エセ陰陽師と猫又の不自由気ままな散歩旅~飼い猫から魂を分けてもらったので、二度目の人生はウチの子と異世界を謳歌してみせる~

虎柄トラ

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第一章 ティタニアル大陸編 アライア連邦国

第6話 あれが冒険者の町ソレイユ

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 翌朝、目を覚ますと胸元で眠っていたはずのもふもふの姿が消えていた。

 僕はすぐさま起き上がり「凛太郎!」と愛猫の名を叫ぶと、近くの草花がその声に応答するように不自然に揺れた。
 しばらくすると、そこから凛太郎が身体を左右に揺らしながら出てきた。

「朝っぱらから騒がしいの、廻。どうしたのじゃ?」

「起きたら凛太郎がいなかったから、なにかあったのかと思ってさ……」

 僕がそう返すと、凛太郎は一笑したのち垂直に飛び上がり僕の頬を肉球で叩いてきた。

「そんなことでどうするのじゃ。廻よ、しゃきっとするのじゃ!」

 凛太郎としては僕に活を入れるつもりで行ったのだろうが、僕からしてみればただのご褒美でしかない。
 ふにっとした柔らかい感触に昇天しそうになったけど、凛太郎の想いは多少なりとも心に響いた。

 僕は身なりを整えると、通り道まで戻りソレイユを目指して歩き始めた。

 早朝にも関わらず何度か通行人とすれ違うことがあった。冒険者の町と呼ばれるだけのことはあり、東側から来る人々は全員が何かしらの武装をしていた。
 僕の目には武器を持って堂々と歩いている彼らの姿が不自然に映った。向こうからしてみれば、手ぶらで堂々と歩いていた僕の方が不自然に見えたことだろう。



 最後の通行人とすれ違ってから一時間が経過した頃、レンガを幾重にも重ねた強固な防壁に囲まれた町が見えてきた。

「あれが冒険者の町ソレイユ?」

「そうみたいじゃな、グラハムたちの村よりも幾分か頑丈につくられておるの。この世界の魔物がとの程度かは知らぬが、この町のつくりは……」

「町がどうしたって?」

「何でもないのじゃ。さあ廻よ、町に向かうぞ!」

 それから二十分ほど歩き、ソレイユにたどり着いた。内外に通じる門は開かれていて、その左右にはそれぞれ門番が一人ずつ立っていた。
 門番の装備品は道中に出会った戦士っぽい冒険者によく似ていた。剣を腰に携えて盾を背負い西洋風の甲冑を身にまとっていた。もう片方は防具は一緒で武器だけが異なり、剣の代わりに槍を背負っていた。

 通行人から聞いた話では、このまま門を通り抜けてもいいらしいのだが、あの威圧感を無視して通過できるほど、僕の心臓は強くない。町を守護する門番に任命されるだけのことはある。行き交った冒険者とは比べ物にならない。たたずまい一つとってもただ者じゃない雰囲気を感じる。

 どうせ無視して通過できないのであれば、冒険者ギルドの場所でも訊いてみるとしよう。
 
 門前で二人の顔を見比べながら、どちらに話しかけるべきかで悩んでいると、向こうの方から僕に話しかけてきた。

「先ほどから止まっておいでですか、何かお困りごとですか?」

「……あっ、すいません。初めて来たのですが、冒険者ギルドにはどう行けばいいでしょうか?」

「冒険者になりに来たのですね。冒険者ギルドにはこの門を抜けて真っすぐ進んでいただいて、四つ目の十字路を左に曲がると、一件だけ木造の建物が見えてくると思います。その建物が冒険者ギルドとなっています。一目見ればすぐにここだとわかると思いますよ」

 門番は物腰丁寧にジェスチャーまで交えて、冒険者ギルドまでの道筋を教えてくれた。

「わかりました。ご親切にありがとうございました」

「いえいえ、冒険者になるということは私の後輩になるということですし、親切にするのは当たり前のことなのですよ? 頑張ってくださいね」

 先輩冒険者に見送られながら町に入り、僕は教えてもらった順序通りに進んで行った。

 冒険者の町ソレイユはドーナッツ型の構造をしていた。内周部にも外周部と同じように防壁があり、中心部に向かうためには、また門を通過しなければならなかった。門はそれぞれ東西南北に各一対ずつあって、どこからでも町に入ることが可能となっていた。
 外側は商業地区となっていて、各商人がそれぞれ商売に励んでいた。また町民以外が寝泊りする宿屋もここに建っていることもあって、町の中で一番にぎわっている場所だ。
 内側は居住地区となっていて、町民はここで土地や家を購入して暮らしている。町民以外でも町の実力者から認められれば、土地等を購入して町民として暮らすこともできる。
 中心部は管理地区となっていて、その名の通り町を管理するための頭脳が集まった地区。冒険者ギルドもまたこの場所に建っていた。

 レンガ造りの古風な街並みに合わない建物が確かにそこにはあった。
 彼の言うとおり一目見ればすぐにこれだと理解できた。逆にここ以外の選択肢は浮かんでこなかった。

「……ここっぽい。ここしか考えられない」

 僕は二階建ての木造家屋を見上げながらそう言うと、隣を歩いていた凛太郎も「じゃの」と賛同していた。
 冒険者ギルドだけは世界観が異なり、中世ヨーロッパ風ではなくて西部劇風だった。建物の中ではガンマンが瓶ビール片手に、トランプとかで賭け事をしているはずだと、思わせるような外観をしていた。

「行くか……」

「じゃの」

 僕は半円の両扉に手を当て押し開けた――。
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