農家は万能!?いえいえ。ただの器用貧乏です!

鈴浦春凪

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第5章  流来

第14話  参戦

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 新たな報告に騒然となる。名前の挙がったヴイーヴィルは群青の巨大な翼竜のモンスターだ。

「――なんだとっ! ダンジョンの深層の奴じゃないか。……そんなものまで」

「打ち漏らせば直接街に被害がでますね。――住民の避難を急がせないと」

 領主とギルド長のユストゥスは入って来る情報を捌き指示を続ける。

 そこへココと呼ばれた女性が話しかける。

「ギルド長お忙しいところすみません。――ドゥブロベルクから来られた冒険者を案内致しました」

 そう言って背後のエステラを紹介した。

 領主は目線でユストゥスへ対応の許可を送る。

 紹介されたエステラは、再び手紙を差し出した。

「はい。――手紙」

「ご苦労様。だいぶ急いで来てくれたみたいだね。ありがとう」

 ユストゥスは労いの言葉をかけて、手紙を受け取った。

「――じゃあ。あたし行きます」

 性急に動こうとするエステラをユストゥスは止める。

「手紙を確認するから少し待ってくれないか」

 ユストゥスはナイフで手紙を開き内容に眼を走らせた。

(――まさか! ダジルさんから切り札を用意してもらえるとは)

「君が噂のドゥブロベルクのエースなのかい?」

 彼は期待に満ちた瞳でエステラを見返す。

「――エース? ……違うと思います」

 小首を傾げたエステラの表情は変わらず平坦だ。

「――? 君は……エステラ君だよね」

「はい。エステラです。――もう行きます」

 一刻も早く現場に向かいたいエステラはそう言い残して会議室を出て行った。

 領主がギルド長のユストゥスへと問いかける。

「――今の少女は誰なのかね?」

「ドゥブロベルクのギルド長。ダジルさんから飛び切りの救援が届きました。ドゥブロベルクの五つのダンジョンを攻略した#記録保持者__レコードホルダー__#です。そして――ドゥブロベルクの最高傑ワンズ作です」

「城楯都市の最高? ――あの娘が?」

 170cmほどの金髪の少女を思い起こし、領主は見た目と紹介内容の違いに瞠目した。

「ギルド長のダジルさんが自慢していました。いずれ音に聞こえるようになる英雄の卵だと」

 ユストゥスは噂でしか聞かなかった少女の力量に期待を込める。

 そして領主にも言えないエステラの来歴を噛みしめた。

(――若い頃憧れた絶界の弟子。エステラ君。――頼んだよ)

 ユストゥスは立場上不可能だがエステラの戦いを見に行きたいと思った。


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 西門の城壁ではギルド職員が双眼鏡を覗き込み、ジリジリと胸を焦がし二人を見守っていた。

 見たくはないが命を懸けて前線まで偵察に行った仲間の最期から目を背けられない。

 潰れそうな胸を万感の思いで繋ぎ止めそれを続ける。

(ドゥシャン。――ヤルミル。家族の事は俺達に任せてくれ、誇り高い父親だったと伝える)

 まだ魔法も弓も射程距離に入らなかった。

 もうすぐバーゲストが二人に追いつき戦闘になる。

 一匹や二匹は倒せるかもしれないが数千もの数だ。

 ――最後には力尽きる。

 ギルド職員の男は奥歯を音がなるほど強く噛みしめた。

 そこへ高い声がかけられる。

「――逃げ遅れている人がいるの?」

 ――エステラだ。

「あぁ。――身を削って偵察に行った俺達の仲間だ」

「――助けないと。タラリア。フォローして」

 エステラの頭に声が聞こえる。

(準備完レディ了)

 エステラは弓を取り出した。弓の名はヴィジャヤ。

 神殺しの神話に基づくエルフの神器のダウングレート品だ。

 エステラは深緑のヴィジャヤを構えた。


 ――矢をつがえずに。

 弓を引くと青く光る矢が現れつがえられる。

 そして――
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