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第二章 ティタニアル大陸編 クラーク共和国
第52話 僕よりも凄くない……⁉
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そしてその時は訪れた。
馬車は僕の眼前で急停止すると、騎乗したまま御者が見下ろし声をかけてきた。
「その服装……もしかして冒険者のメグル様でしょうか?」
「はい、そうですが……」
こっち側から声をかけずに済んだことに安堵した直後、耳を疑うような言葉を聞くことになる。
「謝礼は弾みます! 彼らを助けてくれませんか‼」
リンの言い回しといい、彼が僕の名前を知っている時点で何となく嫌な予感はしていた。
切羽詰まった声に目は血走り呼吸も荒く、服は汗でぐっしょりに濡れている。相当恐ろしい体験をしたのは間違いないだろう。
馬車で人や物を運搬する場合には安全を考慮して、冒険者を雇って護衛してもらうのが一般的なのに、この馬車はたったの一人も護衛を連れていない。つまりはそういうことらしい。
この焦り方から察するに、時間的猶予もそれほど残っていないっぽい……。
話の続きを知りたくない、聞きたくないけど、見捨てるようなこともしたくない。それにここで彼の願いを聞き届ければ、謝礼に加えて馬車に乗せてもらえるんじゃないか。首都まであとどれくらいかかるか分からないため、少しでも楽ができるのならそれにこしたことはない。
人様の膝の上で我が物顔で座るリンに視線を落とすと、無言のままこちらを見上げ返してきた。
まるで本当の猫のようにあどけない仕草をするだけで、一切口を開こうとしない。
今回は猫の手を借りずに一人で解決してみろってことか……。
「手短に話してもらえますか? 少しでも状況を知っておきたいので」
「……はい、はい! あのですね、魔物が! 彼らが!」
「焦らないで、ゆっくりと、落ち着いて、話して下さい」
「そ、そうですね。すいません……はあ……はあ……」
額を汗を拭う彼に「魔物の情報だけでも大丈夫です」と付け加えて、落ち着くのを待った。
何とか平静を取り戻した彼は残った護衛と襲ってきた魔物について簡潔に話してくれた。それがいま彼が話せる限界だったのかもしれない、話し終えると彼はまた冷や汗を流し身体を震わせていた。
僕はリンを馬車に残して現地に急行した。グラトンが口にした魔物の名が予想以上にヤバいものだったからだ。某騎士が語った二十人は要りますよっていう類の魔物だった。そんな化物にゴールドランクの冒険者三人が相手取って足止めしている。無謀とかいうレベルの話ではない、一刻一秒を争う案件。
魔邪香を焚いているとはいえ襲撃された事実があるいま安心できない。どうせ連れて行っても助けてくれないのなら、ここに置いていった方が役に立つ。
あの馬車には彼以外にもまだ二人乗っていた。一人はゼルという青年で護衛の一人だったが、道中で蚊に刺されたことが原因で病に罹っていた。もう一人はキャナルという少女でグラトンの娘らしい。その子が荷台で寝込んでいるゼルの看病をしていた。
あのガレスですら強張らせたリンの妖力があれば、大抵魔物は寄ってこないはずだ。
それすら効かない魔物が襲ってきたとしても関係ない、リンなら容易く葬ってしまうだろう。
問題なのはそっちよりも僕の方かもしれない。駆けつけたところで、倒せるかどうか怪しい……最悪の場合、僕がおとりなっている隙に彼らには馬車まで逃げてもらうとしよう。そのあとのことは戦いながら考えるか、間に合えばの話だけど……。
三十秒ほど逆走していると、甲高い金属音と悍ましい雄たけびが聞こえ、砂ぼこりを切り裂く閃光からは人影、禍々しい巨影が映った。
「僕よりも凄くない……⁉」
プラチナランクの魔物相手に彼らはたった三人で善戦していた。誰一人地に伏せることもなく、士気も闘志もまだ尽きていない様子だった。
「なんでこんなところにいるんだよ! 反則だろがぁぁぁ!」
「ごちゃごちゃ言っている暇があるんなら、その手に持った斧でさっさとあの尻尾を切り落とせよ!」
「うるせぇよ! できるんならとっととやっとるわ!」
「あーもう! 二人とも口論している場合じゃないでしょ‼」
口喧嘩をする余裕まであるとか、すごい肝が据わっているなこの人たち。その度胸を僕にも少し分けて欲しいぐらいだ。
さて、どうやって戦闘に参加しようか。急に背後から『助けに来た』って、声をかけるのはさすがに違うか。
彼らが戦っている魔物は人の言葉を話す。しかも、意味を理解しているかは不明だが、人の弱みに付け込むような言葉を発し動揺した隙を狙ってくる。
外見的にもあんなのと僕が間違われることはないとは思うけど、状況が状況なだけに万が一という可能性もある。
馬車は僕の眼前で急停止すると、騎乗したまま御者が見下ろし声をかけてきた。
「その服装……もしかして冒険者のメグル様でしょうか?」
「はい、そうですが……」
こっち側から声をかけずに済んだことに安堵した直後、耳を疑うような言葉を聞くことになる。
「謝礼は弾みます! 彼らを助けてくれませんか‼」
リンの言い回しといい、彼が僕の名前を知っている時点で何となく嫌な予感はしていた。
切羽詰まった声に目は血走り呼吸も荒く、服は汗でぐっしょりに濡れている。相当恐ろしい体験をしたのは間違いないだろう。
馬車で人や物を運搬する場合には安全を考慮して、冒険者を雇って護衛してもらうのが一般的なのに、この馬車はたったの一人も護衛を連れていない。つまりはそういうことらしい。
この焦り方から察するに、時間的猶予もそれほど残っていないっぽい……。
話の続きを知りたくない、聞きたくないけど、見捨てるようなこともしたくない。それにここで彼の願いを聞き届ければ、謝礼に加えて馬車に乗せてもらえるんじゃないか。首都まであとどれくらいかかるか分からないため、少しでも楽ができるのならそれにこしたことはない。
人様の膝の上で我が物顔で座るリンに視線を落とすと、無言のままこちらを見上げ返してきた。
まるで本当の猫のようにあどけない仕草をするだけで、一切口を開こうとしない。
今回は猫の手を借りずに一人で解決してみろってことか……。
「手短に話してもらえますか? 少しでも状況を知っておきたいので」
「……はい、はい! あのですね、魔物が! 彼らが!」
「焦らないで、ゆっくりと、落ち着いて、話して下さい」
「そ、そうですね。すいません……はあ……はあ……」
額を汗を拭う彼に「魔物の情報だけでも大丈夫です」と付け加えて、落ち着くのを待った。
何とか平静を取り戻した彼は残った護衛と襲ってきた魔物について簡潔に話してくれた。それがいま彼が話せる限界だったのかもしれない、話し終えると彼はまた冷や汗を流し身体を震わせていた。
僕はリンを馬車に残して現地に急行した。グラトンが口にした魔物の名が予想以上にヤバいものだったからだ。某騎士が語った二十人は要りますよっていう類の魔物だった。そんな化物にゴールドランクの冒険者三人が相手取って足止めしている。無謀とかいうレベルの話ではない、一刻一秒を争う案件。
魔邪香を焚いているとはいえ襲撃された事実があるいま安心できない。どうせ連れて行っても助けてくれないのなら、ここに置いていった方が役に立つ。
あの馬車には彼以外にもまだ二人乗っていた。一人はゼルという青年で護衛の一人だったが、道中で蚊に刺されたことが原因で病に罹っていた。もう一人はキャナルという少女でグラトンの娘らしい。その子が荷台で寝込んでいるゼルの看病をしていた。
あのガレスですら強張らせたリンの妖力があれば、大抵魔物は寄ってこないはずだ。
それすら効かない魔物が襲ってきたとしても関係ない、リンなら容易く葬ってしまうだろう。
問題なのはそっちよりも僕の方かもしれない。駆けつけたところで、倒せるかどうか怪しい……最悪の場合、僕がおとりなっている隙に彼らには馬車まで逃げてもらうとしよう。そのあとのことは戦いながら考えるか、間に合えばの話だけど……。
三十秒ほど逆走していると、甲高い金属音と悍ましい雄たけびが聞こえ、砂ぼこりを切り裂く閃光からは人影、禍々しい巨影が映った。
「僕よりも凄くない……⁉」
プラチナランクの魔物相手に彼らはたった三人で善戦していた。誰一人地に伏せることもなく、士気も闘志もまだ尽きていない様子だった。
「なんでこんなところにいるんだよ! 反則だろがぁぁぁ!」
「ごちゃごちゃ言っている暇があるんなら、その手に持った斧でさっさとあの尻尾を切り落とせよ!」
「うるせぇよ! できるんならとっととやっとるわ!」
「あーもう! 二人とも口論している場合じゃないでしょ‼」
口喧嘩をする余裕まであるとか、すごい肝が据わっているなこの人たち。その度胸を僕にも少し分けて欲しいぐらいだ。
さて、どうやって戦闘に参加しようか。急に背後から『助けに来た』って、声をかけるのはさすがに違うか。
彼らが戦っている魔物は人の言葉を話す。しかも、意味を理解しているかは不明だが、人の弱みに付け込むような言葉を発し動揺した隙を狙ってくる。
外見的にもあんなのと僕が間違われることはないとは思うけど、状況が状況なだけに万が一という可能性もある。
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