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第5章  流来

第40話  帳悔

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 キノコには原木栽培というのがある。

 原木にドリルで穴を開けて、駒菌と呼ばれるキノコ菌を繁殖させた丸くて小さな木栓を打ち込んで栽培するんだが、一本の原木に数種類のキノコの駒菌を打ち込むとどうなるか?

 ほとんどの場合は何も出てこない。

 あるいは環境が整えば、エノキかキクラゲなど繁殖力が強いキノコが勝って一種類だけ出てくるのだ。

 繰り返しになるが、キノコ栽培の失敗の原因は雑菌によるキノコ菌の生長阻害だ。

 他種のキノコ菌と言えども、育成させたいキノコにとっては雑菌の範疇になるのだ。

 ゴブリンが、ベルントの周りをちょこまかと動き回っている。

 そしてベルントに確認しながら一緒に作業をしている。くりくりお目目のゴブリンが彼に確認していた。

「ベル? これでいいか?」

「べるっ! ここ置くなっ!」

 なんか微笑ましいね。

「ノアさん。用がお済みなら里に戻りましょう」

 俺を案内してくれたエルフの男性から声をかけられた。

「分かりました。ベルントあとは頼んだよ」

「あぁ。任せといて」

 真面目なベルントの事だ。

 住む家も建てたし、しっかりやってくれるだろう。

 俺は急かされながら、ゴブリンの集落を後にした。


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 ティラナ-タのスタンピードを制圧したエステラは開かれた門を通り街に入る。

 ドヨドヨとした声が溢れ、騒然とする道を進みギルドへと入る。

 ギルドの中はごった返しているが、エステラが進むと自然と人が開けて道が出来る。

「エステラさん。……もう片付いたのですか? ――それでは、ギルド長室へ案内します」

 ギルドのスタッフに連れられてギルド長室へ案内された。

「お疲れさま。もう制圧したのかい? ――さすがだねぇ」

 エステラがソファーに腰を下ろすと、歳を召した女性のギルド長はそう言ってエステラをねぎらった。

「――はい。……でも工作員はいたけど、逃がした。――失敗」

 エステラは責任を感じて、少しうつむく。

「うむ。――だが、スタンピードから街は被害もなく守られた。あんたのおかげだよ。ありがとう」

(この娘が絶界の坊やの弟子“閃蒼”かい。――性格は似なかったのだねぇ。可愛らしいじゃないかい)

「この後はどうするつもりだい? 出来れば騒ぎが収まる迄ここに留まってほしいだけどねぇ」

「――はい。念のため二週はここにいます。前回の間隔も二週間だったから」

「助かるよ。そうしてくれるかい。泊まるところは用意するよ。そこでゆっくりしていてくれ」

 合同会館には宿泊施設も備えられている。

 そこには賓客をもてなす立派な作りの部屋もある。

 エステラはスタンピード制圧の功労者としてその部屋に通された。


§


 ドヨつくギルドのホールで冒険者達が声を潜めて会話をする。

「まさか、――あの娘っ子がスタンピードを? 冗談だろ?」
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