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第3章 進窟
第19話 改築
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ダンジョン都市ノルトライブのほど近くに広がる森。その奥深くでツンツクは旅立ち前の修行に明け暮れていた。
修行の当初はツンツクがピッピのスピードを合わせて前を飛び、ツンツクの飛行技術を真似させる。
林の中の木やツタをものともせずにバレルロールや直角飛行。
垂直上昇に直降下などあらゆる技術を練習させた。
今は仕上げの時期だ。
「いいか! せがれ。あっしらブリリ-ジャ同士の雄の対決は正面からのガチンコでぇ。尻を追いかけまわすような真似をすんなよ」
風颶鳥は自分たちの同族を自らの光沢のある羽を誇りとして、ブリリ-ジャと名乗る。古い言葉で光輝く鳥を意味する。
「うん! ととさま」
「相手の手数を上回る攻撃で完封しろ。お前ならそれが出来る」
風颶鳥同士の決闘は風魔法を相殺し合い自分の攻撃を相手に近づければ勝ちとなる。
(ダンナに愛称付けてもらったおかげで、あっしのガキの時分よりずいぶんスピードが速ぇからな。去年巣立ったせがれたちも、ダンナにずいぶん格上げしてもらったもんだ)
あと数日で旅立つ我が子に旅の教訓を伝える。
「同族以外にケンカを売られたら、なんでもありだ。スピードを生かして死角を利用して倒しちめぇ。なにしろブリリージャはスピード特化の紙装甲だからな」
風颶鳥はスピード1点強化の尖った種族だ。
もっとも体の周りには絶えず風の障壁を張りあらゆる物理を滑るように躱す事ができる。
その当たらない技術に優れているため、紙装甲でも関係がないのだ。
それゆえに空の覇者と呼ばれ広い視野と超反射で自分の体より大きい獣すら圧倒する。
「黒い狼に会っちまったら逃げるのを優先すんだぜぇ」
「あのととさまが勝てなかった黒いトラ柄の狼のこと?」
「あぁ。負けもしなかったが、向こうの攻撃はこっちに当たらねぇし、こっちの攻撃は当たるが決め手にかけてなぁ。千日手ってやつになっちまぁ」
「ぼくがととさまの仇をとる!」
「おうっ! 期待して待ってるぜぇ。だが、無理せず逃げるってぇのも勇気ってもんよ。覚えておけ。それより、3年たったら西の霊峰へ向かって里の若いのとガチンコで良いとこ見せて嫁取りだ。それまで飛び方と戦い方を精進するんだぞ」
「う~ん? 嫁とか要らないから気分がのったらでいい?」
「いいぞと言いてぇところだが、ダメだ。あっしらの一族は数を増やさなければならねぇ。理由は教えたな?」
「うん。信念のために初代が里の掟を破って追放された誇り高き一族ってことだよね」
「そうだ。その初代は神から啓示を受けた。『世代を重ねた遥か先に一族に安住の地が用意される。その地を得るには試練に打ち勝たなければならない。そのために力を蓄えよ』お前も子をなして、数を増やさなければならねぇ。ブリリ-ジャは3回しか子育てが出来ない。あっしにとってお前らが最後の子だ」
生態系の頂点にいるからこその制限だ。古き盟約による拘束が風颶鳥にも課せられている。
「は~い。いい子がいたら考えるよ。そういえば実家にいたお兄ちゃんも一族なんでしょ?」
「そうだ。あいつも同胞だ。今は土地神様の聖域を見守ってもらっている」
(神様を3柱も身にまとう、ダンナだ。あっしらの世代が当たりかもしれねぇ。その為にもせがれに頑張ってもらわねぇと)
「親父にはやく孫を見せてくれよ!」
「う~ん? 前向きに検討します?」
ツンツクはノアが良く使う口癖を真似する子を見て、ダンナも育て親の一人だなと苦笑いする。
――旅立ちの日は近い。
◇
テーブルも椅子もないレンガ作りの家に帰って来た。
モルトは木にロープを吊るして作ってやったブランコを楽しんでる。
これ――普通の人が見たらホラーな光景だよな。
モルトは普通の人には見えない。
風もないのに勝手に揺れるブランコ……キャァ――。
――この家に人呼べないな……呼ぶつもりもないけど。
飯はささっと食べられるカツサンドで済ませる。
それじゃあ楽しい魔改造の時間だね! 地下はとりあえず保留だ。
玄関入ると60畳ほどの広間があり、右手にキッチンがついている。
左の壁の中央より少し奥に横向きに据えられた暖炉があった。
玄関からみて正面に扉があり10畳ほどの主寝室。
その隣がトイレでその隣に8畳ほどの客間。
玄関入って右手に地下への階段がある。
一人で住むには十分な広さだ。
早速だが解体開始。王都で鍛えた解体技術をいかんなく発揮する。
魔法で切り込みを入れてキッチンをアイテムボックスへ収納。
そしてキッチン裏の棚も同じく収納。
寝室にあたる10畳部屋の壁も切り取りまた収納。
それから8畳の壁も切り取り収納。
トイレも収納してあっという間に広々とした家になった。
魔法って便利だね!
外の箱モノはレンガで出来ていて、家の中の壁は木が主材料だ。
家は当然靴を脱いで過ごすから土足厳禁だ。
玄関入ってリビング丸見えはシャイな日本人にはつらい。
ブラインドも兼ねてウォークインシューズクロークを備え付ける。
こんな日を夢見て作っておいた空間拡張の効果の付いた特別な魔道具だ。
まぁ。靴は2足しか持っていないが。
奥行き1.5mの幅3m強の外見は3畳の大きさだが、中には10畳ほどのスペースが備えられている。ちょっとした荷物は置いておけるね。
全部アイテムボックスに入るけど。。。
それじゃぁ。先に箱を完成させるか。
修行の当初はツンツクがピッピのスピードを合わせて前を飛び、ツンツクの飛行技術を真似させる。
林の中の木やツタをものともせずにバレルロールや直角飛行。
垂直上昇に直降下などあらゆる技術を練習させた。
今は仕上げの時期だ。
「いいか! せがれ。あっしらブリリ-ジャ同士の雄の対決は正面からのガチンコでぇ。尻を追いかけまわすような真似をすんなよ」
風颶鳥は自分たちの同族を自らの光沢のある羽を誇りとして、ブリリ-ジャと名乗る。古い言葉で光輝く鳥を意味する。
「うん! ととさま」
「相手の手数を上回る攻撃で完封しろ。お前ならそれが出来る」
風颶鳥同士の決闘は風魔法を相殺し合い自分の攻撃を相手に近づければ勝ちとなる。
(ダンナに愛称付けてもらったおかげで、あっしのガキの時分よりずいぶんスピードが速ぇからな。去年巣立ったせがれたちも、ダンナにずいぶん格上げしてもらったもんだ)
あと数日で旅立つ我が子に旅の教訓を伝える。
「同族以外にケンカを売られたら、なんでもありだ。スピードを生かして死角を利用して倒しちめぇ。なにしろブリリージャはスピード特化の紙装甲だからな」
風颶鳥はスピード1点強化の尖った種族だ。
もっとも体の周りには絶えず風の障壁を張りあらゆる物理を滑るように躱す事ができる。
その当たらない技術に優れているため、紙装甲でも関係がないのだ。
それゆえに空の覇者と呼ばれ広い視野と超反射で自分の体より大きい獣すら圧倒する。
「黒い狼に会っちまったら逃げるのを優先すんだぜぇ」
「あのととさまが勝てなかった黒いトラ柄の狼のこと?」
「あぁ。負けもしなかったが、向こうの攻撃はこっちに当たらねぇし、こっちの攻撃は当たるが決め手にかけてなぁ。千日手ってやつになっちまぁ」
「ぼくがととさまの仇をとる!」
「おうっ! 期待して待ってるぜぇ。だが、無理せず逃げるってぇのも勇気ってもんよ。覚えておけ。それより、3年たったら西の霊峰へ向かって里の若いのとガチンコで良いとこ見せて嫁取りだ。それまで飛び方と戦い方を精進するんだぞ」
「う~ん? 嫁とか要らないから気分がのったらでいい?」
「いいぞと言いてぇところだが、ダメだ。あっしらの一族は数を増やさなければならねぇ。理由は教えたな?」
「うん。信念のために初代が里の掟を破って追放された誇り高き一族ってことだよね」
「そうだ。その初代は神から啓示を受けた。『世代を重ねた遥か先に一族に安住の地が用意される。その地を得るには試練に打ち勝たなければならない。そのために力を蓄えよ』お前も子をなして、数を増やさなければならねぇ。ブリリ-ジャは3回しか子育てが出来ない。あっしにとってお前らが最後の子だ」
生態系の頂点にいるからこその制限だ。古き盟約による拘束が風颶鳥にも課せられている。
「は~い。いい子がいたら考えるよ。そういえば実家にいたお兄ちゃんも一族なんでしょ?」
「そうだ。あいつも同胞だ。今は土地神様の聖域を見守ってもらっている」
(神様を3柱も身にまとう、ダンナだ。あっしらの世代が当たりかもしれねぇ。その為にもせがれに頑張ってもらわねぇと)
「親父にはやく孫を見せてくれよ!」
「う~ん? 前向きに検討します?」
ツンツクはノアが良く使う口癖を真似する子を見て、ダンナも育て親の一人だなと苦笑いする。
――旅立ちの日は近い。
◇
テーブルも椅子もないレンガ作りの家に帰って来た。
モルトは木にロープを吊るして作ってやったブランコを楽しんでる。
これ――普通の人が見たらホラーな光景だよな。
モルトは普通の人には見えない。
風もないのに勝手に揺れるブランコ……キャァ――。
――この家に人呼べないな……呼ぶつもりもないけど。
飯はささっと食べられるカツサンドで済ませる。
それじゃあ楽しい魔改造の時間だね! 地下はとりあえず保留だ。
玄関入ると60畳ほどの広間があり、右手にキッチンがついている。
左の壁の中央より少し奥に横向きに据えられた暖炉があった。
玄関からみて正面に扉があり10畳ほどの主寝室。
その隣がトイレでその隣に8畳ほどの客間。
玄関入って右手に地下への階段がある。
一人で住むには十分な広さだ。
早速だが解体開始。王都で鍛えた解体技術をいかんなく発揮する。
魔法で切り込みを入れてキッチンをアイテムボックスへ収納。
そしてキッチン裏の棚も同じく収納。
寝室にあたる10畳部屋の壁も切り取りまた収納。
それから8畳の壁も切り取り収納。
トイレも収納してあっという間に広々とした家になった。
魔法って便利だね!
外の箱モノはレンガで出来ていて、家の中の壁は木が主材料だ。
家は当然靴を脱いで過ごすから土足厳禁だ。
玄関入ってリビング丸見えはシャイな日本人にはつらい。
ブラインドも兼ねてウォークインシューズクロークを備え付ける。
こんな日を夢見て作っておいた空間拡張の効果の付いた特別な魔道具だ。
まぁ。靴は2足しか持っていないが。
奥行き1.5mの幅3m強の外見は3畳の大きさだが、中には10畳ほどのスペースが備えられている。ちょっとした荷物は置いておけるね。
全部アイテムボックスに入るけど。。。
それじゃぁ。先に箱を完成させるか。
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