笑っていた。
この伯爵家に安住の地は無いのだと悟った私は、物心つく頃には早くも自分の人生に絶望していた。
そんな時、とても美しい女性が伯爵家に訪ねて来た。
「会いに来るのが遅くなってごめんなさい」
一人庭園で遊んでいた私をその人がぎゅっと抱き締めてくれた。
ふんわりと柔らかく温かい身体に包まれて、私はこの時初めて人の温もりを知った。
「私は貴女の亡きお母様の親友のシャーロットよ。この子は息子のレオンハルト。どうぞよろしくね」
シャーロット様の隣には、自分より少し年上くらいの男の子がいた。
レオンハルトと呼ばれたその子は、光輝く銀髪に澄んだ空色の瞳をしていた。
「これからは困った事があったらすぐ私に伝えるのよ。分かった?」
シャーロット様の言葉に、私はうつ向いたまま頷いた。
母は自らの身体が出産に耐えられないと悟った時、誰よりも信頼していたシャーロット様に私の事を託したようだ。
「レオンハルト。私はティアラのご両親とお話があるからここで待っていて」
シャーロット様の言葉に彼は少し戸惑った様子を見せながらも頷いた。
そばにいるレオンハルト様は幼いながらも母親譲りの綺麗な顔立ちをしており、醜いと言われて育った自分は居たたまれない気持ちになり、ずっと下を向いて黙っていた。
「何故そんな薄汚れた格好をしているの?君は伯爵家の長女なんでしょう?」
彼の言葉に悪意はなく、素朴な疑問を口にしただけだった。
「洋服、これしか持ってないから」
たとえ衣服がどんなに汚れていようとも、誰も洗ってはくれない。
私を少しでも助けたら、義母がその人を厳しく罰していたから。
「そうなんだ……ところで、どうして君はさっきからずっと下を向いているの?」
「私の瞳は闇のように真っ黒で不気味だから……」
「そうなの?見せて」
純粋な彼の好奇心の言葉に負け、私は諦めて顔を上げた。
「真っ黒じゃないよ」
まじまじと自分の瞳を覗き込んでいた彼が不意に言った。
「え……?」
「陽が当たって虹色に光ってる。黒真珠みたいでとても綺麗だ」
とても綺麗だ──生まれて初めて褒められた私はポカンと口を開けた。
「綺麗……?私が?気味が悪くないの?」
「気味が悪いなんて一体誰が言ったの?君は綺麗だよ。だから下を向かないで」
その言葉が私の暗かった心に光を差した。
お前の瞳は不気味で気持ち悪いと言われて育った自分に、レオンハルト様は前を向く自信を与えてくれた。
そんな彼に心を奪われない筈もなく。
その出会い以降、レオンハルト様達の来訪を心待ちにしていた。
実はこの国の王妃殿下であったシャーロット様の強力な後ろ楯を得た私は、ダグラス伯爵家での待遇も一気に改善した。
義母からの嫌がらせや、使用人達から放置される事もなくなり、やっと平穏な日常が訪れたのだった。
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