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第5章  流来

第27話  訓練

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 エステラをユスティスはじっくりと観察する。

(――なんだ。弓じゃないのか。数えきれないほどの魔法の矢を放ったと聞いたが、近接もこなすとは。さすが、絶界。手堅く育てたな)

(この低層では無理もないが、普通の動きにしか見えないな……)

 ユストゥスが見ている今の動きが、ウェンから与えられた装備を使わないエステラの本気の実力だ。

 バルサタールはエステラに伝えていた。

 武器の性能に頼るのは必要な時だけにしろと。

 それ以外は身の丈に合った冒険をするようにと。

 その代わり最高スペックを発揮できるように訓練では全力を出せと。

 バルサタール、ウェンがエステラを評価した才能は戦闘ではない。

 非才を恨まず、目標を見誤らずに精進し続けた、そのひたむきさだ。

 戦闘の才能が無いのにも関わらず、二年半の訓練に耐えた。

 エステラは泣き言を吐いたことさえない。

 口数の少ない、表情の変化に乏しい少女は、心にしなやかで太い芯が通っている。

 二人はその事を知っていた。

 エステラの職業が弓挺きゅうてい料理人になったとき。

 ウェンがことほか喜んだ。

 弓をもって挺進ていしんする料理人。

 あるいは、弓をもって挺身ていしんする料理人。

 挺進とは、他の者より先んじて進むこと。

 挺身とは、率先して身を捧げ、困難に向き合う事だ。

 どんどん突き進んでいく者を目指した少女に、そして、非才を恨まずせきぎょくにまで磨き上げた少女になんてふさわしい称号だろうかと。

 エステラはバルサタールの教えの通りに地に足を付けて冒険を続ける。

 かつて、不愛想はシャイの裏返しと温かく見守られていた少女は、二年半の研鑽を経て、世におもねらない者と評されるようになる。

 心根は優しく、誰にも媚びず、信念を曲げない。

 芽吹くかすら分からない恋の種をその身に宿す冒険者だ。





 とうとう俺は広大な森の外辺に辿り着いた。

 警戒されないようにロボトラは仕舞って歩いてやって来た。

 ツンツクとオナイギに先行してもらっているから上空から広大な森林が広がっているのが分かる。

 頼むことも無いのでツンツク達には自由にしてもらっている。

 俺は森の近くで立ち止まった。

 すると姿は見えないが声をかけられる。
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