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第5章 流来
第28話 隠里
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森の外縁に差し掛かった俺に姿の見えない者から声がかけられた。
まぁ。気配は察知しているけどね。
「この森は人間の侵入を遠慮してもらっている。何か用か?」
エルフの人、案外高圧的じゃないんだね。
「私はノアと言います。連れはベルント。招待を受けて参りました」
エルフの男性が樹からふわりと飛び降りてくる。
「――誰からの招待か?」
俺はウェン師の紋章を見せて、書状を差し出す。
「バイシャオの紋章――招待はアノアディス様……」
エルフの男性は少し間を空ける。
書状を俺に返すとそのまま言葉を続ける。
「それでは案内しよう」
エルフの男性は背を向けて森に入って行った。
森は石畳のように整備はされていないが、魔法で整えたように数人が歩ける程度の道が固められている。
俺が後ろを振り返ると緊張した顔をしたベルントが、神妙な様子でついて来ていた。
なかなか見られない景色だぞ。
せっかくだから楽しめよ。
そんな気持ちで俺はベルントの肩の横を叩いた。
◇
エルフの里は想像以上に近代的な街並みだった。
街の門を潜ると前方に巨大な樹がそびえ立っていて、どうやらその樹を中心に放射線状に道が作られているらしい。
これだけ大きければ見えたはずなのに、森の外からは一切見えなかった樹だ。
建物の材質は土と樹を混ぜたような不思議なもので植栽が多様で豊かだ。
住居と自然が共存していて、整えられた日本庭園を歩いているようだ。
そして、案内された場所は今までの建物とは一線を画す白亜の塔だった。
これも材質は分からない。
大理石というよりは象牙に近い見た目だね。
「ここが錬金術の塔だ。アノアディス様もおられる」
そう言って男は取次をしてくれた。
俺達は出て来たエルフの女性に案内されて塔の中に入る。
そのまま、女性に連れられて一階の一室へと案内された。
そこは5m四方の何もない部屋だ。
何だろうと考えていると、慣れた感覚が俺を襲う。
――転移の感覚だ。
女性が扉を開けると、そこは入ったところとは違う場所。
どうぞと言って女性は歩き出す。
大きな扉をノックし、中からの許可の声を聞くと。
女性はその部屋へ俺達を招き入れた。
「大師。――お連れしました」
「お疲れ様。ありがとう」
そう答えたのは二〇歳になるかならないかの美しいエルフの少女。
だが、その瞳は観想を重ねた深い思慮の色があり、心すらも見透かされそうだ。
「あなたがノアちゃんね。ウェンから聞いているわ。わたしはアノアディス。ウェンの師よ」
もう俺の身長は190cm近いんだが。。。
――ちゃん? ……久しぶりに言われたな。
この人があのウェン師ですら、頭が上がらない長老なのか。
たしかに、底冷えする圧を感じる。
絶対に敵対するなと本能が警鐘を鳴らす。
「歓迎するわ。これから宜しくお願いね」
アノアディス大師はにっこりと微笑んだ。
まぁ。気配は察知しているけどね。
「この森は人間の侵入を遠慮してもらっている。何か用か?」
エルフの人、案外高圧的じゃないんだね。
「私はノアと言います。連れはベルント。招待を受けて参りました」
エルフの男性が樹からふわりと飛び降りてくる。
「――誰からの招待か?」
俺はウェン師の紋章を見せて、書状を差し出す。
「バイシャオの紋章――招待はアノアディス様……」
エルフの男性は少し間を空ける。
書状を俺に返すとそのまま言葉を続ける。
「それでは案内しよう」
エルフの男性は背を向けて森に入って行った。
森は石畳のように整備はされていないが、魔法で整えたように数人が歩ける程度の道が固められている。
俺が後ろを振り返ると緊張した顔をしたベルントが、神妙な様子でついて来ていた。
なかなか見られない景色だぞ。
せっかくだから楽しめよ。
そんな気持ちで俺はベルントの肩の横を叩いた。
◇
エルフの里は想像以上に近代的な街並みだった。
街の門を潜ると前方に巨大な樹がそびえ立っていて、どうやらその樹を中心に放射線状に道が作られているらしい。
これだけ大きければ見えたはずなのに、森の外からは一切見えなかった樹だ。
建物の材質は土と樹を混ぜたような不思議なもので植栽が多様で豊かだ。
住居と自然が共存していて、整えられた日本庭園を歩いているようだ。
そして、案内された場所は今までの建物とは一線を画す白亜の塔だった。
これも材質は分からない。
大理石というよりは象牙に近い見た目だね。
「ここが錬金術の塔だ。アノアディス様もおられる」
そう言って男は取次をしてくれた。
俺達は出て来たエルフの女性に案内されて塔の中に入る。
そのまま、女性に連れられて一階の一室へと案内された。
そこは5m四方の何もない部屋だ。
何だろうと考えていると、慣れた感覚が俺を襲う。
――転移の感覚だ。
女性が扉を開けると、そこは入ったところとは違う場所。
どうぞと言って女性は歩き出す。
大きな扉をノックし、中からの許可の声を聞くと。
女性はその部屋へ俺達を招き入れた。
「大師。――お連れしました」
「お疲れ様。ありがとう」
そう答えたのは二〇歳になるかならないかの美しいエルフの少女。
だが、その瞳は観想を重ねた深い思慮の色があり、心すらも見透かされそうだ。
「あなたがノアちゃんね。ウェンから聞いているわ。わたしはアノアディス。ウェンの師よ」
もう俺の身長は190cm近いんだが。。。
――ちゃん? ……久しぶりに言われたな。
この人があのウェン師ですら、頭が上がらない長老なのか。
たしかに、底冷えする圧を感じる。
絶対に敵対するなと本能が警鐘を鳴らす。
「歓迎するわ。これから宜しくお願いね」
アノアディス大師はにっこりと微笑んだ。
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