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第5章  流来

第29話  棟上

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 錬金術の塔に到着した日は手厚い歓待を受けた。

 ウェン師が慕われているのが伝わるエピソードだね。

 特にアノアディス大師は俺を隣に置いてあれこれ尋ねて来た。

 その為、俺はもはや持ちネタとなった、お決まりの死の行進の話をした。

 となりで聞いていたベルントがびっくりしていたっけ。

 その後は俺の目的であるゴブリンに会いにエルフの里? いやもはや街と呼ぶかね。

 翌日にエルフの街を出発し、ようやくゴブリンの集落に到着した。

 エルフの街から騎獣車に乗って二日の距離にある森の中だ。

 エルフが飼う騎獣は恐竜のような人間のものと違い。

 純白でデカい八本足のバクだった。

 幻獣の類らしい。

 エルフの案内でゴブリンと対面する。

「ようこそ。エルフ。ようこそ。人間。話はエルフから聞いている」

 ほかのゴブリンより背の高い村長が話しかけて来る。

 村長はホブゴブリンのようだ。

 140cmぐらいで小さなツノがコメカミの上から突き出ているのがゴブリン。

 肌の色は褐色で、子犬を思わせる、円らでキラキラとした目をしている。

 ホブゴブリンの村長は160cmほどあり、ツノも少し長い。

 ゴブリンが子犬のような目とするなら、村長は思慮を含んだ瞳をしているね。

 どちらも粗野な様子はなく。

 牧歌的な生活が垣間見える。

「初めまして。ノアと言います。今回の計画の主担当者はこちらのベルントが務めます。ベルント!」

「はっ。初めまして。ベルントです。宜しくお願いします」

「初期の設備の設置を私が協力して行います。ご存じだと思いますが今回の設備でキノコを周年栽培することが可能になります」

「キノコの栽培方法はベルントが協力して行いますので、今後の皆さまの一助となれば幸いです」

 村長はにっこり微笑んでこう言った。

「人間。ありがとう。期待している」

 人間界では差別や敵対さえ起こるゴブリン達だが、エルフとは同じ言葉を話す為に古くから友好的に生活していたそうだ。

 絶対的な力を持つエルフの領域で共存しているのだ。

 エルフは見返りを求めるような種族ではないが、庇護下にいるゴブリンは返せる何かをずっと探していたようだ。

 そこに、俺からの確認があり、キノコ栽培の計画が持ち上がった。

 ゴブリンにとっても渡りに船の状況だったんだ。
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