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第6話 不思議な少年
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その後、少年は昨日生き倒れていたのがウソのように、私が用意した朝ご飯を次から次へと平らげていった。お昼ご飯も兼ねて大量に作ったスープは、彼の連続おかわりによって鍋を逆さまにしても一滴も落ちることなく、見事に食べ尽くされた。
食後の紅茶を振舞うと少年は「ありがとうございます」と、会釈をしてカップに口をつけていた。
「おなかも膨れたことだし、あなたがこの森に来た理由でも、そろそろ教えてもらえないかしら? 無理強いはしないから、話したいことだけ話してみなさい。まあ一応念のために言っておくけど、私はあなたの命の恩人だと言うことを理解した上で、話すことを忘れないようにね?」
私は少年に圧を与えるようにあえて声のトーンを低くして問いかけた。
相手と交渉する時は、常に先手で高圧的に行うようにする。これこそがヴィヴィアン姉さんから教わった交渉術。あと言質を取るために手帳も用意しておいた。これもヴィヴィアン姉さんの教えの一つ。
使い方って……これで合っているのかしら。教えてもらっただけで一回も使ったことないのよね。
少年はカップをテーブルに置くと、言葉に詰まることもなく流暢に話し始めた。
それはもう本当にとめどなく続き、こっちがもう分かったから止めてと言うまで終わらなかった。
なんかもう途中全く関係ないような話が混ざっていた気もするし、いま私が正しく理解できていると自信をもって言えるのは、彼がここに来た理由ぐらいかもしれない。残りはおいおい整理していこう、情報量が多すぎて処理しきれない。思っていたのと違う使い方だったけど、手帳を用意しておいて正解だったわ、これがなかったらもう理解するの諦めていたもの……。
それとこの交渉術は効果が強すぎるようなので、安易に使わないと心の中でひっそりと誓った。
私の対面に座っている子供はニール・フェクシオン、年齢は八歳で貴族の嫡男だそうだ。天窓からの日差しを浴びて、煌めく金髪に浅緑の瞳をした利発な少年。
その少年がこの樹海に足を踏み入れた理由……それは、私に会いに来たというものだった。正確に言えば、樹海の魔女が本当に存在するのかを確かめたかったらしい。
私はいま目の前にいるのがその会いに来た魔女だと伝えると、ニールは目を点にして固まってしまった。期待していた以上の面白い反応につい笑みをこぼしてしまった。
他にも魔女はいるのになぜ私を選んだのか聞くと、ニールはここが一番王都から近いという至ってシンプルな答えが返ってきた。子供の足ではここ以外に選択肢はないかもしれない、砂漠に沼地に海原……確かにここが一番無難かもしれないけど、実際に行動に起こす人間がいることに驚いた。
屈強な騎士ですら裸足で逃げ出すような恐ろしい森を、こんな子供がたった一人で挑んだ。しかも、途中で力尽きたとはいえ……私の家まであと一歩のところまでたどり着いた。ただ変な自信がつかないように、勇気と無謀は違うと諭しておいた。
私はその石像のように動かなくなったニールに、これからの予定について取り決めることにした。
「それで、このあとの予定なんだけど……あなたはどうしたい? 私の意見よりもまずはあなたの考えを教えてほしい」
「はい……はい、ぼくとしてはできればもう少しここに滞在させていただければと思っています。体調は特に問題がないのですが、体力面がまだ心もとないといいますか……」
「あなたがそれでいいのなら、私は別に構わないわよ。だけど、あなたが王都から飛び出して今日で一週間は経っているわよね? 親御さんのことは大丈夫なの? それにあなたがいなくなったことで、従者や侍女に迷惑がかかっている可能性もあるわよね? そっちは別に気にしなくてもいいの?」
「ぐっ……さすが樹海の魔女……痛いところを突いてきますね。確かにぼくもそのことは気になっています。でも、またこの森を抜けて王都に戻るとなると、心身ともに完全回復して挑まないとまたどっかで生き倒れてしまいます。そのことを鑑みても、ぼくはここにいるべきだと思うのです!」
この子供は私を褒めているのか貶しているのか……そして、なぜこの子供は私の顔をじっと見つめて、私の手を両手で覆って握ってくるのか? ほんとどういうことなの⁉
私はニールの言動に戸惑いつつも、その問題も解決できる最適案があるのを思い出し即座に提言した。このままニールを居座らせてはいけない……そんな予感がしたのだ。こういう時はその直感を信じるのが魔女の流儀。
「え~っと、そこで全てを問題を解決する策があります。あなたを森の外まで連れて行ってあげるから、大人しく私についてきなさい! あと反論は許しません……以上。さあ行くわよ!」
私は口を歪めて何か言おうとしたニールに先手を打って封じ込めた。
食後の紅茶を振舞うと少年は「ありがとうございます」と、会釈をしてカップに口をつけていた。
「おなかも膨れたことだし、あなたがこの森に来た理由でも、そろそろ教えてもらえないかしら? 無理強いはしないから、話したいことだけ話してみなさい。まあ一応念のために言っておくけど、私はあなたの命の恩人だと言うことを理解した上で、話すことを忘れないようにね?」
私は少年に圧を与えるようにあえて声のトーンを低くして問いかけた。
相手と交渉する時は、常に先手で高圧的に行うようにする。これこそがヴィヴィアン姉さんから教わった交渉術。あと言質を取るために手帳も用意しておいた。これもヴィヴィアン姉さんの教えの一つ。
使い方って……これで合っているのかしら。教えてもらっただけで一回も使ったことないのよね。
少年はカップをテーブルに置くと、言葉に詰まることもなく流暢に話し始めた。
それはもう本当にとめどなく続き、こっちがもう分かったから止めてと言うまで終わらなかった。
なんかもう途中全く関係ないような話が混ざっていた気もするし、いま私が正しく理解できていると自信をもって言えるのは、彼がここに来た理由ぐらいかもしれない。残りはおいおい整理していこう、情報量が多すぎて処理しきれない。思っていたのと違う使い方だったけど、手帳を用意しておいて正解だったわ、これがなかったらもう理解するの諦めていたもの……。
それとこの交渉術は効果が強すぎるようなので、安易に使わないと心の中でひっそりと誓った。
私の対面に座っている子供はニール・フェクシオン、年齢は八歳で貴族の嫡男だそうだ。天窓からの日差しを浴びて、煌めく金髪に浅緑の瞳をした利発な少年。
その少年がこの樹海に足を踏み入れた理由……それは、私に会いに来たというものだった。正確に言えば、樹海の魔女が本当に存在するのかを確かめたかったらしい。
私はいま目の前にいるのがその会いに来た魔女だと伝えると、ニールは目を点にして固まってしまった。期待していた以上の面白い反応につい笑みをこぼしてしまった。
他にも魔女はいるのになぜ私を選んだのか聞くと、ニールはここが一番王都から近いという至ってシンプルな答えが返ってきた。子供の足ではここ以外に選択肢はないかもしれない、砂漠に沼地に海原……確かにここが一番無難かもしれないけど、実際に行動に起こす人間がいることに驚いた。
屈強な騎士ですら裸足で逃げ出すような恐ろしい森を、こんな子供がたった一人で挑んだ。しかも、途中で力尽きたとはいえ……私の家まであと一歩のところまでたどり着いた。ただ変な自信がつかないように、勇気と無謀は違うと諭しておいた。
私はその石像のように動かなくなったニールに、これからの予定について取り決めることにした。
「それで、このあとの予定なんだけど……あなたはどうしたい? 私の意見よりもまずはあなたの考えを教えてほしい」
「はい……はい、ぼくとしてはできればもう少しここに滞在させていただければと思っています。体調は特に問題がないのですが、体力面がまだ心もとないといいますか……」
「あなたがそれでいいのなら、私は別に構わないわよ。だけど、あなたが王都から飛び出して今日で一週間は経っているわよね? 親御さんのことは大丈夫なの? それにあなたがいなくなったことで、従者や侍女に迷惑がかかっている可能性もあるわよね? そっちは別に気にしなくてもいいの?」
「ぐっ……さすが樹海の魔女……痛いところを突いてきますね。確かにぼくもそのことは気になっています。でも、またこの森を抜けて王都に戻るとなると、心身ともに完全回復して挑まないとまたどっかで生き倒れてしまいます。そのことを鑑みても、ぼくはここにいるべきだと思うのです!」
この子供は私を褒めているのか貶しているのか……そして、なぜこの子供は私の顔をじっと見つめて、私の手を両手で覆って握ってくるのか? ほんとどういうことなの⁉
私はニールの言動に戸惑いつつも、その問題も解決できる最適案があるのを思い出し即座に提言した。このままニールを居座らせてはいけない……そんな予感がしたのだ。こういう時はその直感を信じるのが魔女の流儀。
「え~っと、そこで全てを問題を解決する策があります。あなたを森の外まで連れて行ってあげるから、大人しく私についてきなさい! あと反論は許しません……以上。さあ行くわよ!」
私は口を歪めて何か言おうとしたニールに先手を打って封じ込めた。
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