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第23話 修道院長レヴェッタ
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私は神業によって出現したミルクティーを味わいながら、先生の言葉に耳を傾けた。
「法律が廃止されたことで私たちを取り巻く環境は一夜にして一変した。それはアリシャも知っていますよね? その王命によって、教会にいた私たちは自由の身になりました。が……ずっと孤島で何百年と世界から隔離されて生きてきた。そんな行き場のない私たちに王太子が用意してくれた居場所……それがこの新しい教会というわけです。自分の道を進みたい子たちはここから離れて、アリシャのようにそれぞれ自分の夢に向かってまい進しています。とは言いましても、知識が圧倒的に不足しているので、あの子たちも定期的に勉強しに戻ってきますけどね。ここは実家であり学校……孤島の時とあまり変わりませんね。あとアリシャのことだから、ここの設備とか電力とかどうなっているのか気になっているかと思いますが、これらは全て王太子の資金提供によって賄っています。電力は各発電に加えて、新たに太陽光発電も試験的に導入しています。さすがはカサンドラといったところでしょうか、いまのところ不具合は発生していません。孤島の教会についてですが、あちらは取り壊すことはなく、歴史的建造物として残すらしいです。入場料や見学料を徴収するとのことなので、そこで得た資金もまた私たちの収益になる予定です。だからといって、私たちも施しを受けるだけではないのですよ? その収益を王都の子供たちに還元しています。私たちの勉強も兼ねて勉強会を開いて子供たちに教えたり、忙しい親御さんに代わって子供の面倒を見たりしています。たまに言いがかりをつけてくる方もいらっしゃいますが、その場合は丁重にお引き取りいただいてますし――」
先生はまだ何か話してくれていたけど、私の意識はそこで途絶えてしまった。
きっと先生は私の考えなどお見通しのはず、一度たりとも私は先生を出し抜けたことがない。教会から逃げた時だって、先生は知っててあえて私を見逃した。私たち修道女が自ら選んだ道を阻むようなことはしない。辛い目に遭ってほしくないからと鳥籠で一生飼い慣らすようなことはせず、辛くなったら帰ってきなさいと両手を広げて待ち続ける慈母のような人だ。
何があっても笑顔を崩さず優しく語りかける。私たちの育ての親と呼べる存在。
先生は全てを見通す心眼も持ち合わせているので、あの姉さんたちですら……口でも拳でも一度も勝てたことがない。
彼女の眼が開眼した暁には、世界は終焉を迎えると伝えられている。
この世界で唯一魔女の上位に位置する存在……それが修道院長レヴェッタ、その人である。
「はっ⁉ なんか夢の中でマイク片手に先生のことを解説していた気がする……って、ここはどこ?」
夢から覚めた私の視界には見覚えのない天井が広がっていた。
私はベッドに寝転がったまま首だけ左右に動かして部屋を見回したことで、自分がどこにいるのか思い出した。レンガ造りの壁に数多くの家電製品……どうやら私は話の途中で睡魔に襲われて、まんまと敗北したようだ。
彼以外の人間と会話したり、メモ片手に王都を移動したりと、慣れないことをしたことによる気疲れ。その精神状態からのミルクティーによる安堵感、リラックス効果は絶大だった。
眠れないときは、毎回先生がミルクティーを淹れてくれて私が寝静まるまで隣にいてくれた。そんな懐かしい記憶がフラッシュバックした。
やっぱレヴェッタ先生には勝てないな……はぁ~なつかし、ちょっとしんみりしちゃったわ……。
私はベッドから降りてコートスタンドに掛かった三角帽子を手に取り、姿鏡の前まで移動すると身なりを整えていった。ここが我が家であれば全く気にしないのだけど、さすがに寝起き姿のままで先生の前に出るわけにはいかない。
教会にいた頃を思い出すわ。修道服や頭巾をちょっと着崩しただけで、顔面めがけて右ストレートが飛んできた。寸止めで顔に当たったことはなかったけど、あの拳圧を浴びるたびに冷や汗が止まらなかった。いま思い返すと、私はなんで怒られるのが分かっていてあんな幼稚なことをしてたんだろう……。
私は姿鏡を見ながら「うん……バッチリ」と発し最終チェックを済ませると、部屋をあとにした。
「法律が廃止されたことで私たちを取り巻く環境は一夜にして一変した。それはアリシャも知っていますよね? その王命によって、教会にいた私たちは自由の身になりました。が……ずっと孤島で何百年と世界から隔離されて生きてきた。そんな行き場のない私たちに王太子が用意してくれた居場所……それがこの新しい教会というわけです。自分の道を進みたい子たちはここから離れて、アリシャのようにそれぞれ自分の夢に向かってまい進しています。とは言いましても、知識が圧倒的に不足しているので、あの子たちも定期的に勉強しに戻ってきますけどね。ここは実家であり学校……孤島の時とあまり変わりませんね。あとアリシャのことだから、ここの設備とか電力とかどうなっているのか気になっているかと思いますが、これらは全て王太子の資金提供によって賄っています。電力は各発電に加えて、新たに太陽光発電も試験的に導入しています。さすがはカサンドラといったところでしょうか、いまのところ不具合は発生していません。孤島の教会についてですが、あちらは取り壊すことはなく、歴史的建造物として残すらしいです。入場料や見学料を徴収するとのことなので、そこで得た資金もまた私たちの収益になる予定です。だからといって、私たちも施しを受けるだけではないのですよ? その収益を王都の子供たちに還元しています。私たちの勉強も兼ねて勉強会を開いて子供たちに教えたり、忙しい親御さんに代わって子供の面倒を見たりしています。たまに言いがかりをつけてくる方もいらっしゃいますが、その場合は丁重にお引き取りいただいてますし――」
先生はまだ何か話してくれていたけど、私の意識はそこで途絶えてしまった。
きっと先生は私の考えなどお見通しのはず、一度たりとも私は先生を出し抜けたことがない。教会から逃げた時だって、先生は知っててあえて私を見逃した。私たち修道女が自ら選んだ道を阻むようなことはしない。辛い目に遭ってほしくないからと鳥籠で一生飼い慣らすようなことはせず、辛くなったら帰ってきなさいと両手を広げて待ち続ける慈母のような人だ。
何があっても笑顔を崩さず優しく語りかける。私たちの育ての親と呼べる存在。
先生は全てを見通す心眼も持ち合わせているので、あの姉さんたちですら……口でも拳でも一度も勝てたことがない。
彼女の眼が開眼した暁には、世界は終焉を迎えると伝えられている。
この世界で唯一魔女の上位に位置する存在……それが修道院長レヴェッタ、その人である。
「はっ⁉ なんか夢の中でマイク片手に先生のことを解説していた気がする……って、ここはどこ?」
夢から覚めた私の視界には見覚えのない天井が広がっていた。
私はベッドに寝転がったまま首だけ左右に動かして部屋を見回したことで、自分がどこにいるのか思い出した。レンガ造りの壁に数多くの家電製品……どうやら私は話の途中で睡魔に襲われて、まんまと敗北したようだ。
彼以外の人間と会話したり、メモ片手に王都を移動したりと、慣れないことをしたことによる気疲れ。その精神状態からのミルクティーによる安堵感、リラックス効果は絶大だった。
眠れないときは、毎回先生がミルクティーを淹れてくれて私が寝静まるまで隣にいてくれた。そんな懐かしい記憶がフラッシュバックした。
やっぱレヴェッタ先生には勝てないな……はぁ~なつかし、ちょっとしんみりしちゃったわ……。
私はベッドから降りてコートスタンドに掛かった三角帽子を手に取り、姿鏡の前まで移動すると身なりを整えていった。ここが我が家であれば全く気にしないのだけど、さすがに寝起き姿のままで先生の前に出るわけにはいかない。
教会にいた頃を思い出すわ。修道服や頭巾をちょっと着崩しただけで、顔面めがけて右ストレートが飛んできた。寸止めで顔に当たったことはなかったけど、あの拳圧を浴びるたびに冷や汗が止まらなかった。いま思い返すと、私はなんで怒られるのが分かっていてあんな幼稚なことをしてたんだろう……。
私は姿鏡を見ながら「うん……バッチリ」と発し最終チェックを済ませると、部屋をあとにした。
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