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第5章 流来
第5話 奔流
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生まれて初めてダンジョンの外へと出たサイネは複雑な思考で歩く。
少しの混乱と止められない好奇心で彼女は進む。
そして神武の誘導で待ち合わせ場所に佇む。
少し遅れてノアがやって来た。
渡されたコートに袖を通しフードをかぶる。
その後はノアの案内に黙ってついて行く。
――案内されたのは街の市場。
今までとは比べ物にならない匂いと音の奔流に呆然と立ちつくす。
どれほどの時間そうしていたのか。――我に返るとノアに詫びるように話かけた。
「ごめん。ちょっとびっくりしちゃって……」
ノアはにっこり微笑んでこう伝えた。
「ゆっくり行きましょう。興味があるものがあれば言ってください。説明しますよ。食べたい物でもいいですよ」
「うん。ありがとう」
三万五千年にも及ぶ永遠を過ごしたサイネは。、ここにある全てが一つも分からない。
そのことが不安で心がざわめく。だが、それ以上の好奇心が動悸を早鐘とした。
「――あの赤いのは何?」
「私はリンゴと呼んでいます。大分味が似ているので食べてみますか?」
そう言ってノアは共通語で会話をしてリンゴを二つ買った。
生活魔法で汚れを取ると一つをサイネに渡し、安全を証明するように一つはそのままかぶりついた。
サイネもそれを真似して初めて手で持ってそれを食べる。
「甘くて酸っぱい。シャクシャクしているのね?」
「なかなかでしょう?」
ノアはそう言っておどけるように笑った。
サイネの言語は神聖語だ。
彼女には住民が何を言っているのかは伝わらない。
尤も神武が補助すれば内容を理解することはできるが。
初めて食べたその果物が楽しくてサイネは今まで見せた事の無い笑顔を浮かべる。
何もかもが初めてのことで心が躍り出しそうだ。
サイネは次々とノアに質問をぶつけた。
少しでも新しい世界を知れるように。
その素敵な欠片を大切に集めるために。
§
――ギルド長室
ギルド長は髭をしごきながらその報告を聞いていた。
「ノアさんはここ半年間ほど五〇階層で足踏みをしています。それと――他の都市への遠征もしくは旅立ちを検討しているのかもしれません」
「あいつも五〇階層を攻略してから他の都市へ旅立った。師匠と同じ道を行くのか。何か言っていたのか?」
「いえ。直接的には何も。ただ、エルフの里に招待を受けているので近々で出発するという事は伺っています」
エレオノーラの報告にギルド長は頷く。
「A級になる気はどうだ? 他のギルドへ話を通しておくぞ?」
髭を触りながらそう言った。
少しの混乱と止められない好奇心で彼女は進む。
そして神武の誘導で待ち合わせ場所に佇む。
少し遅れてノアがやって来た。
渡されたコートに袖を通しフードをかぶる。
その後はノアの案内に黙ってついて行く。
――案内されたのは街の市場。
今までとは比べ物にならない匂いと音の奔流に呆然と立ちつくす。
どれほどの時間そうしていたのか。――我に返るとノアに詫びるように話かけた。
「ごめん。ちょっとびっくりしちゃって……」
ノアはにっこり微笑んでこう伝えた。
「ゆっくり行きましょう。興味があるものがあれば言ってください。説明しますよ。食べたい物でもいいですよ」
「うん。ありがとう」
三万五千年にも及ぶ永遠を過ごしたサイネは。、ここにある全てが一つも分からない。
そのことが不安で心がざわめく。だが、それ以上の好奇心が動悸を早鐘とした。
「――あの赤いのは何?」
「私はリンゴと呼んでいます。大分味が似ているので食べてみますか?」
そう言ってノアは共通語で会話をしてリンゴを二つ買った。
生活魔法で汚れを取ると一つをサイネに渡し、安全を証明するように一つはそのままかぶりついた。
サイネもそれを真似して初めて手で持ってそれを食べる。
「甘くて酸っぱい。シャクシャクしているのね?」
「なかなかでしょう?」
ノアはそう言っておどけるように笑った。
サイネの言語は神聖語だ。
彼女には住民が何を言っているのかは伝わらない。
尤も神武が補助すれば内容を理解することはできるが。
初めて食べたその果物が楽しくてサイネは今まで見せた事の無い笑顔を浮かべる。
何もかもが初めてのことで心が躍り出しそうだ。
サイネは次々とノアに質問をぶつけた。
少しでも新しい世界を知れるように。
その素敵な欠片を大切に集めるために。
§
――ギルド長室
ギルド長は髭をしごきながらその報告を聞いていた。
「ノアさんはここ半年間ほど五〇階層で足踏みをしています。それと――他の都市への遠征もしくは旅立ちを検討しているのかもしれません」
「あいつも五〇階層を攻略してから他の都市へ旅立った。師匠と同じ道を行くのか。何か言っていたのか?」
「いえ。直接的には何も。ただ、エルフの里に招待を受けているので近々で出発するという事は伺っています」
エレオノーラの報告にギルド長は頷く。
「A級になる気はどうだ? 他のギルドへ話を通しておくぞ?」
髭を触りながらそう言った。
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