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第5章  流来

第39話  実験

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 本では読んでいたが、初めて遭遇する怪物は俺の好奇心をムズムズさせる。

 前からどんなものか色々試してみたかったんだよね。

 ダンジョンを進むと、洞窟を思わせる奥の方からグールが現れた。

 爛れたような皮膚をしているが、不快な匂いはしない。

 俺はさっそく実験に取り掛かる。

 間合いを詰めて、槍で手足を切り飛ばす。

 煙となって消えるそれには気にせずに、光魔法をグールに放つ。

 グールは苦しそうにしているが、――すまんね。

 俺はへなちょこな光魔法しか放てない。

 少し時間はかかるが、最後には浄化されたように煙になった。

 倒すまでの時間で皮膚の表面を触って確認したが、そういう造形で生み出されているらしく。

 例えるなら、特殊メイクって感じだね。

 押すと弾力があるが、表面は固い。

 感触はタイヤくらいの硬さかな。

 ここのより、ずっとノルトライブのダンジョンの怪物の方が、生き物に近かった気がする。

 まぁ。いいや。

 ――実験を続けよう。

 現れる怪物達に硫酸、塩酸、王水、アルコール、火炎瓶と用意したあれこれを投げつける。

 用意してきた数十種類の試薬を投げてみたが、結局は水に光魔法を溶け込ませた、なんちゃって聖水の効果が一番高かった。

 この世界にしかない霊薬の類も使ってみたが、芳しい効果の物はなかった。

 まぁ。効果があるならウェン師が教えてくれたはずなので、さもありなんだね。

 それならばと硫酸へ光魔法を含有させたり。

 色々と試行錯誤した結果、なぜか次亜塩素酸水に光魔法を施した液体に劇的な効果が現れた。

 もう、怪物が爆散するレベルだ。

 初め見たときは焦ったよ。

 なんなのこいつらウィルスか何かなの?

 バイオなハザードなの?

 その割にアルコールは余り効果が無かったが。。。

 解せない思いで俺はダンジョンから戻った。

 ダンジョンを出て集落に戻るとベルントが早速、菌床栽培を手取足取り教えていた。

 ベルントは俺に気付くと声をかけて来る。

「ノア君。この菌床製造機凄いよ。異常に作業が早い」

「キノコの菌は弱い菌だから、品種を変える時の清掃と除菌はしっかりとな」

 同じことの繰り返しだが、ベルントには何度も言い聞かせる。

「分かっているって、失敗の最大の原因なのでしょう?」

 そうだ。分かっているじゃないかベルント。
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