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第4章 飄々
第4話 閉込
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倒れた男を見つめ、魔法が通用した事に安堵する。
少女はそっとため息をつくと手のひらを上にして右手を持ち上げた。
それに合わせて男は宙に浮き上がり、少女はそのまま他の部屋に移動させると男を床に寝かせてカギをかけた。
少女は椅子に座り男の出現と同時期に復活したコマンド入力端末に手をかざす。
ヌクレオが沈黙した瞬間の少年の映像を呼び出しログをチェックする。
ログには”『ファギティ-ヴォ』により上位権能から占拠”と残されており、”第一攻撃対象者を攻撃”と続いている。そしてそこでログは途切れていた。
『ファギティ-ヴォ』が何か分からない少女はこう理解する。
『ファギティ-ヴォ』によってダンジョンを占拠されて、第一攻撃対象にしていた少年へ攻撃をしたと。
そしてその結果ダンジョンのヌクレオが沈黙した。
ラングスウィルをけしかけるときに少年を第一攻撃対象者にしたのは少女だ。
その後は映像が復活するまでは断片的な細切れのデータしか残っていなかった。
小ウィンドウで閉じ込めた男を監視しながら、映像の時間を戻し少年に張り付いた何かを確認する。そして放った男を特定した。
だが少女はその男には見覚えがなかった。
――と。
画像に現れる五〇階層侵入者ありのメッセージ。少女は慌てて映像を切り替える。
「――風颶鳥っ! ……ほんとっ! こんな時に次から次へとっ! 盟約破りの一族ね。しかも二羽」
(このマークはっ! アネリアが先行している。――ほんと。ヌクレオがいないと不便ね)
少女はコマンド入力をして特殊ユニットの有機ゴーレム。アネリアへ風颶鳥への遅延作戦を指示をした。
その後は、記憶を辿りずっと昔に呼出した生体検査ユニットが何処にあるかコマンド端末で検索した。
とりあえずはそれであの男の生体スキャンを試してみる。
やれることを全てやる。
そう決意して少女はここに現れて初めての危機に対応する。
§
五五階層のショートカットエリアを目指すアネリアは主からの指示を受け取り安堵する。
(よかったわ。どうにかご無事のようね。――ヌクレオは復活しないけれど。……えっ? 風颶鳥? 五〇階層に二羽侵入。遅延作戦で時間を作れ。テイマーの存在は不明。――前みたいに交渉はできないわね)
アネリアは自分の権限で出来る作戦を準備する。
§
ツンツクとオナイギはダンジョンモンスターを一顧だにせず階層を下って行く。
スピードの次元が違うためツンツクとオナイギをモンスターが見つけても攻撃が当たることなく、ただ目の前を通り過ぎて見逃すだけだ。
新層に到達したら階層全体を一回りしてノアがいないことを確認して次の階層に向かう出口を目指す。
五五階層の出口には隙間なく塞ぐように大量のモンスターが集められていた。
むさいほど肉だるまな真っ黒な鬼と灰色の角の生えたゴリラが立ちはだかる。
勝てるとは思っていないアネリアによる捨て石の侵攻遅延作戦だ。
漢――ツンツクの殲滅戦の幕が上がる。
◇
俺は少女が男性に生体スキャンをかけている様子を俯瞰で見ている。
何か分かれば良いけどね。
それでヌクレオさんやあの男の人があなたの前世だと?
(はい。先ほど意識を取り戻したときに少し思い出しました。守武は私の姓です。ヌクレオになってからは記憶に残っていませんでしたが思い出した顔とも同じです)
ふ~ん。どうやったら元に戻れるんだろうね?
(たぶん。ヌクレオにあの男が触れば戻れると思います。確信はありませんが)
俺の聞いた印象だと、守武≒ヌクレオって感じ。それも限りなく≠に近い感じの。
何か知らんが俺とヌクレオさんはこの真っ青な空間に隔離中。
外の守武さんとやらが目を覚ましてからのやり取りを空間に浮かぶ映像で見せられている。
ボーイミーツガールならぬユースミーツガールのドタバタ劇だ。
そしてヌクレオさんは俺以外の地球からの拉致被害者だ。
数万年規模でそれを認識しなかったそうだが、守武さんが外の世界に出現する異常事態と同時に意識を取り戻し思い出したそうだ。
それにしても学生かと思うぐらい若作りだね守武さん……とても二十八には見えない。
なんか……俺だけなら外に戻れる気がするが、それをすると嫌な予感がする。
さて、どうしたもんかね。
少女はそっとため息をつくと手のひらを上にして右手を持ち上げた。
それに合わせて男は宙に浮き上がり、少女はそのまま他の部屋に移動させると男を床に寝かせてカギをかけた。
少女は椅子に座り男の出現と同時期に復活したコマンド入力端末に手をかざす。
ヌクレオが沈黙した瞬間の少年の映像を呼び出しログをチェックする。
ログには”『ファギティ-ヴォ』により上位権能から占拠”と残されており、”第一攻撃対象者を攻撃”と続いている。そしてそこでログは途切れていた。
『ファギティ-ヴォ』が何か分からない少女はこう理解する。
『ファギティ-ヴォ』によってダンジョンを占拠されて、第一攻撃対象にしていた少年へ攻撃をしたと。
そしてその結果ダンジョンのヌクレオが沈黙した。
ラングスウィルをけしかけるときに少年を第一攻撃対象者にしたのは少女だ。
その後は映像が復活するまでは断片的な細切れのデータしか残っていなかった。
小ウィンドウで閉じ込めた男を監視しながら、映像の時間を戻し少年に張り付いた何かを確認する。そして放った男を特定した。
だが少女はその男には見覚えがなかった。
――と。
画像に現れる五〇階層侵入者ありのメッセージ。少女は慌てて映像を切り替える。
「――風颶鳥っ! ……ほんとっ! こんな時に次から次へとっ! 盟約破りの一族ね。しかも二羽」
(このマークはっ! アネリアが先行している。――ほんと。ヌクレオがいないと不便ね)
少女はコマンド入力をして特殊ユニットの有機ゴーレム。アネリアへ風颶鳥への遅延作戦を指示をした。
その後は、記憶を辿りずっと昔に呼出した生体検査ユニットが何処にあるかコマンド端末で検索した。
とりあえずはそれであの男の生体スキャンを試してみる。
やれることを全てやる。
そう決意して少女はここに現れて初めての危機に対応する。
§
五五階層のショートカットエリアを目指すアネリアは主からの指示を受け取り安堵する。
(よかったわ。どうにかご無事のようね。――ヌクレオは復活しないけれど。……えっ? 風颶鳥? 五〇階層に二羽侵入。遅延作戦で時間を作れ。テイマーの存在は不明。――前みたいに交渉はできないわね)
アネリアは自分の権限で出来る作戦を準備する。
§
ツンツクとオナイギはダンジョンモンスターを一顧だにせず階層を下って行く。
スピードの次元が違うためツンツクとオナイギをモンスターが見つけても攻撃が当たることなく、ただ目の前を通り過ぎて見逃すだけだ。
新層に到達したら階層全体を一回りしてノアがいないことを確認して次の階層に向かう出口を目指す。
五五階層の出口には隙間なく塞ぐように大量のモンスターが集められていた。
むさいほど肉だるまな真っ黒な鬼と灰色の角の生えたゴリラが立ちはだかる。
勝てるとは思っていないアネリアによる捨て石の侵攻遅延作戦だ。
漢――ツンツクの殲滅戦の幕が上がる。
◇
俺は少女が男性に生体スキャンをかけている様子を俯瞰で見ている。
何か分かれば良いけどね。
それでヌクレオさんやあの男の人があなたの前世だと?
(はい。先ほど意識を取り戻したときに少し思い出しました。守武は私の姓です。ヌクレオになってからは記憶に残っていませんでしたが思い出した顔とも同じです)
ふ~ん。どうやったら元に戻れるんだろうね?
(たぶん。ヌクレオにあの男が触れば戻れると思います。確信はありませんが)
俺の聞いた印象だと、守武≒ヌクレオって感じ。それも限りなく≠に近い感じの。
何か知らんが俺とヌクレオさんはこの真っ青な空間に隔離中。
外の守武さんとやらが目を覚ましてからのやり取りを空間に浮かぶ映像で見せられている。
ボーイミーツガールならぬユースミーツガールのドタバタ劇だ。
そしてヌクレオさんは俺以外の地球からの拉致被害者だ。
数万年規模でそれを認識しなかったそうだが、守武さんが外の世界に出現する異常事態と同時に意識を取り戻し思い出したそうだ。
それにしても学生かと思うぐらい若作りだね守武さん……とても二十八には見えない。
なんか……俺だけなら外に戻れる気がするが、それをすると嫌な予感がする。
さて、どうしたもんかね。
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