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42-1 既視起床
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「……デジャブかな?」
それが寝起き一番に俺が口にした言葉だった。
酷似した状態で目を覚ませばそうぼやきたくもなる。
もちろん前回とは違う点もある。煌びやかシャンデリアを見ても眩しいと感じないし、ペットボトルのキャップも普通に開けられる。前者はともかく、後者は確実にあのお粥の治癒効果によるものだろう。どれくらい気を失ったのかは不明だが、やはり量に応じて効果も向上するという仮説は強ち間違いではなさそうだ。
あとはベッド関連だろうか。汗でべとべとになっていたはずのベッドもふかふかで最高の寝心地だった。起床して気絶するまでの間、ざっと計算して30分弱。そのわずかな時間で、寝具一式をクリーニングしてベッドメイキングまで済ませる。その見事な手腕からして部屋を清掃してくれたのはミーナで間違いないだろう。というか、この男爵屋敷において俺以外に、そんなことができるのは彼女しかいない。
「……そういやミーナとまだ会っていないな。まだ学園から帰って来てない感じか……学園? あーそうだよ、学園だよ! あれからどうなったのか、まだ訊いてないじゃんか俺!! そうと決まれば、学園に行かないと……いや待てよ。いま何時だ? そもそも今日って平日?」
ベッドから降りて自室を見て回るが、時計らしきものが見当たらない。俺の記憶が正しければ、この部屋には壁掛け時計と置き時計が、各一個ずつあったはずなのだが影も形もない。体内時計で現時刻だけでも探ろうとしたが、どういうわけか全く掴めない。正確な時刻とか以前に大まかな時間すらも掴めない。完全に体内時計が狂って使い物にならなくなっている。
(体内時計に頼るのは無理そうだ。となれば、こっちで判断するしかねぇか……)
窓から外の景色を覗き見る。
日が傾いて青色から橙色へと移り変わろうとしている。午後3時から4時の間といったところか。ひとまずおおよそではあるけど、時間を知ることはできた。
「……まだまだ本調子と呼ぶには、ほど遠いな。そらそうか、シャワー浴びてお粥食って寝ただけで元通りって、最上位治療薬かよって話になるな」
最上位治療薬――どんな重症患者だろうが飲んで一晩ぐっすり寝れば完治する最高峰のポーション。その分、お値段もお高めとなっている。王侯貴族ですら易々と飲用できない代物だ。
今日が平日だというなら莉緒が男爵屋敷に居るのはおかしい。もしかしたら俺のために休んでくれた可能性はある。だが、ミーナがそんな単独行動を許すはずがない。休業日に変更してでも生徒会長が我先にと介抱するに決まっている。となると、今日は休日ということになるが、そうだとしたらなぜ一度も顔を見せない。俺が目覚めたことを知れば、秒で駆けつけてくるはずなのに、その影も見えないし気配も感じない。
「運動がてら探索でもするか……」
ふらりふらりと歩きながら軽く屋敷全体を見て回ることにした。莉緒やミーナの部屋をノックしてみたけど反応はなく、2階では特に目ぼしい成果は得られなかった。
粗方確認終えたところで次に1階へと向かう。手すりを頼りに階段を下っていると、誰かの話し声が聞こえた。
『……って……ないの……』
『……じゃな……うる……』
1階に近づくにつれて、その話し声もまた次第に大きくなっていく。
階段を下り終えた俺は、隣接するリビングをチラ見してみたがそこには誰もいなかった。
「なんだテレビの音だったか……」
昼間によくやっているワイドショー番組が流れていた。八つ当たり気味にリモコンを拾い電源ボタンを押し込む。役目を終えたリモコンをソファーに投げ捨て部屋を出る。
別段、リモコンもあの番組も俺に何かしたということはないが、期待を裏切られた感じがしてイラっとした。莉緒やミーナがそこにいると勝手に思い込んだくせに、何とも図々しいことだと自嘲してしまう。
ただ電気やテレビが点いていたということは、莉緒がこの離れにいるのは明白。あんなズボラな性格の持ち主だが、テレビとかは必ず消してから外出する。絶対に点けっぱなしで出歩くことはない。
そんな折、また話し声が聞こえてきた。2階は各部屋にテレビが設置されているが、1階にはリビングにしかない。なので、今度こそ莉緒達で合っているはずだ。
耳を澄まして、どこから聞こえてくるのか目星をつける。
『…………たの!……』
『……せい……言うの!……』
声主達は客室にいるようだ。
聞き覚えのある声色。ただどうも語彙がキツイ。どうやら莉緒とミーナが言い争っているようだ。ただそれよりも俺が驚いたのは、ドアが閉まっているにもかかわらず声が漏れていたことだ。
それが寝起き一番に俺が口にした言葉だった。
酷似した状態で目を覚ませばそうぼやきたくもなる。
もちろん前回とは違う点もある。煌びやかシャンデリアを見ても眩しいと感じないし、ペットボトルのキャップも普通に開けられる。前者はともかく、後者は確実にあのお粥の治癒効果によるものだろう。どれくらい気を失ったのかは不明だが、やはり量に応じて効果も向上するという仮説は強ち間違いではなさそうだ。
あとはベッド関連だろうか。汗でべとべとになっていたはずのベッドもふかふかで最高の寝心地だった。起床して気絶するまでの間、ざっと計算して30分弱。そのわずかな時間で、寝具一式をクリーニングしてベッドメイキングまで済ませる。その見事な手腕からして部屋を清掃してくれたのはミーナで間違いないだろう。というか、この男爵屋敷において俺以外に、そんなことができるのは彼女しかいない。
「……そういやミーナとまだ会っていないな。まだ学園から帰って来てない感じか……学園? あーそうだよ、学園だよ! あれからどうなったのか、まだ訊いてないじゃんか俺!! そうと決まれば、学園に行かないと……いや待てよ。いま何時だ? そもそも今日って平日?」
ベッドから降りて自室を見て回るが、時計らしきものが見当たらない。俺の記憶が正しければ、この部屋には壁掛け時計と置き時計が、各一個ずつあったはずなのだが影も形もない。体内時計で現時刻だけでも探ろうとしたが、どういうわけか全く掴めない。正確な時刻とか以前に大まかな時間すらも掴めない。完全に体内時計が狂って使い物にならなくなっている。
(体内時計に頼るのは無理そうだ。となれば、こっちで判断するしかねぇか……)
窓から外の景色を覗き見る。
日が傾いて青色から橙色へと移り変わろうとしている。午後3時から4時の間といったところか。ひとまずおおよそではあるけど、時間を知ることはできた。
「……まだまだ本調子と呼ぶには、ほど遠いな。そらそうか、シャワー浴びてお粥食って寝ただけで元通りって、最上位治療薬かよって話になるな」
最上位治療薬――どんな重症患者だろうが飲んで一晩ぐっすり寝れば完治する最高峰のポーション。その分、お値段もお高めとなっている。王侯貴族ですら易々と飲用できない代物だ。
今日が平日だというなら莉緒が男爵屋敷に居るのはおかしい。もしかしたら俺のために休んでくれた可能性はある。だが、ミーナがそんな単独行動を許すはずがない。休業日に変更してでも生徒会長が我先にと介抱するに決まっている。となると、今日は休日ということになるが、そうだとしたらなぜ一度も顔を見せない。俺が目覚めたことを知れば、秒で駆けつけてくるはずなのに、その影も見えないし気配も感じない。
「運動がてら探索でもするか……」
ふらりふらりと歩きながら軽く屋敷全体を見て回ることにした。莉緒やミーナの部屋をノックしてみたけど反応はなく、2階では特に目ぼしい成果は得られなかった。
粗方確認終えたところで次に1階へと向かう。手すりを頼りに階段を下っていると、誰かの話し声が聞こえた。
『……って……ないの……』
『……じゃな……うる……』
1階に近づくにつれて、その話し声もまた次第に大きくなっていく。
階段を下り終えた俺は、隣接するリビングをチラ見してみたがそこには誰もいなかった。
「なんだテレビの音だったか……」
昼間によくやっているワイドショー番組が流れていた。八つ当たり気味にリモコンを拾い電源ボタンを押し込む。役目を終えたリモコンをソファーに投げ捨て部屋を出る。
別段、リモコンもあの番組も俺に何かしたということはないが、期待を裏切られた感じがしてイラっとした。莉緒やミーナがそこにいると勝手に思い込んだくせに、何とも図々しいことだと自嘲してしまう。
ただ電気やテレビが点いていたということは、莉緒がこの離れにいるのは明白。あんなズボラな性格の持ち主だが、テレビとかは必ず消してから外出する。絶対に点けっぱなしで出歩くことはない。
そんな折、また話し声が聞こえてきた。2階は各部屋にテレビが設置されているが、1階にはリビングにしかない。なので、今度こそ莉緒達で合っているはずだ。
耳を澄まして、どこから聞こえてくるのか目星をつける。
『…………たの!……』
『……せい……言うの!……』
声主達は客室にいるようだ。
聞き覚えのある声色。ただどうも語彙がキツイ。どうやら莉緒とミーナが言い争っているようだ。ただそれよりも俺が驚いたのは、ドアが閉まっているにもかかわらず声が漏れていたことだ。
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