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第二章 ティタニアル大陸編 クラーク共和国
第51話 身内と他人とだと心持ちが違うんだよ!
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初回のトロールだけは全力の鬼火で焼き尽くしたが、二体目以降は気づかれる前に逃走した。
マンドラゴラに関しては見つけ次第収穫しまくった。最初の一体目を収穫した時は疲れていたこともあって、あの大根がマンドラゴラとは微塵も思わず、その大根の葉を無造作に掴んで引っこ抜いてしまった。
「ギヤアアアアァァァァ‼」
耳をつんざく音で僕はこれがマンドラゴラだと気づいた。聞いてしまってからだともう手遅れ。ここで僕の旅も終わりかと思い目を閉じて、その時を待った……が、一向にその時は訪れなかった。
恐る恐る目を開けて自分の体調を確認してみたが、耳鳴りが少しあるだけで他は至って普通で特に死にそうな気配もなかった。
マンドラゴラが放つ死に際の叫びは、リンが最も得意とする呪いの類だったらしい。つまり、狩衣を着ている僕には五月蠅いだけの奇声でしかなかった。
リンは最初から気づいていたようで、僕のことを心配するどころか器用に前足で自分の両耳を塞いでいた。だとしても、少しぐらいは心配する素振りはしてくれてもいいのでは……。
一度体験してしまえばもう怖いことはない。
鼓膜には多少なりともダメージはあったが、お金に目がくらんでいた僕にとってはただの必要経費。
それはそうと今になって思い返してみると、国境町に行く途中にいたバジリスクって、まさかこの森出身か? もしそうなら、どうやって国境を越えたんだ? フォルス大森林を囲むような柵はないにしろ、検問所や町があるのだから、巨大なトカゲが歩いていれば誰かしら気づくはずだ。
アライア連邦国方面からだとしても、プラチナランクの魔物があんな場所に出現すること自体おかしい。あの時はそれどころじゃなかったから深く考えなかったけど、どちらに転んだとしても不自然すぎる。
あのワイバーンのように赤い宝石をはめた首輪といった装飾品もつけていなかった。
特殊個体かとも思ったけど、騎士たちの反応を見るに通常個体だったっぽいし……仕方がなかったとはいえ、やはり灰になるまで燃やしたのは失敗だったか? 鱗とか欠片一つでも残っていれば、何かしらの情報が手に入ったかもしれない。
相談相手が夢の中にいる時や暇を持て余している時は、大体こんな感じで一人で整理したり脳内会議をしている。
「二時間これで時間を潰せた。リンは~まだ起きそうにないな。少し歩き疲れてきたし、ちょっと休憩するか」
頭に乗っているお猫様に手を伸ばして抱きかかえると、道端に移動して腰を下ろした。この一か月間誰も通らなかったのだから、道の真ん中で休憩してたとしても迷惑はかからない。そこで眠るわけでもなく、ただの小休止なのだからなおさら気にする必要もないだろう。だけど、僕の性格上端に寄っておかないと気持ちがぐらつくというか、ざわついて落ち着かないのだ。
「……ふむ、やはりウチの子の撫で心地、触り心地は唯一無二。これ以上のものはこの世に存在しない。あーマジで、夢心地だわ」
過度な愛情表現をしなければいくら撫でても起きない。少しでも不快だと感じたら即座に目を覚まして、触れられないように僕から距離をとる。そういった猫っぽい性格や仕草もまたリンの魅力の一つだ。
この起きるか起きないかというギリギリの撫で具合を完全に習得するまで、数年の時間を要した。なんせあの頃はまだリンは正体を隠して猫として生きていたからだ。本人から直接アドバイスをもらえる今なら、もっと早く習得できていた。
「本当に長かったな~、それでもリンは一度も引っ掻くことも噛むこともなかったな~」
古い記憶を懐かしんでいると、ガタン、パカラと聞き覚えのある重なった音と振動が石畳を通じて、僕に何者かが近づいて来ていることを知らせる。
車輪が回る音と蹄鉄が地を踏む音――。
この森に入ってから、ずっと乗らなかったことを後悔し続けていた馬車が、砂ぼこりを上げてこっちに向かっている。
「リリリリ、リン! 起きろリン!」
「うっるさいのー、そんなに慌ててどうしたんじゃメグル?」
「ばばばばば、馬車が! 馬車があぁぁ!」
リンはダルそうに片目だけ開いて、僕が指さす方を見やった。
「馬車がどうしたんじゃ……ほお~、確かにこっちに向かって駆けとるのう。それもなかなかの速度で……ふむ。あの馬車、何やら厄介ごとに巻き込まれておるようじゃの」
「それってどういう意味?」
「我が言う必要もないじゃろ。詳しくはあの者らに尋ねてみよ」
「いきなり一か月ぶりの会話とか難易度高すぎない?」
「何を言っておるんじゃそちは……我といつも話しておるじゃろ」
「身内と他人とだと心持ちが違うんだよ!」
リンは不思議そうに首をひねり『何を言っているんだコイツは?』という顔で、こちらを見ている。
これ以上何か言ったところで、理解してもらえないと悟った僕は馬車の到着を黙って待つことにした。
心の中で何度も人と書きながら……。
マンドラゴラに関しては見つけ次第収穫しまくった。最初の一体目を収穫した時は疲れていたこともあって、あの大根がマンドラゴラとは微塵も思わず、その大根の葉を無造作に掴んで引っこ抜いてしまった。
「ギヤアアアアァァァァ‼」
耳をつんざく音で僕はこれがマンドラゴラだと気づいた。聞いてしまってからだともう手遅れ。ここで僕の旅も終わりかと思い目を閉じて、その時を待った……が、一向にその時は訪れなかった。
恐る恐る目を開けて自分の体調を確認してみたが、耳鳴りが少しあるだけで他は至って普通で特に死にそうな気配もなかった。
マンドラゴラが放つ死に際の叫びは、リンが最も得意とする呪いの類だったらしい。つまり、狩衣を着ている僕には五月蠅いだけの奇声でしかなかった。
リンは最初から気づいていたようで、僕のことを心配するどころか器用に前足で自分の両耳を塞いでいた。だとしても、少しぐらいは心配する素振りはしてくれてもいいのでは……。
一度体験してしまえばもう怖いことはない。
鼓膜には多少なりともダメージはあったが、お金に目がくらんでいた僕にとってはただの必要経費。
それはそうと今になって思い返してみると、国境町に行く途中にいたバジリスクって、まさかこの森出身か? もしそうなら、どうやって国境を越えたんだ? フォルス大森林を囲むような柵はないにしろ、検問所や町があるのだから、巨大なトカゲが歩いていれば誰かしら気づくはずだ。
アライア連邦国方面からだとしても、プラチナランクの魔物があんな場所に出現すること自体おかしい。あの時はそれどころじゃなかったから深く考えなかったけど、どちらに転んだとしても不自然すぎる。
あのワイバーンのように赤い宝石をはめた首輪といった装飾品もつけていなかった。
特殊個体かとも思ったけど、騎士たちの反応を見るに通常個体だったっぽいし……仕方がなかったとはいえ、やはり灰になるまで燃やしたのは失敗だったか? 鱗とか欠片一つでも残っていれば、何かしらの情報が手に入ったかもしれない。
相談相手が夢の中にいる時や暇を持て余している時は、大体こんな感じで一人で整理したり脳内会議をしている。
「二時間これで時間を潰せた。リンは~まだ起きそうにないな。少し歩き疲れてきたし、ちょっと休憩するか」
頭に乗っているお猫様に手を伸ばして抱きかかえると、道端に移動して腰を下ろした。この一か月間誰も通らなかったのだから、道の真ん中で休憩してたとしても迷惑はかからない。そこで眠るわけでもなく、ただの小休止なのだからなおさら気にする必要もないだろう。だけど、僕の性格上端に寄っておかないと気持ちがぐらつくというか、ざわついて落ち着かないのだ。
「……ふむ、やはりウチの子の撫で心地、触り心地は唯一無二。これ以上のものはこの世に存在しない。あーマジで、夢心地だわ」
過度な愛情表現をしなければいくら撫でても起きない。少しでも不快だと感じたら即座に目を覚まして、触れられないように僕から距離をとる。そういった猫っぽい性格や仕草もまたリンの魅力の一つだ。
この起きるか起きないかというギリギリの撫で具合を完全に習得するまで、数年の時間を要した。なんせあの頃はまだリンは正体を隠して猫として生きていたからだ。本人から直接アドバイスをもらえる今なら、もっと早く習得できていた。
「本当に長かったな~、それでもリンは一度も引っ掻くことも噛むこともなかったな~」
古い記憶を懐かしんでいると、ガタン、パカラと聞き覚えのある重なった音と振動が石畳を通じて、僕に何者かが近づいて来ていることを知らせる。
車輪が回る音と蹄鉄が地を踏む音――。
この森に入ってから、ずっと乗らなかったことを後悔し続けていた馬車が、砂ぼこりを上げてこっちに向かっている。
「リリリリ、リン! 起きろリン!」
「うっるさいのー、そんなに慌ててどうしたんじゃメグル?」
「ばばばばば、馬車が! 馬車があぁぁ!」
リンはダルそうに片目だけ開いて、僕が指さす方を見やった。
「馬車がどうしたんじゃ……ほお~、確かにこっちに向かって駆けとるのう。それもなかなかの速度で……ふむ。あの馬車、何やら厄介ごとに巻き込まれておるようじゃの」
「それってどういう意味?」
「我が言う必要もないじゃろ。詳しくはあの者らに尋ねてみよ」
「いきなり一か月ぶりの会話とか難易度高すぎない?」
「何を言っておるんじゃそちは……我といつも話しておるじゃろ」
「身内と他人とだと心持ちが違うんだよ!」
リンは不思議そうに首をひねり『何を言っているんだコイツは?』という顔で、こちらを見ている。
これ以上何か言ったところで、理解してもらえないと悟った僕は馬車の到着を黙って待つことにした。
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