農家は万能!?いえいえ。ただの器用貧乏です!

鈴浦春凪

文字の大きさ
114 / 403
第3章  進窟

第19話  改築

しおりを挟む
 ダンジョン都市ノルトライブのほど近くに広がる森。その奥深くでツンツクは旅立ち前の修行に明け暮れていた。

 修行の当初はツンツクがピッピのスピードを合わせて前を飛び、ツンツクの飛行技術を真似させる。

 林の中の木やツタをものともせずにバレルロールや直角飛行。

 垂直上昇に直降下などあらゆる技術を練習させた。

 今は仕上げの時期だ。

「いいか! せがれ。あっしらブリリ-ジャ同士の雄の対決は正面からのガチンコでぇ。ケツを追いかけまわすような真似をすんなよ」

 風颶鳥は自分たちの同族を自らの光沢のある羽を誇りとして、ブリリ-ジャと名乗る。古い言葉で光輝く鳥を意味する。

「うん! ととさま」

「相手の手数を上回る攻撃で完封しろ。お前ならそれが出来る」

 風颶鳥同士の決闘は風魔法を相殺し合い自分の攻撃を相手に近づければ勝ちとなる。

(ダンナに愛称付けてもらったおかげで、あっしのガキの時分よりずいぶんスピードが速ぇからな。去年巣立ったせがれたちも、ダンナにずいぶん格上げしてもらったもんだ)

 あと数日で旅立つ我が子に旅の教訓を伝える。

「同族以外にケンカを売られたら、なんでもありだ。スピードを生かして死角を利用して倒しちめぇ。なにしろブリリージャはスピード特化の紙装甲だからな」

 風颶鳥はスピード1点強化の尖った種族だ。

 もっとも体の周りには絶えず風の障壁を張りあらゆる物理を滑るように躱す事ができる。

 その当たらない技術に優れているため、紙装甲でも関係がないのだ。

 それゆえに空の覇者と呼ばれ広い視野と超反射で自分の体より大きい獣すら圧倒する。

「黒い狼に会っちまったら逃げるのを優先すんだぜぇ」

「あのととさまが勝てなかった黒いトラ柄の狼のこと?」

「あぁ。負けもしなかったが、向こうの攻撃はこっちに当たらねぇし、こっちの攻撃は当たるが決め手にかけてなぁ。千日手ってやつになっちまぁ」

「ぼくがととさまの仇をとる!」

「おうっ! 期待して待ってるぜぇ。だが、無理せず逃げるってぇのも勇気ってもんよ。覚えておけ。それより、3年たったら西の霊峰へ向かって里の若いのとガチンコで良いとこ見せて嫁取りだ。それまで飛び方と戦い方を精進するんだぞ」

「う~ん? 嫁とか要らないから気分がのったらでいい?」

「いいぞと言いてぇところだが、ダメだ。あっしらの一族は数を増やさなければならねぇ。理由は教えたな?」

「うん。信念のために初代が里の掟を破って追放された誇り高き一族ってことだよね」

「そうだ。その初代は神から啓示を受けた。『世代を重ねた遥か先に一族に安住の地が用意される。その地を得るには試練に打ち勝たなければならない。そのために力を蓄えよ』お前も子をなして、数を増やさなければならねぇ。ブリリ-ジャは3回しか子育てが出来ない。あっしにとってお前らが最後の子だ」

 生態系の頂点にいるからこその制限だ。古き盟約による拘束が風颶鳥にも課せられている。

「は~い。いい子がいたら考えるよ。そういえば実家にいたお兄ちゃんも一族なんでしょ?」

「そうだ。あいつも同胞はらからだ。今は土地神様の聖域を見守ってもらっている」

(神様を3柱も身にまとう、ダンナだ。あっしらの世代が当たりかもしれねぇ。その為にもせがれに頑張ってもらわねぇと)

「親父にはやく孫を見せてくれよ!」

「う~ん? 前向きに検討します?」

 ツンツクはノアが良く使う口癖を真似する子を見て、ダンナも育て親の一人だなと苦笑いする。

 ――旅立ちの日は近い。





 テーブルも椅子もないレンガ作りの家に帰って来た。

 モルトは木にロープを吊るして作ってやったブランコを楽しんでる。

 これ――普通の人が見たらホラーな光景だよな。

 モルトは普通の人には見えない。

 風もないのに勝手に揺れるブランコ……キャァ――。

 ――この家に人呼べないな……呼ぶつもりもないけど。

 飯はささっと食べられるカツサンドで済ませる。

 それじゃあ楽しい魔改造の時間だね! 地下はとりあえず保留だ。

 玄関入ると60畳ほどの広間があり、右手にキッチンがついている。

 左の壁の中央より少し奥に横向きに据えられた暖炉があった。
 
 玄関からみて正面に扉があり10畳ほどの主寝室。

 その隣がトイレでその隣に8畳ほどの客間。

 玄関入って右手に地下への階段がある。

 一人で住むには十分な広さだ。

 早速だが解体開始。王都で鍛えた解体技術をいかんなく発揮する。

 魔法で切り込みを入れてキッチンをアイテムボックスへ収納。

 そしてキッチン裏の棚も同じく収納。

 寝室にあたる10畳部屋の壁も切り取りまた収納。
 
 それから8畳の壁も切り取り収納。

 トイレも収納してあっという間に広々とした家になった。

 魔法って便利だね!

 外の箱モノはレンガで出来ていて、家の中の壁は木が主材料だ。

 家は当然靴を脱いで過ごすから土足厳禁だ。

 玄関入ってリビング丸見えはシャイな日本人にはつらい。

 ブラインドも兼ねてウォークインシューズクロークを備え付ける。

 こんな日を夢見て作っておいた空間拡張の効果の付いた特別な魔道具だ。

 まぁ。靴は2足しか持っていないが。

 奥行き1.5mの幅3m強の外見は3畳の大きさだが、中には10畳ほどのスペースが備えられている。ちょっとした荷物は置いておけるね。

 全部アイテムボックスに入るけど。。。

 それじゃぁ。先に箱を完成させるか。
しおりを挟む
感想 331

あなたにおすすめの小説

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...