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第5章  流来

第82話  臨終

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「――だから、地球人は面白い」

 魂に響く声が聞こえた。

(――誰だ? 幻聴か? ……夢か?)

「好きに解釈すればいい。――妄想でも一応、僕の話を聞いてくれるかな?」

(……)

「君の一族は、祖が僕の居る世界の者でね。こちらの世界からの要望で遣わしたことがある。その者が消えるときに、この世界に送った人生の借りに僕の居る世界に戻るか聞いたんだ。その者が望んだのは、子に人生をやり直したいものが居たら、代わりにその借りを使って欲しいという事だった」

(……)

「あれから三,〇〇〇年。ついぞ、その願いを唱える者もいなかったが、ようやく君が現れた。ふふふっ。――まさか、自分ではなく他人の人生を願うとは思わなかったがね」

 男性が願ったのは、唯一愛した女性の事。

 自分の生きた八九年のうち半分でも、彼女に時間をあげられたら、最期にそう願った。

「でも、残念ながら借りは一人分だ。その女性に新たな生を与えると、君にはその権利はなくなる」

(――叶うなら、彼女に人生を与えて欲しい)

 男性はそう強く思う。

「それで良いなら、是非もない。関係者のエネルギーは、ストレージに保管してある。その者の記憶が、世界から消えるまで。もちろん、その女性の分もね」

「――本当に地球人は、埒外らちがいの事を願う。だから、面白い。僕が居る世界へ乱数をもってかき混ぜる者は、地球から招こうと思っているんだ。一度僕から贈ったんだ。貰うのも当然の権利。等価交換というヤツだよ」

 自分の人生をついえる男性に、新たなせいは必要ない。

 本当かどうか分からない話だが、万が一にも彼女に人生をやり直す喜びを残せるなら、藁にでもすがろう。そう強く願う。

 男性が、意識を手放す瞬間に声は言った。

「――まぁ。サービスするよ。自我は持てないが、そのの隣に寄り添えるように、君のエネルギーを据えるとしようか」

 そして――男性は死を迎えた。
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